こめ油を起点にしたサステナブル経営 【SDGsと健康食品産業】オリザ油化、副産物から機能性素材
80年以上前からサステナビリティ(持続可能性)を意識した取り組みを進めている企業がある。1939年(昭和14年)創業のオリザ油化㈱(村井弘道社長)。日本人の主食作物である米から得られる副産物の米ぬかを余すところなく、健康維持増進などのための資源として有効活用することで経営を成り立たせている。それを支えるのが、創業時から現在まで続くこめ油事業。同事業を起点にしたサステナブルな取り組みは未来まで続く。
こめ油事業、SDGs活動の象徴
こめ油とは、そもそもその出自からしてサステナブルなのだという。食用植物油脂の多くが林野を切り拓いて作る油糧作物を原料とするのに対して、こめ油の原料は米の副産物であるからだ。また、米を作るのに必要な水田にしても、生物多様性や景観、水資源などの維持・保全をはじめ、地球温暖化対策にも貢献し得る。その意味で、こめ油が地球環境に及ぼす恩恵は「計り知れない」と同社では力説する。
そのようにサステナブルなこめ油の製法に関しても同社は長年、環境に配慮した手法を取り入れている。1976年に開発し、82年に国内外で特許権を成立させた「低温抽出法」がそれ。通常よりも非常に低い温度で油分を抽出できるようにしたもので、抽出した原油中の不要物を減らしたり、熱劣化や着色を抑えたりといった物性上のメリットがある。
と同時に、電力などの使用量を減らす省エネ効果や、それに伴う二酸化炭素発生量の減少効果などといった環境保全のメリットもあり、SDGsやサステナビリティが声高に言われるようになる以前から同社では、環境に優しく持続可能性のある製法で得られるこめ油を消費者に提供してきた。
一方、副産物を原料にするこめ油といえども、製造工程中で副産物が発生するのは避けられない。抽出原油の副産物として生じるのが脱脂ぬかであり、抽出原油を精製する過程でもガム、ワックス、ダーク油、スカムといった副産物が発生する。そういった副産物を廃棄処理するのではなく、含有する栄養成分や機能性成分に着目し、それら成分を抽出・精製する技術を編み出しながら、副産物を有効利用する道を次々と見いだしてきた。これにより、同社は現在までに、こめ油メーカーであると同時に、米由来機能性素材メーカーのポジションを確立することになった。
米を余すところなく使い倒す
同社では、1980年に発売したガンマオリザノールを皮切りに、オリザギャバ(GABA)、トコトリエノール、スクワラン、フェルラ酸、オリザセラミド(グルコシルセラミド)、オリザステロール、米胚芽発酵エキス、オリザプロテイン、オリザペプチド、オリザポリアミン、黒米エキス、赤米エキス──などといった米由来機能性素材を、こめ油の製造過程で生じる副産物を再利用しながら製品化してきた。
製品化するだけでなく、ヒト試験などを通じて、生理活性など、機能性に関する科学的根拠を得ることで付加価値をさらに高める取り組みも進めた。これにより、サプリメントなどの機能性食品素材や化粧品素材などとしての販路をグローバルに広げていった。
同社の他にも国内にはこめ油メーカーがいくつかある。ただ、これだけ多くの米由来機能性素材をラインアップするとともに、科学的に掘り下げている先は他にほとんど知られていない。また、副産物の有効活用は機能性素材にとどまらず、栄養成分が豊富に含まれることに着目した飼料をはじめ、肥料や洗浄剤、洗顔スクラブ──などにもアップサイクルさせている。
「米から得られる恩恵を使い倒すつもりで取り組んでいる」と同社の村井社長は話す。「新しい素材の開発を進めているところ」だとも語っており、今後、副産物の有効利用率をさらに高めて、サステナビリティにより貢献していくことに自信を見せている。
【石川太郎】
(文中の表:副産物を有効活用してオリザ油化が開発した米由来機能性素材)
『ウェルネスマンスリーレポート』2023年9月号(第63号)より転載
<COMPANY INFORMATION>
所在地:愛知県一宮市北方町沼田1
TEL:0586-86-5141
URL:https://www.oryza.co.jp
事業内容:こめ油、機能性食品・化粧品素材等の製造販売のほか受託製造事業
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