農水省、人権尊重の取組を後押し 「食品企業向け人権尊重の取組のための手引き」公表
農林水産省はこのほど、食品企業における人権尊重の取り組みを後押しするために「食品企業向け人権尊重の取組のための手引き」を公表した。
企業活動のグローバル化によってバリューチェーンが世界中に広がる中、企業活動による人権への負の影響(人権侵害リスク)が顕在化し、懸念が高まっている状況を踏まえて、2011年、国連の人権理事会は「ビジネスと人権に関する指導原則」を定めた。
同原則では、国家の人権保護義務・企業の人権尊重責任・救済へのアクセスという3本柱を規定。さらに欧米を中心に人権尊重を理由とする法規制の導入が進み、欧米企業が取引先企業に対しても人権尊重の取組を求める動きがある。
わが国でも、2020年10月に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-25)」を公表するとともに、22年9月には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表し、日本企業による人権尊重の取組に対する理解の深化と取組の促進を図ってきた。
同省では、政府ガイドラインで示された内容について、食品産業(主に食品製造業)において実際に取り組めるように、手引きを作成。手引きに沿って食品企業が自ら人権尊重の取り組みを実践できるよう、平易かつポイントをしぼった内容とした。さらに、取引先の企業に人権尊重の取り組みを求めたり、求められたりした際にも利用できるように、なぜこの取り組みが必要なのか、どのような取り組みが必要か、説明しやすいように構成されている。
同手引は、「目的」、「意義」、「考え方」、「責務」の大きく分けて4章12節から成っている。まずは各企業が手引きを活用し、人権尊重の取り組みを開始し、積極的に取り組みを公表して経験を共有することで、食品産業界全体にとって「さらに取組を深めることにつながることを期待する」(農水省)としている。