小林の紅麹、消費者庁が再検証を要請 届け出された安全性の科学的根拠に疑義
小林製薬㈱(大阪市中央区、小林章浩社長)が販売する機能性表示食品を使用した消費者に腎疾患の有害事象が生じた問題をめぐり、機能性表示食品制度を所管する消費者庁が対応に動いている。小林製薬らに対して、安全性の科学的根拠を再検証して報告するよう求めた。
有害事象の発生を受け、届け出された機能性表示食品の安全性に関する根拠に疑義が生じたと受け止めた格好。昨年発生した機能性表示食品をめぐる「6・30措置命令」の際、表示する機能性の科学的根拠等を同一とする届出88件に対し、「照会」として根拠の確認と報告を求めたのと同じ構図だ。再検証の要請は22日に行っており、2週間後の来月5日までに回答するよう求めている。回答結果を踏まえ、次の対応を検討する。
消費者庁は今回、小林製薬のほか、同社から原材料供給を受けて、機能性関与成分の米紅麹ポリケチドを含有する同社製紅麹を配合した食品(おせんべい)を届け出ていた㈱ZERO PLUS(福岡市博多区、弥富圭一郎社長)の2社に対して再検証と回答を求めている。機能性関与成分として紅麹ポリケチドを届け出ている企業が他に1社あるが、この企業は小林製薬製の紅麹を使用していない。
過剰摂取・長期服用試験も実施していたのになぜ
小林製薬が消費者庁へ届け出た米紅麹ポリケチドを含む機能性表示食品の安全性評価に関する資料を見ると、2021年12月に届け出た『コレステヘルプa』では、「当該製品と類似処方の製品(機能性関与成分量は同じ)を2018年から20万食以上販売」してきた中で、「製品が原因と示唆される重篤な健康被害は報告されていない」と説明している。
その上で、当該の米紅麹ポリケチドを含む紅麹原材料は、「2007年よりサプリメントの原料」として販売を開始して以来「17.5トン以上を国内外に流通させてきた」。この量は、「1日あたりの推奨量を100mg(米紅麹ポリケチドとして2mg)として販売してきたことから(中略)1.75億食分に相当する」として、食経験の上では安全性に懸念はないと考察する。
また、「紅麹の一部にはカビ毒のシトリニンを産生するものがあることが知られている」とした上で、「当該製品に使用する紅麹の菌株Monascus pilosusはシトリニン産生遺伝子が機能しておらずシトリニンを産生しないため安全」と説明する。さらに、安全性試験に基づく評価結果も提示。「当該製品の原材料の紅麹を用いて、マウス急性経口毒性試験、ラット90日間反復投与毒性試験、復帰突然変異試験、染色体異常試験、薬物相互作用試験、ヒト過剰摂取試験、ヒト長期服用試験などを実施し、すべての検査項目で安全性に問題は認められなかった」としている。
それにもかかわらず、製品と有害事象の因果関係は確定していないものの、腎障害の有害事象が生じ、多くが退院しているにせよ、24日時点で26人が入院する事態に至った。早期の原因究明が待たれる。
なお、厚生労働省が所管する「食薬区分」において紅麹は、名称「ベニコウジ」、部位等「麹米」として、専ら非医薬品リストに現在収載されている。
【石川太郎】
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