品質に関する指針、さらなる充実が必要 【機能性表示食品特集】私はこう評価する
(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS) 理事長 池田秀子 氏
サプリメントはGMPが必要 通常の食品とは異なる
サプリメントなどについて機能性を表示できるようになったのは大きい。実際、市場規模も伸びている。一方で、システマティック・レビュー(SR)などのレベルについて課題が指摘されているが、それは製造・品質管理も同じだろう。機能性表示食品の品質確保について、届出ガイドラインは十分な指針を示しているとは言えないと思う。
例えば分析について、どの程度の頻度で機能性関与成分を分析しなければいけないのか。そこが具体的に示されていない。また、サプリメント形状はGMPに基づく製造管理が強く望まれるとされているが、そうでない製品も届出されている。ガイドラインは改正が繰り返されているが、製造・品質管理に関する部分についても充実化を図る必要があるのではないか。
特にカプセルや錠剤といったサプリメント形状の食品は、崩壊性の課題にも対応しなければならない。崩壊性を確かめる必要のあることは多くの事業者が理解しているところだと思うが、具体的な方法はまだ確立されていない。
崩壊性の次は溶出性だ。崩壊性や溶出性に関する課題は、エキスの届出にも関連してくる。エキスの届出はまだまだ少ないが、健康食品全般で多用されている。品質管理をどうするのかという課題はあるが、もっと届出されてもいい。
ガイドラインに示されたエキスの要件はハードルが高いと捉えられているが、本当にそうだろうか。そこは届出を進めてみなければ分からないと思う。最近、最終商品販売会社への届出サポートを行うことを目的にしてエキスが届出された。1つの突破口を開いたといえ、今後を楽しみにしている。
品質管理レベル高め、海外でも通用する制度に
錠剤やカプセル形状の食品は、通常の食品とは違う。従ってその製造・品質管理も通常の食品衛生とは異なるものになる。医薬品的な製造・品質管理基準を設け、安全性を確保し、均質性や均一性、安定性を担保し、その次の段階として製造したものの崩壊性や溶出性といった課題に取り組むことになる。
そのため、錠剤やカプセルといった形状の食品は、GMPに基づく製造管理を行う必要がある。原材料についても同様だ。輸入原材料も含めてより厳密な品質確保が求められる。しかし現状の枠組みにおいては、まだ体制が十分に整っていない。当協会には輸入原材料認証制度もあるが、まだ機能していない。こうした課題に業界として積極的に取り組んでもう少しアピールできるようになれば、機能性表示食品制度が消費者からさらに信頼されるようになる道が拓かれるのではないか。
今後もし、品質や安全性の問題が発生した場合、「国の許認可を受けるトクホ(特定保健用食品)とは違うからだ」と指摘されてしまうことになるのだろう。そう言われないようにするために、機能性表示食品のレベルを、最終製品のみならず原材料の製造・品質管理も含めて高めていく必要があると思う。
一方で、そのようにレベルを高めていくためのコストは製品価格に反映される。当然のことではあるのだが、消費者からの理解を得ていく必要もある。現状では、どの製品も品質は同じだと思われているのではないか。そうした課題も含めてクリアしていきながら、消費者からの信頼に真に応えられるようになってもらいたい。その結果として、海外市場においても、「FFC」(Foods with Function Claims=機能性表示食品の英名)の名称が通用するようになるといい。
消費者庁は今後、届出資料の確認を民間団体に一部任せるようになる。これにより事業者の届出のスピードが更に速まると期待される。そうすると機能性表示食品の品数も大幅に増えることになるだろう。そうなった時、品質をめぐる課題がさらに重くなってくるに違いない。今は、同庁として製造・品質管理を細かにチェックするのは難しいと思うが、より本質的な仕事に取り組めるようになると思われる。今後、品質にさらに目が向けられるようになることを期待している。
<プロフィール> 北里大学薬学部薬学科卒。薬剤師、臨床検査技師。東京田辺製薬㈱研究開発本部などを経て2013年9月より現職。バイオヘルスリサーチリミテッドの取締役社長も務める。
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