運動機能に対する有用性も示唆 【コラーゲン特集】コラゲノミクスGFF-01とは何か
メイド・イン・ジャパンの「次世代コラーゲンペプチド」──コラーゲンペプチドの販売量で国内シェアトップの原材料メーカー、㈱ニッピ(東京都足立区、伊藤裕子社長)がそうアピールする製品シリーズ「Collagenomics(コラゲノミクス)」。宇都宮大学農学部の研究チームが論文などで報告しているコラーゲンペプチドの脳神経機能に及ぼす働きは、同シリーズ中の製品で確認されたものだ。どのような製品なのか。最新の研究成果も含め、同社のバイオマトリックス研究所(茨城県取手市)に聞いた。
ショウガ根茎由来酵素で分解、すると高含有されるX-Hyp-Gly
コラーゲンペプチドは一般的に、豚や魚類の皮などから得られるコラーゲン(ゼラチン)を市販のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で分解して製造する。ニッピでもそのようにして製造しているが、それとは別に、食材でもあるショウガの根茎に天然に含まれるタンパク質分解酵素であるジンジベインを利用する製品も製造販売している。それが現在までに3製品が開発されているコラゲノミクスの1つ、「GFF-01」である。
わざわざショウガ根茎由来酵素を使う理由は何か。「効率的にX-Hyp-Glyを生成させるため」(バイオマトリックス研究所)だという。X-Hyp-Glyとは、Xは任意のアミノ酸、Hypはタンパク質の中でもコラーゲンに特有のアミノ酸の一種であるヒドロキシプロリン(水酸化プロリン)、Glyはコラーゲンを構成するアミノ酸として最も多いグリシンをそれぞれ意味する。つまり、それら3つのアミノ酸がX→Hyp→Glyの順番で結合したトリペプチドのこと。トリはギリシャ語で「3」の意味。
では、X-Hyp-Glyを効率的に生成させる必要があるのはなぜか。経口摂取したコラーゲンペプチドは体内でさらに分解される。しかし全てがアミノ酸まで分解されるわけではない。一部の低分子ペプチドが高濃度で血中まで移行していく。そうした低分子ペプチドのアミノ酸配列を見ると、Hypが必ず含まれていて、特にPro-Hyp(Pro=プロリン)やHyp-Glyといったジペプチド(ジは2の意味)が血中から高濃度で検出される。より分子量の大きいX-Hyp-Gly型のトリペプチドも同様だ。
そのように血中に移行していくジ・トリペプチドは、生理活性を持つことも分かっている。そのため経口摂取したコラーゲンペプチドが皮膚や関節、骨などに対するヘルスベネフィット(健康効果)を示すとも考えられている。
一方で、通常の製法で得られるコラーゲンペプチドには、そうしたジ・トリペプチドはほとんど含まれない。市販のタンパク質分解酵素では、それらのペプチドを生成させるのが難しいからだ。
とはいえ、摂取後に体内で分解されて血中まで吸収されていくため、ジ・トリペプチドが含まれている必要は必ずしもない。だが、あらかじめ含まれていたほうが吸収性はより高まる、ということになる。実際、Pro-HypやX-Hyp-Glyをあらかじめ高含有させたコラーゲンペプチドを摂取すると、それらが高濃度で血中に移行していくことが分かっている。
以上がX-Hyp-Glyを効率的に生成させる必要のある理由だ。
運動後負荷後の筋力向上 健常者対象RCTで示唆
では、X-Hyp-Gly型のトリペプチドはどのような生理活性を持つのか。また、それを高含有するGFF-01に期待できる機能性とは何か。
まず、生理活性については、これまでの研究で骨芽細胞の分化促進活性とアンジオテンシン変換酵素阻害活性を見いだしているといい、「骨への健康効果や血圧を下げる働きが期待できる」(同)とする。ただ、いずれも細胞や試験管で確認されたものだ。
一方、GFF-01を使ったマウス試験では、メンタルの改善(抗うつ)や認知機能の向上といった、脳神経機能に対して有用性を及ぼす可能性や、血中脂質や脂肪細胞サイズの低下など、脂質代謝を改善する可能性がそれぞれ示唆されている。
ヒト対象研究も行われている。40~65歳の健常な男性を対象にしたこの研究では、GFF-01を1日10グラム、4週間摂取することで、運動負荷によって生じる疲労感や筋肉痛が減少されるかどうか、筋力が高まるかどうかをランダム化二重盲検交差法比較試験で調べた。プロテインやBCAA、大豆タンパク質などに報告されているそれらの機能が、GFF-01にも認められるか検証する目的で実施したものだ。
その結果、1日10グラムのGFF-01を継続摂取することで、運動負荷によって生じる即発性の筋肉痛や疲労感が軽減したり、運動負荷後の筋力を向上させたりすることが確認された。具体的には、スクワット運動負荷に伴う筋肉痛が、プラセボ群との比較で有意に軽減。筋力に関しては、運動負荷2日後にプラセボ群と比べて有意に向上するとともに、運動負荷前と比べて上昇していた、という。
このヒト対象研究の結果をまとめた原著論文は、今月、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition)の公式ジャーナル『Journal of the International Society of Sports Nutrition』のオンライン版に掲載、公開された。論文タイトルは「Dietary collagen peptides alleviate exercise-induced muscle soreness in healthy middle-aged males: a randomized double-blinded crossover clinical trial」。
GFF-01は、国際的なアンチドーピングプログラムとして知られる「インフォームドチョイス」の原材料認証を取得している。論文が発表されたことを受け、今後、スポーツニュートリションの領域で利用が広がっていく可能性もありそうだ。
機能性表示食品対応素材になる可能性はある?
ニッピでは、コラーゲンペプチドを機能性関与成分にした機能性表示食品の届出サポートも行っている。現時点でサポート可能なヘルスクレームは、「魚由来コラーゲンペプチドには、肌弾力性を維持し、肌の健康に役立つ機能性があることが報告されています。また紫外線により肌が赤くなりやすい方の肌を紫外線刺激から保護するのを助ける機能性があることが報告されています」。
ここで言及されている「魚由来コラーゲンペプチド」は、同社で製造販売する「マリンコラーゲンペプチド」のことで、コラゲノミクスシリーズではない。
しかし今後、コラゲノミクスであるGFF-01、あるいは、Pro-Hypを高含有させた「DFF-01」が、機能性表示食品対応素材になる可能性もある。「検討を進めているところだ」と、バイオマトリックス研究所の担当者は話している。
【石川太郎】
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