140周年の『三ツ矢サイダー』 【周年特集2024】ロングセラーの秘訣は未来へつなげようとする社内意識
140周年を前にプロジェクトチームを編成したアサヒ飲料㈱。そこには『三ツ矢サイダー』を次の150周年につなげる目的もあったと話すのは、マーケティング本部マーケティング一部・炭酸グループリーダーの山下美樹氏。「記念の打ち上げ花火で終わらせず、今の取り組みからさらに進化した未来を作りたい」という。
多彩な記念企画で節目の年を盛り上げていく
明治17年(1884年)、現在の兵庫県川西市の平野に湧き出る天然炭酸水を瓶詰し「平野水」として商品化。1907年にサイダーフレーバーエッセンスを加え「三ツ矢印の平野シャンペンサイダー」として発売したのが『三ツ矢サイダー』のはじまり。わが国における甘味のない清涼飲料水のパイオニアでもある。その後に甘味を加えたサイダーとして人気を博し、「サイダーと言えば三ツ矢」と呼ばれるほどのブランドに成長。
90周年となる74年には業界に先駆け、果汁入り炭酸飲料も発売。ヒット商品となったことが現在の果汁「特濃シリーズ」へとつながっている。140周年記念プロモーションでは、23年末に東京・渋谷で歴代ボトルやポスターを展示した「MITSUYA 140th GALLERY」の開催や、SNSで展開した「#三ツ矢復活総選挙」など。さらに「一緒なら、もっと楽しい!」のテーマのもと、いきものがかり&スペシャルゲストによる9月公演の招待ライブチケットが当たるキャンペーンや新CM公開など、多彩な取り組みを行っている。
成功のカギは社員が一丸となること
歴史上の人物・伊藤博文が初代内閣総理大臣に就任する前年の1884年に誕生した『三ツ矢サイダー』。しかし歴史の古さや周年の節目は、消費者側にとってみればそれほどインパクトを与えるものでもない。山下氏は過去の周年の節目にきちんと次世代に商品を訴求してきたことが今日につながっていると話す。「120周年の前年となる2003年には競合他社の商品も多数発売されたこともあり、売上が落ちました。今回はその際にV字回復に導いた先輩社員をレジェンドとして招き、周年プロジェクトメンバーに話をしてもらいました。外部へのプロモーションより先にインナープロモーションを行って、先輩たちが作り上げてきたブランドを未来につなげようという取り組みでした」。
120周年のV字回復では、社長直下のプロジェクトチームが立ち上げられるなど、社員一丸となった活動が成功の鍵となった。今回もその事例をもとに有志を募り、30人規模でチームを結成。ブランド発祥の地を巡る聖地ツアー、ブランド価値の明確化、三ツ矢がずっと愛され続けるための施策立案などを実施したという。
健康系飲料にも引き続き注力していく
昨年末に行った「#三ツ矢復活総選挙」では、70年発売の『三ツ矢サイダーシルバー』が1位に選ばれた。長年のファン層である中高年世代に加えて、見たことがない新しい商品として認知した20、30代の若い世代から支持された結果だ。同社では復刻版を今年7月に発売する予定。140周年記念商品としては、爽やかな強炭酸とレモンの豊かな香りと味わいが楽しめる『MITSUYA檸檬CIDER140』も発売している。
派生商品も広がりを見せている。果汁炭酸飲料の「特濃シリーズ」は22年から23年にかけてほぼ2倍の売上となるなど好調だ。また近年に力を注いでいるのが、トクホの『三ツ矢サイダーW』と糖質・カロリーゼロの『三ツ矢サイダーZERO』。健康志向の高まりからまだまだ伸びしろは大きいとして訴求に力を入れていく。
「今後も7、8月の購買・消費が多い時期に向け、さまざまなプロモーションを策定中」とのこと。どのような内容になるのかにも注目したい。
【堂上 昌幸】
(冒頭の写真:1907年「三ツ矢印の平野シャンペンサイダー」時代のボトル(左)と現在発売中の「三ツ矢サイダー」、下の写真:(左)『三ツ矢特濃オレンジスカッシュ』、『三ツ矢サイダーW』(中央)。(右)は食後の血中中性脂肪や血糖値の上昇をおだやかにする機能性成分を含んだトクホ飲料の『三ツ矢サイダーZERO』)