全ての食品に存在するリスクを制御 オムニカ、品質管理で連動させるHACCPとGMP
富士山のふもと、静岡県裾野市に生産拠点と分析・研究ラボを置く植物抽出物メーカーの㈱オムニカ(高尾久貴社長)。去年6月放送の「紅麹サプリ」健康被害問題の背景に迫った報道番組(NHKスペシャル)は、難易度の高い精密な分析や製造工程管理などを行いながら品質保証に取り組むサプリメントの原材料メーカーとして、同社の存在を知らせた。番組だけでは分からない、ビルベリー果実抽出物をはじめとするサプリメント原材料の安全性と機能性を確保する同社の取り組みを以下に。
最新鋭植物抽出工場、「裾野工場」竣工の背景
東名高速裾野IC出口から3分。東京からのアクセスも良いオムニカ裾野工場は2019年に稼働、翌20年から本格的な生産を開始した。敷地面積は約1万3,000平方メートル。日量120トンの生産能力がある抽出・精製プラントを備え付けた工場と、LC-MS、GC-MSをはじめとする最新の理化学機器を多数設置した分析・研究ラボを併設、直結させている。
新工場竣工の動機は、機能性表示食品制度が創設される重要な背景となった2014年の閣議決定(日本再興戦略、規制改革実施計画)だった。規制改革実施計画の中には、「意欲と創意に満ちた事業者に活躍の機会を提供する」とあった。また、翌15年4月に施行された、同制度の届出ガイドライン(現・届出マニュアル)の冒頭(主旨)に以下の文言が掲げられていたことも大きい。それは同社が以前から強い関心を抱いていた課題だった。
「機能性表示食品制度を消費者の自主的かつ合理的な食品選択に資するものとするためには、安全性の確保及び機能性表示を行う上での必要な科学的根拠、適正な表示による消費者への情報提供等が適切に担保されることが重要となる」
閣議決定と機能性表示食品の主旨を受け、同社は研究本部の設置と工場竣工に向けた長期5年計画を策定。サプリメントGMP(cGMP)の完全義務化が定着した米国のダイエタリーサプリメント産業の動向も踏まえ、プラントなど工場の施設や構造などの設計を進めた。
自社で手がける研究開発と製造・品質管理
オムニカは、日本をはじめとする東アジア、東南アジアから北米まで顧客を抱える植物抽出物のメーカーであると同時に、食品の三次機能(生体調整機能)に特化したサプリメント形状の健康食品(機能性食品)に最適化させた機能性食品成分(関与成分)を含有する天然抽出物の研究開発企業でもある。研究開発と製造が一体化している。
研究開発では、探索した成分の安全性と機能性を繰り返し検証する。次に、植物からその成分を効率的に得たり、錠剤やカプセル剤などへの配合に適したりする高度加工物(原材料)の抽出・精製方法等の製造技術を設計。技術設計は、国際展開していくための競争力を考慮に入れ、大量生産できることを念頭に行う。次に、体内動態試験やRCT(ランダム化比較試験)などを実施。人を対象に、有効摂取量、安全性、機能性の科学的根拠を検証する。
そのようにしてこれまでに、機能性表示食品に配合されている機能性関与成分でいえば、国内外で年間数十トン規模の供給量があり、同社を代表する関与成分であるビルベリー由来アントシアニンを筆頭に、キウイ由来プロシアニジン、マリーゴールド由来ルテイン、デビルズクロー由来ハルパコシド──などといった植物由来の関与成分を開発してきた。
開発した関与成分は、サプリメントGMP認証機関(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)が認定した原材料GMP認証と、英国認証機関認定審議会(UKAS)が認定した食品安全マネジメントシステム、ISO22000認証を取得している裾野工場で製造・品質管理を行う。
製造・品質管理は、主に開発過程で積み上げた関与成分、あるいはそれを決められたとおり含有する植物抽出物を均一的に製造するために必要となる各種の情報を緻密に落とし込んだ、製品標準書をはじめとする多数の書類に従いながら、食品衛生法に基づき実施が求められているHACCPと連動させたGMPに基づき行う。
サプリメントに使用する原材料の高度加工とは、加工前は有害有益なものを、加工によって無害有益なものに変えることを目指す活動だ、と同社。まさにその活動を行う同社では、導入している食品安全マネジメントシステムで基原材料や中間品のリスクを分析、特定し、それを排除するための管理項目を設定して安全性を確保する。
自動システムで制御、管理する製造工程
設定する管理項目は、通常の加工食品に比べて顕著に多くなる。そしてそれらを管理するためには、「それらの測定基準があり、かつ、測定方法があるか、あるいは、より正確な情報が必要になる」。そうした場合のHACCPの取り組みは、「汚染と薬害(健康被害リスク)が表裏一体」の関係にある天然抽出物において、「(品質管理を目的とする)GMPとの親和性がより高まる」。その時に「どのようなGMPが必要になるのかを深く考え、実行している」と言う。
それを実行するために、裾野工場には、製造工程の正確なプロセス制御能力をはじめ、同一性・同等性の確保、大量生産を可能とする最新鋭の製造設備を設計、導入した。例えば、プラントに置く製造タンクについて同社はこう説明する。
「流体力学による熱流体の精密設計を行っている。これにより、原料の均一化を図るための原料の攪拌と輸送が正確に行われ、巨大タンク内の均一性が保たれる。また、全自動パネル管理により、毎分250リットルという正確な送液管理も実施している。さらに、品質管理のためのプログラムを常時作動させ、ログデータを蓄積することにより、人が操作することによるミスを最大限減らしている」
同一性・同等性の確保についてはこうだ。
「最終形である、関与成分とその他生成物セグメントから成る『物質収支』、水分や溶媒、pH(ペーハー)などの工程中に出る『キャリーオーバー』、これらは製造工程中、常時正確に管理され、製造工程の後半プロセスで天然物特有のバラツキは完全に排除される」。そして衛生管理面についてはこう解説する。
「オムニカで製造された製品は、『CIP』と呼ばれる自動洗浄システムにより徹底された衛生管理の元、出力される。粉体工学デザインに基づいた精密な生産体制により、ロット毎に均一な生成を可能にしているほか、24時間常にHEPA空調(高性能エアフィルターを使用した空調)を連続運転させるなど、クリーンルームでは365日、衛生管理バリデーションをクリアした環境を整え、局所不良の徹底排除に務めている」
高頻度・迅速・正確、三拍子揃えた分析体制
そうした製造設備と製造体制を整えた工場に、分析・研究ラボを直結させた。これにより、「製造工程が適切に管理できているか、迅速に(工程毎のサンプル分析)結果をフィードバックし、精密な品質管理を可能にしている」
分析結果は全て記録し、保管。ビルベリー由来アントシアニンの場合、製造工程毎の分析・評価項目は合わせて200を超えるという。
以上のようにオムニカは、基原材料や中間品の受け入れから最終出荷判定までの綿密な分析管理を高頻度、かつ、迅速・正確に実施できる分析体制と、製造工程を自動システムで管理、制御できる構造を持つ製造施設を一体化させ、「常に、同じものを、同じように作り続ける」ことで品質保証する。
天然物由来ゆえに、成分組成などにバラつきの生じやすい植物抽出物でそれを行うことは、他のサプリメント原材料に比べて難易度が高いと考えられる。コストも高まりそうだ。ただ、同社の高尾久貴社長はこう強調する。
「全ての食品に存在する大小のリスクを制御し、有益性を担保するという目標を立てている場合は、研究開発と出発原材料までが自己管理される品質情報を関連法規や顧客基準に統合し、強い独立性を確保したQA(品質保証)によるGMP運用をしている方が、長期的にはむしろコストが低下し、競争力が高まる」
【石川太郎】
(冒頭の写真:オムニカ裾野工場に併設されたラボ(分析室)の様子。同社提供)
<COMPANY IMFORMATION>
所在地:静岡県裾野市今里492-1(本社・工場)
TEL:055-957-5030
URL:https://www.omnica.co.jp/
事業内容:機能性食品の原材料製造・製品受託製造
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