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激動の予感、24年をどう乗り切るか 注視必要、食品衛生基準行政の消費者庁移管

 終わらぬ戦争、高騰する物価、落ち込む消費、機能性表示食品をめぐる突然の措置命令──激動の2023年を超えて健康食品業界が対峙するのはさらなる激動となりそうだ。それを乗り越えていくための鍵は何か。最大震度7を計測する地震が石川県能登地方を襲う天災とともに幕が開いた2024年を展望する。

製造・品質管理めぐる通知改正で幕が開く

 2024年の健康食品業界には何が起きるのか。大きな出来事を先取りしておく。

 行政の動きでは、厚生労働省が4月までにいわゆる「健康食品」の安全性確保に関わる2つの通知を改正する。ちなみに、厚労省や消費者庁は最近、いわゆる「健康食品」には、機能性表示食品や特定保健用食品などの保健機能食品も含まれる、とする体系図を示している。

 まず、製造・品質管理の考え方を整理した通称「平成17年通知」が改正される。「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方」と「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」の2つを組み合わせた通知だ。

改正で旧通知は廃止され、新たな通知として発出される。名称も変わり、「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針」と「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針」にそれぞれ変更されることになる。製造・品質管理に関する「考え方」から「指針(ガイドライン)」に表現が改められる点に注目したい。

 新たな通知の要諦は、2018年の食品衛生法改正で法制化された「指定成分等含有食品」に義務付けられている製造・品質管理基準、いわゆる「指定成分GMP」との整合だ。厚労省は改正の主旨を次のように説明している。

 「錠剤、カプセル剤等の成分が濃縮された形状の食品による健康被害発生の未然・拡大防止を更に図るためには、原材料の安全性を科学的に評価したうえで適切な製品設計を行い、GMPに基づく製造・品質管理、及び原材料の安全性確保を行うことが重要である。

 そのため、錠剤、カプセル剤等の成分が濃縮された形状の食品を製造する全ての事業者において、統一的な考えに基づく一定の製造・品質管理を可能とすることを目的に、17年通知を廃止し、(中略)指定成分GMPの内容を踏まえ、製造・品質管理の考え方を含めたガイドラインを新たに示し明確化する」(23年11月21日付、平成17年通知改正案概要資料より抜粋)。

 平成17年通知の廃止および新通知の発出は、原材料から最終製品まで、製造・加工、販売、輸入事業者などに大きな影響を及ぼしそうだ。健康食品GMP認証機関、(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)の池田秀子理事長は、ウェルネスニュースグループが発行する『ウェルネスマンスリーレポート』への寄稿(2023年12月号掲載)で改正の特徴を次のように抉り出した。

 「従来の健康食品の成分(原材料)の安全性自主点検とGMPのほかに、適正な製品設計が新項目として追加され、基原材料(編集部注:原材料を製造するための材料。例えば動植物など)から最終製品の製造・加工・輸入に係る全ての事業者が対象者とされ、それぞれの段階で安全性確認作業を行う事とされたことである。

 安全性確認フローチャートでは、点検対象原材料とその基原材料に含まれる成分の安全性・毒性情報の確認も要求されており、必要に応じて分析試験の実施も行うなど、17年通知よりも要求レベルが高くなっている。GMPにしても指定成分GMPとHACCPとを取り込んだ内容となっており、従来の純粋なGMPとは様相を異にしており、これを矛盾なくスムーズに進めるための検討を余儀なくされている」

強化される健康被害疑い情報の収集

 次いで3月上旬までに通称「平成14年通知」の改正も予定されている。同通知の正式名称は「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領」。いわゆる「健康食品」との関連が疑われる健康被害情報の収集・対応に関する要点を整理した、地方自治体などの行政向けマニュアルである。2002年、健康被害の未然・拡大防止を目的に作成された。

 いわゆる「健康食品」の健康被害を未然に防ぐためには、製造・品質管理と健康被害情報の収集の「両輪を回していく必要がある」。厚労省の担当官はそう話す。平成17年通知改正との合わせ技で安全性確保策が強化する、ということだ。

 厚労省は平成14年通知を改正することで健康被害疑い情報の収集を強化したい考え。現状では、地方自治体から情報が思うように上がってこない。そもそも、通知の存在を認知していない地方自治体も存在するとされる。また、平成17年通知の改正と同様、いわゆる「健康食品」の1つである指定成分等含有食品の制度とのバランスを取る目的もある。

 厚労省は現在までにプエラリア・ミリフィカやコレウス・フォルスコリーなど4つの健康食品原材料を指定成分等含有食品の対象に指定。その上で事業者に対し、指定成分GMPに基づく製造・品質管理のほかに、健康被害情報の届出も義務付けている。それに加え、報告された健康被害事例を同省のホームページ上で公表。定期的に更新してもいる。

 事業者目線の改正ポイントは大きく2つある。まず、健康被害疑い情報の収集対象とする食品の範囲が明確化されることだ。指定成分等含有食品と生鮮食品を除くいわゆる「健康食品」を対象にすると整理される。要は、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品といった保健機能食品も情報収集の対象にすることが明確化される。

 また、地方自治体から報告された情報の取り扱いについて、必要に応じて指定成分に指定するなどの措置が検討されることになる。1月20日までを期限に意見募集された平成14年通知の改正案にはこう記載されている。

 「必要に応じ、薬事・食品衛生審議会等を開催し、必要な対策について専門的見地からの意見を聞き、(中略)製品名の公表などによる注意喚起、食品衛生法第6、7条に基づく販売禁止措置、同法第8条に基づく指定成分措置、同法第13条に基づく規格基準の設定、医薬品医療機器等法第 55 条第2項に基づく販売、授与等の禁止措置、同法第68条に基づく広告の禁止措置等の必要な対応を行う」

 同省は昨年、指定成分等含有食品以外のいわゆる「健康食品」に関しても、商品名や販売会社名などを伏せながらホームページ上で、地方自治体から報告された健康被害事例の公表を始めた。専門家ワーキンググループによる因果関係の評価結果も掲載しており、因果関係が「否定できない」が並ぶなかで、昨年の終わり、40代女性に生じたとされる肝障害について、「強く疑われる」と判定された事例が追加された。

 この、因果関係が強く疑われる事例への対応について厚労省は、商品設計の見直しを販売事業者に促すことなども検討するとしちえる。健康被害疑い情報の報告軒数の増加が予想される24年は、機能性表示食品を含むいわゆる「健康食品」の安全性に強いスポットが当てられ、製造・品質管理に厳しい視線が注がれる年になるかもしれない。

24年最大級のイベントが4月に

 平成17年・14年通知の改正が行われた後の4月、24年最大級のイベントが起こる。厚労省が所管する食品衛生基準行政の消費者庁への移管だ。関連法案が昨年5月に成立していた。

(つづきは会員専用ページへ)

【石川太郎】

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