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未病・予防から医療までをフルカバー マクロミルケアネット、食品CROとメディカルリサーチを統合

 ㈱マクロミルケアネット(東京都港区、徳田茂二社長)は、今年7月に旧・マクロミルのライフサイエンス事業部を統合し、「未病・予防から医療まで」を網羅する体制を本格始動させた。同社は自社で大規模な被験者バンクを保持しながら、試験設計・プロトコル作成などの上流工程や臨床試験管理に特化。製薬領域で培った厳格な品質マネジメントと、食品領域の柔軟なコストバランスを両立させた「新しいCROモデル」の提供を開始した。統合の背景や今後の展望について、同社副社長である吉田氏に話を聞いた。(聞き手・文:藤田勇一)

――貴社が食品臨床試験の支援事業に参入されたのが2020年。その後2024年から食品CRO業務の受託を本格化され、今回、2026年7月に事業部がマクロミル社から移管されました。参入の2020年から数えると6年となります。食品CRO業界の中ではまだ歴史が浅いとはいえ、着実に存在感を示され、社名を拝見する機会も増えてきたタイミングでの事業部移管・ケアネットとの合流となりました。あえてこのタイミングで事業を移管し統合された理由や背景についてお聞かせいただけますでしょうか。

吉田 そうですね。タイミングの必然性という観点では、親会社の意向やファンドの参画といった背景を踏まえ、「今が最適なタイミングである」と判断したという側面が1つあります。
 一方、ビジネスサイドの観点では、お客様と向き合う中で、法規制の強化への対応や機能性表示食品市場の成熟化に伴い、「より踏み込んだエビデンス構築を行いたい」という高度なニーズやお声をいただく機会が増えていました。例えば、大手の食品企業様を中心に、特定臨床研究まで見据えたご相談が増えてきていると実感しております。

 また、製薬業界では、プロモーション規制の強化に伴い「より多くのエビデンスを取得しなければならない」という潮流があります。その一方で、「高コストな試験をじっくり行うより、スピーディーかつ多量にエビデンスを取得したい」というお客様の要望も多数お聞きしていました。そのため、従来のハイコストな医薬品系CROとは異なる、“フットワークの軽いCROに対するニーズ”が高まっていることを実感しておりました。

 この2つの流れを踏まえた際、ヘルスケア・未病・食品領域から医薬品領域までを含めた統合的な体制を構築できれば、従来の食品CROおよび医薬品系CROの「良いとこ取り」をした価値提供ができると考えました。これが、今回のタイミングで統合に至った大まかな経緯となります。

――そういった意味では、2020年の立ち上げ当初から「ライフサイエンス事業本部」として活動されてきたわけですね。

吉田 はい、私が事業責任者として立ち上げを行いました。一方で、マクロミルケアネットでは製薬企業向けに臨床研究支援などを少しずつ実施しており、私もそちらに一定程度関与しておりました。

――「食品CROとSMO(治験施設支援機関)は切り分けるべきだ」という意見と、「一貫して対応できる方がクライアントにとって利便性が高い」という双方の意見が存在します。貴社としてはどのような方向性を目指されているのでしょうか。

吉田 基本的には「CROに特化する」というスタンスを取っています。既存のSMO一体型食品CRO機関を否定するわけではありませんが、あえてCROに特化することで、試験の質やエビデンスの精度を高められると考えております。

――試験の相談を受けた際には、プロトコルの作成や試験設計の提案を行い、クライアントに伴走していくというイメージでしょうか。

吉田 はい、まさにその上流工程へ集中的に投資を行っております。

――実際の試験実施につきましては、提携されているSMOや医療機関と連携して進められるのでしょうか。

吉田 基本的にはその通りです。ただ、弊社のユニークな点として、国内最大級の独自被験者バンクを保有していることが挙げられます。CROに特化しつつも、試験において最も重要な「被験者の質」に関しては、自社の競争優位性として保持しています。

 また、試験期間中の被験者とのコミュニケーションやコンプライアンス管理など、一部のSMO的な業務も自社で担っています。介入開始後の被験者管理こそが食品試験の品質を大きく左右するため、品質の核となる部分は自社で内製化しています。一方で、医療機関側の業務等に関してはパートナーSMOや医療機関と連携し、メリハリの利いた運用を行っています。

――自社で被験者バンクを保有している点は大きな強みであり、他社との差別化ポイントになるということですね。

吉田 はい。これは事業統合前から一貫した強みとなっております。今後のヘルスクレームのトレンドとしても、不定愁訴(原因が明確でない体調不良)などのテーマにおいては、医療機関への来院が不要な試験設計が増加傾向にあります。

 生活者の視点に立つと、日常生活の中で頻繁に医療機関を訪れて採血を行うのは現実的ではありません。「日常生活の中で実効感を得られたか」「ウェアラブル端末等のデータで変化が確認できるか」といったリアルワールドでの評価が重視されるようになっています。企業もそうした変化を見据え、自社商品のヘルスクレームや提供形態を模索しています。

 必然的に、エビデンスを取得する臨床試験もリモート化しやすくなっており、弊社の「CROとしての提案力」「被験者バンク」「ダイレクトなコミュニケーション力」を組み合わせることで、完結型のソリューションを提供できます。そのため、あえて従来の食品CRO機関のように医療機関一体型の自社施設を抱え込む必要はありません。生活習慣病関連などの従来型試験は他社にお任せし、弊社はより新しいヘルスクレームや不定愁訴など、企業が今後重視する領域に特化しています。

――被験者の確保や品質管理は現在業界内でも非常にハードルが高い課題の1つですので、そこを自社でコントロールできる点は強力な武器になりますね。それを踏まえ、統合後の新しい「マクロミルケアネット」とはどのような会社なのでしょうか。

吉田 マクロミルケアネット自体の事業の過半は、製薬会社向けのマーケティングリサーチ・メディカルリサーチ領域です。そこに加えて臨床研究支援などの領域を拡大してきました。旧・ライフサイエンス事業本部は、食品・未病領域でのエビデンス構築と、取得したエビデンスを活用したマーケティング支援を行ってまいりました。

 今回の事業統合により、新生・マクロミルケアネットは「未病・予防から医療まで」のヘルスケア領域をフルカバーできる体制となりました。さらに、エビデンスの構築から、それを生活者や医師へ届けるマーケティング支援までを一気通貫で提供できる「ヘルスケア領域のインテリジェンス・インサイトパートナー」を目指しています。

 単にCRO業務を行うだけでなく、構築したエビデンスを最終的にエンドユーザーへ届けるマーケティングまで伴走できる点が、新会社の大きな強みです。

――試験の実施自体は医療機関やSMOが担うとしても、CROの段階で高いエビデンスレベルが求められる中、製薬領域で培ってきた厳格な品質管理や医師とのネットワークが大きく活きてくるわけですね。

吉田 はい。特に大手食品企業からご相談いただく高難度な課題や、特定臨床研究などの場面で非常に活きてきます。製薬業界で求められる厳しい品質マネジメントをベースとしながら対応が可能です。

 一方で、医薬品系CROと全く同じプロセスを適用して高コストになってしまっては、食品企業のニーズに合いません。私たちはもともと食品企業と歩んできた経緯があるため、求められるレベル感やコスト感を熟知しています。規制準拠と柔軟なサービス提供の両立に挑戦できる点こそが、弊社の存在意義です。食品企業からも「医薬品系CROでは高コストであり、一般の食品CROでは特定臨床研究の対応が難しい。そのバランスを取ってくれる存在を待っていた」と、高い評価をいただいています。

――医薬品系CROが新規事業として食品分野へ参入しようとして頓挫したケースがありました。質は非常に高いもののコストが嵩み、食品業界の予算感と合わない。かといって価格を下げると採算が合わず、投資対効果の面で撤退してしまうという難しさがあるようです。

吉田 医薬品系CROは、患者の入院や通院に合わせて個別に症例を組み入れるモデルとなっており、モニタリング体制や人員構造が非常に重厚です。それをそのまま食品試験に適用しようとすると構造的に合いません。
 弊社は両方の領域に対応してきた経験があり、バランスを取ることが可能です。また、弊社はCRO事業以外にもメディカルリサーチやマーケティング支援事業を展開しているため、全社的な事業ポートフォリオの中で収益バランスをコントロールできる強みもあります。

――経営的な視点から見た際、食品CRO事業単体での収益性について懸念されるケースもあるかと思いますが、その点についてはどのように捉えられていますか。

吉田 一般的な臨床試験モデルのみを行うと収益性は限定的になります。しかし、リモート完結型の試験であれば、自社の被験者バンクを活用することで非常に高い収益性を確保できます。今後そうしたリモート型の試験ニーズが増加することを鑑みると、弊社の強みと市場トレンドが合致し、収益性も向上する構造となっています。

――医薬品系CROがカバーする領域と、従来の食品CROがカバーする領域の「隙間」や「新しい需要」を捉えていくアプローチですね。

吉田 そうですね。医薬品系CROが扱う領域の中でも、ウェアラブルデバイスやWebアンケートを活用するようなコストパフォーマンスの高い試験支援に特化しており、製薬企業からのニーズも増えています。食品領域においても、弊社が得意とする不定愁訴や新しいヘルスクレーム領域を中心に展開していきたいと考えております。

――親会社および貴社が保有する被験者バンクについてですが、属性などの詳細なセグメンテーションはどこまで可能なのでしょうか。

吉田 弊社はもともとアンケート調査を強みとしており、モニターに対して迅速かつ詳細なWEB上でスクリーニングアンケートを実施できます。固定された属性データだけでなく、その都度フレッシュな状態で細かくセグメントした対象者をタイムリーに抽出できる環境が整っています。

――単に機能性表示食品の届出目的だけでなく、幅広い研究領域で「特定条件の被験者を集めてほしい」というニーズに即座に対応できるわけですね。自社でゼロから集めようとすると膨大な時間とコストがかかる部分ですので、非常に大きな強みだと思います。

吉田 自社で被験者パネルを維持・管理するには莫大な投資が必要です。しかし、弊社は親会社であるマクロミルの200万人超の生活者・患者パネルを活用でき、それは他社が容易には真似できない大きな強みです。
 また、そこに加え、ケアネットが持つ20万人規模の医師ネットワークを活用した「医師経由での患者リクルート」も可能です。直接リクルートと医師経由リクルートを組み合わせることで、特定臨床研究のような厳格な条件の試験においても確実に被験者を確保できるネットワーク力を備えています。

――既存の食品CROでは難しかった部分を補完できる体制ですね。

吉田 おかげさまで既存の領域につきましても引き合いが増加しております。弊社は自社施設を保持することよりも「質の高い提案やフレームワークを構築できる人材」に投資を行っており、その提案力を評価していただいております。

――食品開発において、従来のヘルスクレーム訴求だけでなく、今後は「消費者の生活にどう溶け込み、日常化できるか」が鍵になると言われています。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

吉田 まさに重要なポイントです。生活者が日常の中で効果を実感・可視化できることが重要であり、ウェアラブルデバイス等を用いたデータ取得ニーズの高まりもその表れだと捉えています。
 また、今後はヘルスクレームのターゲットをより明確に絞り込んでいく必要があります。「誰にでも効く」ではなく、「どのような条件・シーンでより効果的か」を具体化する訴求が求められます。「ターゲットを絞ると市場が小さくなるのでは」という懸念を持たれることも多いですが、マーケティングの視点では、対象を明確に絞り込んだ方が結果として売上が伸びるという理論が主流になりつつあります。
 臨床試験においてレスポンダー(効果が現れやすい層)の条件を特定し、それを適切なヘルスクレームおよびマーケティング訴求へ接続していく一連のサイクルを一気通貫で回すことが重要です。弊社はエビデンス構築にとどまらず、マーケティング展開まで支援できるため、生活者・事業者双方にとって価値のある成果を提供できると考えております。

――経験豊富な他の食品CROとの関係性や距離感について、今後の連携や棲み分けはどのようにお考えでしょうか。

吉田 同業他社とは明確な棲み分けができていると感じております。弊社は独自のビジネスモデルや強みを持っているため、直接競合するのではなく、業界全体の市場をともに拡大し、盛り上げていく立場でありたいと考えております。

――今後、市場を拡大していく上で、ターゲットとなるクライアント企業はやはり大手食品メーカーが中心となるのでしょうか。

吉田 大手企業はもちろんのこと、中堅規模の企業や素材メーカーも重要なパートナーです。大手企業のヘルスクレームとの差別化を図りたい中堅企業など、マーケティング視点を含めた相談をいただく機会も多く、幅広く対応しております。

――最後に、業界やクライアント企業に向けたメッセージをお願いいたします。

吉田 「機能を届出・訴求すれば売れる」という時代は過ぎ、生活者の目も非常に成熟しています。弊社としては、エビデンスを取得して終了ではなく、「取得したエビデンスが売上に繋がり、最終的に生活者の健康や豊かな暮らしに貢献する」ことを見据えた臨床試験・研究のご提案を行ってまいります。エビデンス構築やマーケティングへの活用に課題をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にお声がけいただけますと幸いです。

――ありがとうございました。

<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー11F(本社)
TEL:03-6716-7108
URL: https://www.macromillcarenet.jp/
事業内容:医療専門の市場調査事業、臨床研究の受託事業、食品CRO事業など

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