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機能性表示食品制度に警鐘鳴らす 『日経クロステック』が機能性表示食品に疑義

 機能性表示食品の「研究」は貴重なリソースの無駄遣い。『日経クロステック』は24日、機能性表示食品の科学的根拠がおろそかだと指摘する記事を掲載した。取材の際、消費者庁の担当者が「健康食品と薬では、有効性の科学的根拠が違う」と述べたのに対して同誌の記者は、「臨床試験という同一のサイエンスの手法で検証される以上、本当は両者の科学的根拠は同じと考えるのが適切」だと指摘。また、機能性表示食品制度について、有効性を検証する研究の質は年々悪化、粗悪な論文を量産、食品メーカーと学術誌が「癒着」していると手厳しい。

 同誌の記者は8月初旬から「機能性表示食品の瑕疵」というテーマで3回に分けて、機能性表示食品に関する記事を連載している。研究レビューをめぐる「多重検定」、「解析除外者」を取り上げ、個別の企業名と商品名を名指しで批判している。また、採択率9割に上るという学術誌のあり方にも言及、「採択率の極端な高さと不採択理由を踏まえると、必須となるエビデンスの質(検証結果の信頼性)の観点では査読されていない可能性がある」(同誌)と疑問をぶつけている。

 研究レビューに通じた有識者によれば、業界では現在、「1つの学術誌によるものが届出論文のうちの大半を占める。1ジャーナルへの偏向は業界にとって大きな問題」と話している。日経クロステックの記者が取材した研究者の中には、研究倫理にもとるため「できればやりたくない」とこぼす研究者もいたとし、「気の毒」だと同情。機能性表示食品は今後、サイエンスの見直しを行うべきだと提言している。

 日経クロステックの記事をめぐっては、一部業界がざわついているという話があった。某コンサルタントには複数の相談が寄せられているとし、「多重検定に引っかかる届出は、少なくとも(消費者庁が届出公開している商品の)約5,000件の半数はある」との見解を示している。また、2020年4月に運用が開始された「事後チェック指針」に基づく監視に影響を与えるのではないかとの危惧を抱く関係者もあれば、「健全化へ向けた良い流れ」、「(事業者には)最近、気の緩みが出ていたから良いきっかけになる」と評価する向きも。食品CRO機関の中にも、「気を付けなければならない」と気に留める関係者がいる。

 機能性表示食品の届出については制度発足後、さまざまな団体や科学者から疑義が出されてきた。ガイドラインも消費者庁により度々改訂された。その後、事後チェック指針が示され、届出の科学的根拠は少しずつレベルを上げてきたが、それでもまだ玉石混交というのが実情だ。日経クロステックは、それを科学的根拠と呼ぶこと自体がおこがましいと一蹴している。

 3月には、認知機能領域の機能性表示食品のインターネットネット広告が、景品表示法や健康増進法の規定に違反する恐れがあるなどとして、消費者庁の表示対策課が事後チェック指針に基づき市販されている商品の約半分に対して改善を求めた。この場合、広告表示に対して事後チェック指針に基づく指導となったが、事後チェック指針にはエビデンス(科学的根拠)に対する監視も行われている。
 ある専門家は、「指摘事項にもさまざまなレベルがあるとされるが、今後、これらの指摘を真摯に受け止め、1つ1つを解決していく足がかりとする姿勢が必要」と話す。事業者は得てして、届出の量やスピード、訴求ジャンルの数を競いがちだが、初心に立ち返り、エビデンスの質を高めることに努めてほしいと釘を刺す関係者も少なくない。

【田代 宏】

(冒頭の写真:本文とは関係ありません)

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