きのう12日、国立栄研から回答届く データベース、新たに構築か?
既報のとおり、NHKが報じたニュースについてウェルネスデイリーニュース編集部が10日、国立健康・栄養研究所(国立栄研)に確認したところ、同所からきのう(12日)回答が送られてきた。回答から、国立栄研はNMDBに拠らない新たなデータベースの構築を目指しているようにも読み取ることができる。
この問題は、(一社)日本健康食品・サプリメント情報センター(jahfic)が発行している『ナチュラルメディシン・データベース(NMDB)』の安全性情報を掲載していた国立栄研と、jahfic側の著作権を巡る調停が不調に終わったことに起因することはすでに述べた。
もともと、セラピューティック・リサーチセンター(TRC)が1998年に米国で構築した「ナチュラルメディシン・コンプリヘンシブ・データベース(NMCD)」がNMDBの起こりだ。
当時を知る関係者の話によると、2000年代にNMCDの書籍とその版権を買い取った第一出版の『健康食品のすべて』を引用し、国立栄研が「健康食品の安全性・有効性情報」の情報発信を開始した。ただし、当初は安全性のみに限っていたという。
「引用する際も、元の出典を全て確認し、誰が何を摂取してどうなったか、PICOの形に書き換えていた。棲み分けはできており、重複していないと認識していた。担当者が入れ替わるうちに、著作権に対する配慮がおろそかになったのかもしれない」(関係者)
2003年10月24日、第9回「『「健康食品』に係る制度のあり方に関する検討会」で健康食品の科学的根拠について説明する際、現在、jahficの代表理事を務める田中平三座長(当時)がNMCDを紹介している。その後、06年に同文書院(宇野文博社長)がTRC社と独占契約を結んだことで日本対応版の書籍「健康食品のすべて」を発刊した。同文書院はjahficの理事を務める宇野文博氏が経営する出版社だ。今もNMDBの発行元は同社になっている。
国立栄研とjahficの間に起きた揉め事はその後、機能性表示食品の届出にも大きな影響を及ぼし、昨年末から今年にかけて、数百という数の撤回届が消費者庁に提出されることになった。その最中、小林製薬が販売する紅麹サプリメントによる健康被害が発覚。消費者庁は有識者会議「機能性表示食品を巡る検討会」で、機能性表示食品の安全性確保に関する議論を急ピッチで進めた。
健康食品の安全性に密接に関係する国の機関の安全性情報が閉鎖されている実情は、今般の安全性を巡る議論に照らしても好ましい状況とは言えない。機能性表示食品の開発においてもそうだが、何より、消費者の安全・安心な健康食品の活用に当たっても放置できない問題である。有効性情報だけが公開されている点について、消費者に誤った認識を与える可能性もある。
19日午後に流れたNHK ニュースではこういう状況を問題視し、健康食品に詳しい島根大学医学部附属病院の大野智副病院長も「安全性の情報だけが掲載されていない。有効性の情報しか載っていないということになると、想定外の方向に健康食品が利用されかねない。制度として安全性の面では不十分だったのではないか」とコメントしている。
また、ニュースでは、国立栄研の対応として、「科学的根拠に基づく正確な情報を発信する必要があるため時間がかかっている」とのコメントが流された。これは、ウェルネスデイリーニュース編集部が今年3 月1 日に国立栄研に今後の対応を質問した時に同所から得た回答とは食い違う。当時、同所は「安全性情報を再開する予定はない」と回答した。
この点について、編集部では10日に再度確認を行っている。一問一答は以下のとおり。
Q:ニュースの中で、貴研究室の対応について、「科学的根拠に基づく正確な情報を発信する必要があるため時間がかかっている」とのコメントが流された。
3月1日に貴研究室からいただいたご回答によれば、安全性情報を再開する予定はないと聞いていたが、現在準備中という理解で宜しいか?
A:3月に返信させていただいた時点では、素材情報データベースにおいて安全性情報の再開予定はない、というものだった。
素材情報データベースにおいて安全性情報の再開予定はない状況は変わっていないが、科学的根拠に基づく正確な情報を発信する必要があると考えている。詳しいことは、ウェブサイト等を通じて、時期が来たら公表させていただく。
尚、これまでの国立栄研HFNetを巡る一連の出来事については、以下の年表をご参照いただきたい。【田代 宏】(⇒つづきは会員専用記事閲覧ページへ)
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関連動画:W放談10「Q&A問21問題」(YouTube「ウェルネスデイリーニュース」より)
:W放談12「行政開示文書公開」(同上)