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コロナワクチン巡り名誉毀損裁判進展 Meiji Seika ファルマと原口議員の対立深まる

 Meiji Seikaファルマは、原口一博衆院議員のSNSや出版物での発言が名誉毀損に当たるとして提訴。東京地裁で進む訴訟は、政治的言論の自由と企業の名誉保護の調整を問う重要な裁判となっている。裁判所は主張対照表や証拠提出を求め、発言の意味内容や違法性の有無を微細にわたり審理している。

裁判の経過と弁論準備手続の状況

 Meiji Seikaファルマ㈱(東京都中央区、永里敏秋社長)が、衆議院議員・原口一博氏によるSNSや出版物上の発言を名誉毀損に当たるとし、東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した事件は、7月18日の第3回、8月28日の第4回と弁論準備手続を重ね、次回第5回期日が10月14日に指定された。この裁判は、新型コロナワクチンをめぐる社会的議論の中で、政治的言論の自由と企業の名誉保護がいかに調整されるべきかを正面から問う裁判である。
 原告であるMeiji Seikaファルマは、同社が開発・販売する次世代mRNAワクチン「レプリコンワクチン」に関して、原口議員がYouTube配信やX(旧Twitter)、さらに出版物『プランデミック戦争 作られたパンデミック』(青林堂刊)で発した一連の発言により、社会的評価を著しく低下させられたと主張する。

 原口氏(被告)の発言は「731部隊」にたとえる表現、「審査過程の不公正」をめぐる指摘、ワクチンを「生物兵器」とする見解、「人体実験」に関する発言など多岐にわたる。Meiji Seikaファルマ(原告)は、これらが自社を直接対象とするものであり、迷惑電話の多発や売上未達成など具体的損害につながったとして、1,000万円の賠償を求めている。
 一方の原口氏は、発言の多くが制度的批判や一般的論評であり、特定企業を狙ったものではないと主張。国会議員としての政治的言論であり、憲法が保障する表現の自由の範囲内にあると反論する。

名誉毀損と政治的言論の自由が争点

 7月18日の第3回弁論準備手続は、東京地裁民事第30部でウェブ会議形式により行われた。この場では、損害論を除く請求原因に関する主張と反論が整理され、特に「真実性」、「真実相当性」、「意見論評の適否」といった法的枠組みを基準に、議論を進めるための主張対照表の作成が裁判所から求められた。
 具体的には、被告である原口氏が、表現行為の意味内容に関する主張を7月25日までに整理し、その後、原告が意見を述べ、最終的に8月18日までに抗弁に関する主張を証拠付きで明確化するよう指示された。各発言が誰を対象とし、どのような社会的評価の低下をもたらしたかが、段階的に確認されることとなった。

主張対照表で整理される争点

 続く第4回弁論準備手続は、8月28日にウェブによって実施された。裁判所は原告に対し、10月7日までに「表現行為の意味内容に係る主張対照表」に証拠を追記すること、また抗弁に関する主張対照表に認否と反論を明示し、根拠となる証拠を示すよう命じた
 さらに、被告側がアップロードした資料の反訳に対して、原告が下線を追記して正式に書証として提出する手続も進められることとなった。こうして、裁判は発言の特定性と違法性をめぐる詳細な証拠検討の段階へと移行している。

 原告は「731部隊」や「利益相反」といった表現が、一般人にとって原告やその製品を指すと理解され得るとし、論評の域を逸脱した悪質な中傷であると主張する。国会議員という立場から発信される情報は社会的影響力が大きく、SNSを通じて拡散した結果、原告の名誉が深刻に侵害されたと強調している。
 一方、被告は、発言はあくまで制度的問題点を指摘するもので、特定企業を標的にしたものではないと反論。政治的言論には誇張や比喩が含まれるのが通例であり、民主主義社会において議員の発言を制限することは慎重であるべきと訴える。さらに「公正な論評の法理」に照らして違法性は阻却されると主張する。

「731部隊」発言の対象をめぐる攻防

 例えば、問題視されたのは、原口議員が「もう海外はですね、日本がやっぱり七三一部隊をやるんだということで、大変なことになっているらしい」と述べた一言である。
 原告は、この発言の文脈からすれば「731部隊をやる」というのは自社製品を製造販売することを指し、「日本」という表現も一般人の理解として原告企業を意味するものと解釈できると主張した。これにより、社会的評価を著しく低下させるものであると位置付けている。

 対する被告は、「日本」という語は通常、日本政府や承認体制を意味し、特定の民間企業を指すことはないと反論した。さらに発言直後の議論が厚労省や日本政府レベルの懸念に移行していることからも、対象は制度全体であるとし、企業への特定性はないと主張している。加えて、製薬会社の「製造」と厚労省の「承認」という2つの行為があって初めて市場に投入されることから、「日本」という言葉は承認主体である厚労省を意味するものであるとした。

「利益相反」発言は制度批判か中傷か

 続いて争点となったのは「厚労省の専門家委員はしかも利益相反ですよね」、「製薬会社から支援を受けておられるっていうことはです」という発言である。
 原告は、文脈上「製薬会社」とは原告を指すものであり、mRNAワクチンを製造販売する企業は8社に限定されているため、特定性は明らかだと主張した。
 これに対し被告は、製薬会社という一般的な括りの中で制度的な構造を批判しているに過ぎないと反論している。

 似たような発言に、「こういうのを利益相反で作ってたら、今度刑法の世界に行くんですね。特定の製薬メーカーに利益を与えるということで、お金をもらっててこれをもし作ってたとすると、それは収賄罪を構成してしまう恐れがあるんで、これ誰が作ったかですね、これ」という被告の指摘がある。

 これについて原告は、「会話の文脈からすれば、“特定の製薬会社”というのは原告を指す」、「会話の文脈からすると、本発言の主軸が制度設計や行政運用への批判にあるとはいえない」――などと述べている。
 一方の被告は、「本発言には“特定の製薬メーカー”という抽象的な表現しか用いられておらず、原告やその製品を名指しする文言は一切含まれておらず、また、文脈上も、制度設計・行政運用への批判が主軸であり、原告を対象とするものとは読み取れないため、本発言は原告への特定性を欠く」と反論している。

 他にも、「生物兵器」を巡る発言「だから、やっぱりこれ、ほんとは最初に皆さんがおっしゃったようにワクチンじゃないです。これは遺伝子製剤であって、佐野先生がおっしゃるように生物兵器である可能性が極めて高いと思います」(原口被告)や、「人体実験」を巡る発言「日本人はモルモットでもなければサルでもない」など、名誉棄損に当たる可能性があるとされる23に及ぶ発言について、主張対照表が作成されている。

 次回第5回弁論準備手続は10月14日午前11時に指定されている。ここでは、両当事者が提出した主張対照表と証拠の突き合わせが進み、発言の意味内容、対象の特定性、社会的評価への影響といった争点が一層明確化される見通しだ。

【田代 宏】

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