50周年の『イシイのミートボール』 【周年特集2024】理念やビジョンを商品づくりに反映
弁当総菜としてファンも多い『イシイのミートボール』。石井食品㈱はその加工技術をもとに多彩な商品展開を行っている。原材料や製造過程の衛生管理・透明化などにも最大注力している同社ブランド&コミュニケーション部・広報担当の黒飛芙美恵氏に、その取り組みの詳細について聞いた。
おいしさ・安全・ヘルシーをキーワードにブランド化
1970年に業界初のチルドタイプのハンバーグ『チキンハンバーグ』(チルド)を発売した石井食品は、その技術をもとに74年『イシイのミートボール』を販売開始。当初は中華風の味付けだったが、子どもの弁当目的で購入される機会が多いことから、5年後の79年に「おべんとクンシリーズ」へとリニューアル。味わいもトマトテーストにして大ヒット商品となった。
97年からは、業界に先駆けておいしさ・安全・ヘルシーな食の提供を目指し、製造過程において食品添加物を使用しない無添加調理の取り組みを開始。その後、品質保証番号から原材料の履歴が確認できるサービス「OPEN ISHII」開始や、アレルギー表や原材料の情報もパッケージ表面に追加。食卓で楽しめるアレンジレシピもホームページで紹介するなど、半世紀を経ても家庭の定番食品として親しまれる食品となっている。
購入ニーズに注目し方向転換したことが奏功
半世紀にわたるブランド食品の『イシイのミートボール』。大きな転換点は、発売5年後に打ち出した「おべんとクンシリーズ」へのリニューアルだ。当時は主婦が子どもの弁当用に購入することが多かったことから、思い切って方向転換したことが奏功。現在の売上規模でもミートボールを含む同シリーズが約7割を占める。消費者ニーズを分析し、マーケットインの方向へと決断したことが成功の源となっている。その後も、子どもの弁当に使用するメイン顧客層に向け、食育までも考慮した商品開発を心掛けてきた。例えば製造工程において食品添加物や家庭にない食材を抜き、シンプルな原材料での製造とし、原材料の履歴が確認できるサービス「OPEN ISHII」の展開なども行った。
「ミートボールでは以前より卵・乳成分不使用などアレルギー対応の製造を行ってきましたが、そうした当社の取り組みをわかりやすく伝える工夫をしてきたことが長年支持される商品となった理由」と黒飛氏。昨年からはイタリアの有機農法で生産された「アルチェネロ」のトマトペーストの使用を本格化するなど、持続可能な食への貢献活動も進めている。
農と食卓をつなぐ6次産業化にも注力
基幹商品のミートボール50周年を節目として同社が策定したのが「ミートボール50th宣言」だ。パッケージの減プラスチック、オーガニック素材の使用、「もっと使えるミートボールに」の3つを掲げている。さらに「農と食卓をつなぎ、子育てを応援する企業に」というビジョンのもと、持続可能な「地域と旬」モデルの創出にも力を入れる。
「50周年の取り組みもそれらと連動して展開しています。商品では地元食材を使って開発した『神奈川三浦市のキャベツを使ったハンバーグ トマトソース ロールキャベツ風』や、ミートボールから派生した千葉県白子町の『新玉ねぎをつかったハンバーグ』など。パッケージでは石灰石を主原料にして減プラにし、もっと使える、では常温で1年間食べられる『いつでもミートボール』を市販化しました」。
地域との協業から生まれた商品では、生産農家まで社員が訪れることでコミュニケーションを取り、理念やビジョンを共有して開発したという。また近年は地震などの天災が多いことから、自衛隊や行政に非常食として納入していたミートボールも、今年から一般向けに開発・発売。「ローリングストックとして、常備食品の中のアイテムに加えてもらえれば」と考えたのが販売の理由だとか。ミートボールから派生した人気商品も、とりそぼろやリゾット、ごぼうサラダなど、現在では多種多品目に広がりをみせている。
【堂上 昌幸】
(冒頭の写真:発売当初(左)と現行商品、下の写真:(左) 2018年に自衛隊の野営食として開発した常備食から一般食品として展開した『いつでもミートボール』。(右) 「農と食卓をつなぐ」ビジョンから生まれた『神奈川三浦市のキャベツを使ったハンバーグ トマトソース ロールキャベツ風』)