厚労省の有識者調査会、小林製薬を呼ぶ 同社製「紅麹」使用製品への対応策など審議
小林製薬㈱(大阪市中央区、小林章浩社長)が販売する、同社製の紅麹を配合した機能性表示食品との関連が疑われる健康被害の原因を究明するため、厚生労働省は同社の信頼性保証本部長や製造本部長らを東京に呼び、きのう29日夕刻、有識者で構成する薬事食品衛生審議会の調査会およびワーキンググループを非公開で開いた。
会場になった厚労省が入る中央合庁舎5号館には、調査会に呼ばれた同社幹部からコメントを得ようとしたり、公開された冒頭部分を映像や記録に収めたりしようとするメディアが多く集まった。
各社に自主点検と厚労省への報告求める
因果関係は未確定ながら複数の死亡事例まで報告されている、今回のサプリメントをめぐる健康被害問題は、健康被害に関連している可能性もある同社製の紅麹が、同社のグループ会社を通じて外部の企業に多く販売されていた。そのため問題は小林製薬1社にとどまらず、多くの食品関連企業を巻き込むとともに、一般消費者に強い不安や懸念を生じさせる大きな社会問題に発展している。
厚労省はこの日の調査会で有識者に、同社製の紅麹を使用する食品への対応についても審議を求めた。調査会の開始とほぼ同時に同省が公表した対応案によれば、条件に当てはまる製品について自主点検と報告を求めており、過去3年間で医師からの健康被害報告が「1件以上」寄せられている製品は厚労省へ報告しなければならない。
また、同社がサプリメントなどの使用目的で製造販売した紅麹を用いて製造するとともに、その1日あたり摂取量を100mg相当量以上で設計した製品に関しても、自主点検と報告を求めている。量の根拠は、健康被害が報告されている、同社製のサプリメント等用途紅麹を配合した同社の機能性表示食品『紅麹コレステヘルプ』における紅麹の1日摂取目安量が、100mgであるためだ。色付けや風味付けを目的に製造販売された紅麹は、自主確認と報告の対象から除いたと考えられる。
厚労省では、同製品のほか、同製品に使用しているのと同じ紅麹を配合したサプリメント(機能性表示食品)2製品について、食品衛生法第6条2号違反に該当すると判断。同社を管轄する大阪市は27日、同社に対して当該3製品の廃棄に向けた製品回収を命じている。
小林製「紅麹」が渡った先、220超の企業名を公表
厚労省は、この日の調査会の公表資料を通じて、小林製薬製の紅麹を使用あるいは入手している企業名を明らかにした。同社からの報告に基づきリスト化したもので、その数は、原材料販売を担当する同社グループ会社が直接卸している先、そこから入手している先を合わせて延べ225社に上る。サプリメントの受託製造企業、原材料商社などの名も多くみられる。
同省はリストに注釈を付け、「掲載された事業者が製造する製品が直ちに健康被害をもたらすものではない」とする。ただ、リストに示された企業のもとには、すでにメディアからの問い合わせが入っているという。同省は報告期限をきょう29日(直接卸されていた先52社)、あるいは来月5日(それ以外の173社)に設定。緊急性の高さから社名公表に踏み切ったとみられる。ただ、問題に巻き込まれるかたちとなった食品関連事業者に風評被害が生じれば、厚労省は責任を問われることになる。
【石川太郎】
(冒頭の写真:公開された調査会の冒頭。左上に着席している5名は小林製薬の幹部ら)
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