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エビデンス入門(4)統計的有意差の判定

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣 氏

 今回は、統計的有意差の判定とは何かを解説する。ヒト試験の論文を見ると、「p値」という言葉が出てくるが、この指標によって有意差の有無を判定することになる。p値は、一般的に0.05以下が「有意」と呼ばれる。

 この有意差を調べる計算を仮説検定と呼ぶ。仮説検定は、文字どおり「仮説」を立て、その仮説が正しいかどうかを判定する手法である。例えば、ある機能性関与成分を含む食品または当該成分を含まない食品を4週間摂取する試験を行い、機能性関与成分の有効性を調べる場合を考える。4週後の収縮期血圧の値を有効性の指標とする場合、仮説検定で2群の差を判定することができる。

 仮説検定では2つの仮説を立てる。1つは帰無仮説と言い、「2群の値に差はない」、つまり「4週後の収縮期血圧の2群の値は同じだ」というものである。もう1つは対立仮説と言い、帰無仮説と異なる仮説であり、「2群の値に差はある」、つまり「4週後の収縮期血圧の2群の値は異なる」というものである。

 この2つの仮説を立て、「帰無仮説が成り立っている」と考えて、検定統計量と呼ばれる計算を行う。しかし、帰無仮説がいつも成り立っているとは限らず、対立仮説が成り立っている場合もある。前提条件と実際の結果が異なる場合は当然、検定統計量の算出結果に「矛盾」が生じる。矛盾が発見されれば、前提条件であった「帰無仮説」が間違っていた、つまり対立仮説が合っていると考える。これが仮説検定のおおまかな方法である。

 「矛盾」とする基準は、本来は検定する人が設定できる。この基準は有意水準と呼ばれる確率で表される。例えば、サイコロの目を考えてほしい。通常のサイコロは、どの目も同じ確率、つまり6分の1で出るはずである。しかし、細工が施されているサイコロでは、ある目がいつも出るなど、「何かおかしい」点がある。サイコロを10回程度転がしたぐらいでは、同じ目が何回も出ることは偶然の場合が多いが、何百回、何千回も転がして特定の目が多いと、何か矛盾を感じる。

 有意水準も同じ感覚であり、帰無仮説が成り立っていると考えて、何回か同じヒト試験を行った場合、検定統計量の算出結果に矛盾を感じる場合が出てくる。このように検定統計量の算出結果に矛盾を感じ、帰無仮説という前提条件が間違っていると感じ始める確率を有意水準として設定している。

 一般的に有意水準は5%としている。100回同じ試験を繰り返して、5回矛盾した結果が出た場合、「帰無仮説」が正しくないと判断する。

 「なぜ5%なのか?」とよく言われる。しかし、明確な説明はない。Fisherという統計学者が使い始めたそうであるが、いつの間にか社会に受け入れられ、有意水準は5%が一般化されたようである。

 統計的有意差は本質的には数字の判定である。数字の持つ特性や意味は反映されていない。

(つづく)

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