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エビデンス入門(6)臨床的有意差

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣 氏

 今回は「臨床的有意差」について述べる。臨床的有意差とは、臨床的に意義のある有意差のことであり、統計的有意差と一般的に使い分ける。統計的有意差は既に述べたように、帰無仮説と対立仮説を立て、有意水準(一般的に5%)を設けて、計算によって算出される統計検定量から有意水準を満たした差である。

 一方、臨床的有意差とは、臨床的に意義のある有意差を指すことから、単に統計的有意差を満たすだけでなく、臨床的に意義があるか、ないかといった医学的な視点の議論が入る。

 例えば、血圧を下げる機能があるとされる食品を使って、プラセボと試験食品で二重盲検のヒト試験を実施したとする。その結果、プラセボと試験食品の間に統計的な有意差があり、効果の差は収縮期血圧で5mmHgだったとする。この5mmHgの差は臨床的に意義があれば、臨床的有意差も満たしていることになる。だが、5mmHgの差があったとしても、医学的に意味がないのであれば、食品の機能性として意義があるのかどうかという議論になる。

 一般的に血圧であれば5mmHg下がるとなると、まあまあ医学的にも意義があるように感じることも多いと考えられる。では、ほかの指標の場合はどうか。次に体重の例も挙げて考えてみる。

 プラセボと試験食品で統計的有意差があり、効果の差が2kgだった場合はどうだろうか。2kgの減量というと、痩せている人にとっては大きな減量に感じるが、BMIが25以上あるような肥満気味の人にとってはどうか。また、食品の摂取期間や購入価格を考えると、ほかの方法で代替できる可能性も検討する必要がある。

 例えば、食品を12週間摂取して2kg減る程度であれば、1日30分程度の運動を2日に1度、4週間も続ければ、同じ効果が得られるのではないかというように、その食品の摂取以外で同様の効果を得ようとした場合との対比も重要になる。

 臨床的有意差は、効果差の程度や代替手段の有無、達成の難易度によって、見方が変わってくると考えられる。このように統計的有意差だけでなく、医学的な見地から臨床試験で得られた知見を評価し、意義があるかどうかを考えることは重要である。

 現在のところ、機能性表示食品の届出で、臨床的有意差まで厳密に考慮することは問われていないが、広告表現では十分に注意しなければならない。小さな差をグラフの縮尺を変えることで大きな差があるように表現することや、過度な強調表現によって大きな効果があるように見せることは誇大な表現となりかねない。

 このため、統計的有意差だけでなく、臨床的有意差も考えて、適切に表現する必要がある。                        

(つづく)

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