臨床研究法、健康食品業界への影響
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 講師 竹田 竜嗣 氏
臨床研究法とは、降圧剤の臨床研究の不正事件などを受けて、医薬品等の有効性や安全性を評価する臨床研究について、透明性や妥当性を担保するために定められた法律。1年間の猶予期間を経て、今年4月から完全施行された。
医薬品等の有効性や安全性を評価する臨床研究に対し、(1)臨床研究の質の担保、(2)被験者の保護、(3)製薬企業からの資金提供や労務提供に関する透明性の確保(利益相反の管理)――を目的に定められた。医薬品の承認申請のために実施する治験を除く、「未承認・適応外の医薬品等の臨床研究」と「製薬企業等から資金提供を受けた医薬品等の臨床研究」を対象としている。
対象となった臨床研究については、新たな基準に従った実施や、国への登録・報告が義務づけられた。注目点は、試験の実施計画について「認定臨床研究審査委員会」で実施基準の適合性などを審査し、許可を得なければいけない点。これまでの臨床研究も、倫理委員会で試験の妥当性や被験者保護などが審査されてきたが、今回、国によって認定された認定臨床研究審査委員会での審査が課せられた。
認定臨床研究審査委員会の審査には相当な時間がかかり、医師の書類対応などの負担が大きくなったことから、臨床研究の萎縮が懸念される。しかし、それだけが懸念事項ではない。厚生労働省のQ&Aには「サプリメント等の臨床研究について」と題し、食品として販売されている物・成分の臨床研究についても、医薬品とみなされる場合は臨床研究法の対象となる旨を明記した。
このことは、現在の機能性表示食品制度や特定保健用食品(トクホ)制度の下で実施される臨床研究についても、場合によっては臨床研究法の対象になり得る可能性を示唆している。
臨床研究法の対象は、「医薬品の有効性や安全性を評価すること」である。研究対象が厚労省に医薬品とみなされた場合には、事業者が食品と認識していても法の対象になる。そのため、食品の臨床試験では、医薬品とみなされないように試験の目的に注意する必要がある。
医薬品の定義は、医薬品医療機器等法で定められている。食品の臨床試験に関係が深い定義は、「疾病の治療や予防に使用することが目的とされている物」。この部分は、「試験の対象者」と「評価項目(アウトカム)」によって判断される。つまり、疾病に罹患している者を対象に、治療や予防を評価することを目的とした場合は、臨床研究法の対象になる可能性がある。
極端な例を挙げると、ある食品やサプリメントがガンの縮小などに効果があるかどうかを確かめたい場合は、臨床研究法の対象になる可能性が高い。「ドクターサプリ」などと呼ばれ、患者を治療する際の補助的利用を目的としたサプリメントなどの臨床試験も、対象になる得ると考えられる。
一方、機能性表示食品やトクホの場合は、制度として国が認めていることから、多くの事業者が臨床研究法との関連について深く意識していないとみられる。しかし、筆者は多くの事業者が関係すると感じている。
※詳細は「Wellness Monthly Report 第16号」(10月31日発刊号)に掲載。