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バラバラな「健康食品」、体系化必要 【インタビュー】ステップアップ型制度を改めて提案したい

 中小から大手まで会員企業660社超。健康食品業界団体の中で最大規模の(公財)日本健康・栄養食品協会の幹部らが思い描く健康食品の未来には、「ステップアップ」の概念が取り入れられている。矢島鉄也理事長(=写真)は、保健機能食品の各制度を含め、健康食品を取り巻く現状を改善する必要があると強調。今年4月、協会が考える改善策を取りまとめた要望書を消費者庁へ提出するという。

──保健機能食品に関する制度や健康食品業界の未来をどう考えていますか。

矢島 これから何が大事なのかを考えると、やはり、食品衛生基準行政の移管が極めて大きいだろうと思います。4月の新年度から、厚生労働省の食品基準審査課の業務が消費者庁に移ると。食品の基準行政と表示行政の両方を消費者庁が担当することになるわけですから、健康食品の今後にとって、非常に大きな意味を持つ動きになります。

 健康食品の未来に良い意味で影響を与えるものになってほしい。多くの方がそう考えているのではないでしょうか。われわれは、行政移管の話が決まってすぐに、協会内で議論を始めました。健康食品のあるべき姿を、新しい体制になった消費者庁に提案するためです。新体制が動き出してからでは遅い。われわれの考えをまとめた要望書を4月頃に提出したいと考えています。

──要望書ですか。消費者庁に何を求めるのですか。

矢島 保健機能食品制度の改善です。それを議論していただくための材料としてわれわれの考えをお示し、一緒に議論していただくことを呼び掛けたいと考えています。

──要望の中身は。

矢島 検討がまだ続いていますし、まずは協会の会員にご案内してご意見を伺いたいと考えています。ですから今はさわりのみの説明とさせていただきますが、われわれが考えている保健機能食品制度改善の方向性は大きく3つです。第一に、消費者に分かりやすい制度にすること、第二に、トクホ(特定保健用食品)と機能性表示食品を一体化した制度にすること、第三に、科学的根拠に基づく制度にすること。その3つがバラバラではなく、一体化された制度を考える必要があると思っています。

 健康食品の現状を見ますと、トクホと機能性表示食品は、保健機能食品に位置付けられているとはいえ、実質的には別々の制度です。その上で、保健機能食品以外の健康食品も数多く流通しています。そうした現状であるために、消費者にとって、健康食品は非常に分かりにくいものになっているのではないでしょうか。安全性や有効性などに関する情報も公開されていたり、いなかったりですから、商品選択も難しいだろうと思います。それに、事業者責任で届け出る機能性表示食品の表示が、国の許可を受けているトクホのそれを超えるという逆転現象が一部で起こっています。これはどうなのでしょうか。その機能性表示食品では、広告や科学的根拠などに対する課題が指摘されています。われわれは今、そういった数々の課題を改善していくための具体的な方策について検討を進めています。それを新しい体制になる消費者庁に問いかけ、議論させていただきたいと考えています。

──なるほど。3つの方向性を一体的に現実化させられるのが、以前からお示しのステップアップ構想であるとおっしゃりたいわけですね。それを改めて消費者庁に提案したいと。

矢島 ええ。いろいろとご意見があることは承知していますが、根拠がバラバラな健康食品を体系化する必要があること、その体系の中でステップアップさせていく連続性が必要であるという考え方に変わりはありません。保健機能食品以外の健康食品の中で、最低限の安全性、有効性、製品品質が確認されているものを、まずはわれわれが認証する認定健康食品にステップアップできるようにする。さらに、できるだけ多くの商品を保健機能食品制度に乗せられるようにする、ということです。そして科学的根拠のレベルに応じて、機能性表示食品→トクホ→疾病リスク低減トクホとレベルアップしていけるようにする。そういった一体的で連続性のある制度が求められるのではないでしょうか。実績を積むことが次のステップにつながっていく。そのように事業者が前向きになれたり、元気になれたりする制度を提案したいと思っています。

 疾病リスク低減トクホをステップアップの最後に置いているのは、健康食品の多くがそれを目指して研究されているからです。疾病のリスクを低減させるとは、要するに、健康の維持・増進のことですし、つまり医薬品の手前の領域で役立たせることが目指されているわけです。そうであれば、疾病リスク低減トクホをもっと増やしていけるように、基準を明確にしたり、申請しやすくしたりといったことに取り組んでいくべきです。実際、新しい疾病リスク低減トクホが許可されました。大変喜ばしいことです。われわれとしても、申請企業のお手伝いをしながらノウハウを積み上げ、許可件数をさらに増やしていけるように取り組むつもりです。今回の行政移管は、そういったことを行政と議論できる最大のチャンスになると考えています。

──業界がどう受け止めるか次第だと思います。関係団体との連携も必要になるのではありませんか?

矢島 そうですね。まずはわれわれとして考えをまとめ、健康食品を発展させていく方法については、いろいろな考え方だったり、答えだったりがあると思うのです。だからわれわれの考え方が唯一の答えだとは思っていません。正解により近づいていくための球を投げさせていただきたいと考えています。年をとっても健康で長生きできる、健康寿命の延伸が求められる世の中に役立たせることのできる健康食品のあり方をもう一度しっかり考えるべき、議論を深めていくべきだと思うのです。消費者にとって分かりやすい健康食品の制度や仕組みとはどうあるべきか、科学的根拠に基づく商品であることを消費者にしっかり説明できるようにするにはどうすればいいのか、といったことを改めて議論していく必要がある。ここにきてさまざまな課題が立ち上がっていますから、そこはどうにかし、解決していくことが本当に大事です。

──ありがとうございました。

【聞き手・文:石川太郎】

プロフィール
矢島鉄也(やじま てつや):1982年厚生省入省。健康局総務課生活習慣病対策室長、大臣官房厚生科学課長、技術総括審議官などを経て2012年に健康局長就任。厚労省在職中に特定健診・保健指導の制度設計、健康日本21(第2次)を担当。2020年7月より現職。医学博士、千葉大学客員教授。

(文中図:日本健康・栄養食品協会提供)

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