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第4回契約書面電子化検討会(中)オンラインか紙か?消費者代表と事業者代表で意見が対立

 消費者庁は6月30日、契約書面の電磁的方法による承諾のあり方を議論する第4回「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」(契約書面電子化検討会)をオンラインで開催した。
 前回に引き続き、河村真紀子委員(主婦連合会会長)、高芝利仁委員(弁護士)、福長恵子委員(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会東京相談室副室長)、正木義久委員(一般社団法人日本経済団体連合会ソーシャル・コミュニケーション本部長)、増田悦子委員(公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長)ら5人の主張を紹介する。

適合性は2段構えで確認せざるを得ない

河村委員「承諾取得の方法が『これまでの議論の整理』4ページに書かれているが、5ページの『取引類型により区別することの趣旨』では、リスクレベルや類型を分けて分かりやすく記載してある。リスクレベルで交付書面の性質や契約に至る一連の流れを考慮するということは大切で、そこから特定継続的役務提供の中のオンライン完結型となるということはこれまでの意見の中でも申し述べたので、そういう考え方に賛成する。
 役務の提供までをオンラインであることが本質的かということをここに書かれているが、リスクレベルの考え方とはまた別の側面で、全てがオンライン完結型のサービスであるということはおのずと消費者の側に、適合性がある、スキルがある、後で出てくるハード・ソフトウェアで本人のスキルという面で、それがほぼおおむね揃っているということが考えられるので、そういう意味からも、そこに全てがオンラインであるということに絞るという根拠があるのではないか。
 一部オンラインだってそうじゃないのもあるというご説明もあったが、そこまで細かく今私が言うつもりはなく、メインとなるサービスの提供がオンラインで行われるというような考え方かなと私自身は考えている。
 
 書面による承諾の取得の方法については、以前、意見の中でも述べた。説明の内容、承諾書というのが紙になっているので、その控えを消費者に渡すということだが、適合性の確認をいつするか。これは、結果的にはきちんと適合性を見るためには2段構えにならざるを得ないのではないか。控えを出すまでに至るところでの適合性の確認はそれも1つに絞れないかもしれませんが、ある程度質問をして答えてもらうような、チェックリストみたいなもので行う。そこで消費者が今言ったとおりだと仮定して、承諾に至るということがあるとしたら、その後で、電磁的交付をした後に、消費者がきちんと受け取れなかった場合、そこでやはり適合性がなかったということを確認するという、1ステップを置く必要があると思う。その最初の段階で紙の控えとかを渡す段階での確認に、電磁的なやりとりをその場で、その場でというか、含めるということも意見の中で申し上げたかもしれないが、そこを1つには絞れないが、そうだとしても、いずれにしても、きちんと消費者の適合性を見るためには、2段階にならざるを得ないかなと考えている。

承諾方法の取得は取引類型で区別すべき。承諾は書面で、適合性の確認は承諾前に

高芝委員「資料の、4ページから6ページ、特に5ページの①、それから6ページの②のところはよくまとまっている。6ページの②『電磁的方法による承諾取得が認められる範囲の明確化』の関係で、そのオンラインの定義というか、オンライン完結型はどういう場合に考えるかというところで、役務の提供まで含めるかという論点をいただいた。ここについては、取引自体の関係もあろうかと思うので、そこら辺も精査してもらい、検討、判断ができればよいと思う。
 
 ③『書面による承諾取得の方法』だが、この点については基本的に鹿野委員の意見に賛成するところがある。私なりに補足すると、特に適合性の確認の時期だが、承諾を得る段階で、事業者が、電磁的方法の種類および内容など、すなわち電子データで情報を提供する方法とか、ファイルへの記録方法なども明示し説明して、その上で消費者の通信機器の状況についてヒアリングを行い、消費者の申告などに基づいて確認をするのが適切ではないかと思う。
 事前の段階での明示と説明、確認を行うことによって電子書面が到達した時点以降の事業者と消費者の対応次第で、到達時点で有効だった電子書面の提供が途中から無効化するという、そういう要件設定は避けた方がいいのではないか

適合性の確認は承諾前に、確認できない場合は書面交付を

福長委員「2ページ『消費者の真意性』、3ページ『事業者の禁止行為』については異論や指摘はない。『承諾取得の方法』だが、取引類型により区別をすべきと考える。電磁的方法による承諾取得が認められる範囲を明確化することについては賛成。補足すると、いわゆるオンライン英会話に限定してスタートすべきと考えており、役務の提供自体がオンラインであるというのは必ずしも要件にならないと思う。オンライン英会話であれば、契約からサービスの提供までオンラインで対応している。それを利用している消費者であれば、少なくともある程度のITリテラシーは担保されているのではないか。
 それから、書面による承諾取得の方法だが、書面でなければならないというのは、説明書、承諾書、承諾書の控えの全てというふうに思っている。説明書、承諾書およびその控えというのは、1枚で提供することもできると思うので、事業者の負担もさほどではないと思う。
 適合性の確認のタイミングは、承諾前に行うべきだと思う。適合性が確認できない場合は当然、書面交付ということになると思う。

財産的な利益提供の禁止について異論あり

正木委員「鹿野先生に反論するわけではないが、2ページ『消費者の真意性』、3ページ『事業者の禁止行為』についても確認的な意見があるのでさっと述べさせていただく。
 (1)消費者の真意性の①紙での交付が原則であること――について。ここの場にいるメンバーはこれで分かるところだが、これから具体的に制度化していくときに、原則という言葉がけっこう幅を持っている。
 原則に過ぎないという言われ方もあるし、政府だと『デジタル完結・自動化原則『というのもある。そうすると、どっちの原則がどうとかという話になるので、やはり法律の法文と平仄を合わせて正確に、紙の交付に代えて承諾を得ると、電磁的に交付することができるというふうになると、法律の書き方をして説明する方がいいと思った。

 それから3ページ(2)事業者の禁止行為の中の➂『財産的な利益を提供すること』。これ前回私が議論させてもらったところだ。契約書面を電子化すると、消費者にとってもメリットは大きいが、たくさんの当事者と契約を結ぶので事業者の方が圧倒的にメリットが大きい。印紙税や保管のための倉庫代が不要。検索が可能になるので、誰といつ契約したのかなどがすぐに出せるということになる。それはやはり、数をこなす事業者にメリットが大きいわけだ。
 その利益を消費者に還元することがいけないというのは、消費者と企業とのウィンウィンの関係を目指してやってきた消費者志向経営をわざわざ否定することになってしまう。どうしてもここに何かそういったことを書くということであれば、『利益還元を超えた過度な財政的利益を提供すること』とかいうのがあるか。

 それから、⑥消費者の適合性の確認結果に影響を与えること、および適合性があると認められない消費者に電磁的方法により提供すること。
 これも私が前回、消費者の質問にも答えないというのはいかがなものかと言ったために、工夫して書いてくれたのだと思うのだが、ちょっと日本語が難しくてスッと入ってこない。要は、デジタル適合性がないのに、何かこう、甘言を弄して(適合性が)あると言わせてしまうようなセールストークはやめて下さいということを皆さんに言いたいということ。質問に答えても影響を与えてしまうので、例えば『著しい影響を与えること『とか、そういうふうにして明確化させたらどうかと思った。

取引形態ごとにオンラインを認めるか否かを考えるべきではない

 さっきの赤字の部分、4ページ『(3)承諾取得の方法』。私はこの検討会は、紙と電子のプレーンな比較をして、紙と同じレベルのことを電子の方で求めるためにはどうしたらいいかということを考える場と思っている。そもそもその取引形態のリスクレベルを考えて、それに応じて紙と電子で分けるというのはいかがなものかというか、全く違和感がある。
  4ページで言えば、承諾の事実が証拠として残る方法により承諾を取得すべきというのは理解している。むしろリスクレベルが高い云々とかじゃなくて、承諾をしますという事実が何らかの形で証拠として残るような形をとったらいいのではないか。
 プリントアウトを可能にするのかなどがあろうかと思うが、取引形態ごとに書面つまり紙を使わなきゃいけないってのはいかがなものか。

 先ほど鹿野先生が販売なんかの場合は、それはもう対面してるんだから紙を手渡せるじゃないかというお話だったが、私が国会で参考人で述べたときの事例は、ホームセキュリティの会社の方が、まさに訪問販売で“お断り”とか書いてある家を訪ねて、ここに監視カメラを付けませんかとか、そういうことを勧誘をする。パンフレットを置いて一旦帰って、申し込みが電磁的になされる。あるいは申し込みまではその場であったのだが、契約書のところは『一度旦那と相談してからにしたい『ということになるという状態の時に、これも訪問販売だということで今やってる。ですので、ゆっくり考えて、しっかり検討した上で電磁的に返答するという方法がある。

 ヒアリングの中で、訪問販売協会さんから、これ特商法上の訪問販売なんですか、それ違うんじゃないんですかと、訪問販売に当たらないですよという考え方も示されたので、もしそういう解釈なら、そういうふうに発表してもらえれば、先ほどのホームセキュリティの会社、協会さんは皆、そうなんだ喜ばれると思うが、当たるというふうに考えれば、訪問販売でも逆にオンラインというか電磁的な方法での交付承諾というのが認められるべきじゃないかと思う。
 とりあえず6ページのところで、オンライン完結型の部分でこれは認めるべきじゃないか、認めるべきじゃないかというところは一緒だと思う。つまり、オンラインの語学教室なりオンラインのいろいろな類型があるが、こういうものを使いたいという人は適合性があるのだろう。そういう意味では十分条件だと思うが、これでなければ認められないという必要条件となると、ちょっと話が違うのではないかと思う。繰り返しになるが、取引形態によってオンラインを認めるか認めないかを考えるべきではない。ただ、オンラインのサービスを利用するという人は、当然適合性があることになると思う。
 
 それから書面による承諾の方法で、先ほど川口さんの方から電子メールから始めれば良いのではないかということだったが、私はむしろ、訪問販売協会さんもおっしゃったことだが、画面上で承諾しますとか、能動的な行動を起こしてもらう。こういう行動が入ると非常に良いところがある。良いというところがあるので、必ずしも郵便と同じように添付ファイルで何か物を送る。郵便じゃなくてそれが電子メールだということよりも、能動的な行動が入って画面でやるという方が優れている。ただ問題は、それをきちんと証拠として残せるかどうかが問題で、物理的に紙でなければいけないのかということよりも、プリントアウトというか、紙に残せるというか、あるいはダウンロードして保存できるとか、そういう状態であるということは必要かなと思う。
 確認をいつするかというのは承諾前か、過程中かなどなかなか難しいが、高芝先生のおっしゃる通りで、ヒアリングというのが画面上で問いかけて答えられるかというところで、それがうまくいかないと結局前に進めないという状態がある。相当前段階で適合性は確認できるのではないか。

対面取引は電磁的方法による承諾取得は不要、書面による承諾取得を

増田委員「消費者の真意性を確保するために、事業者が説明すべき事項について基本的に賛成する。ただし、これらについて『説明義務』としてほしい。事業者の禁止行為の事項についても賛成だが、具体的な例示をしてほしい。承諾の取得方法について、取引類型により区別することについては、整理をするという意味で賛成する。
 ただ、対面取引については、不意打ち性も利益誘因性もありえる。加えて、対面であることから拒絶が困難な場合があることも周知のことなので、電磁的方法による承諾取得をする必要性はない。また、後出しマルチは訪問販売で行政処分されているし、情報商材などの詐欺的な商品サービスに関しては、Zoomなどによるオンラインの勧誘ということが行われていて、それは電話勧誘販売に該当すると思うので、当然、書面による承諾取得としてほしい。不意打ち性、利益誘引性のリスクの高い取引については、書面による承諾取得が必須。特に連鎖の詐欺的な役務提供の場合、オンライン契約締結、オンラインによる役務提供と可能性が非常に高い。この点については特に注意が必要だと考えている。

 特役については、財産的利益誘引性とは異なるが、効能効果に関する有利性が非常に高い。そのために、利益誘因性と同様のリスクがあると考えている。また、オンラインによる役務提供だけを念頭に申し込む消費者の場合は、客観的な適合性は別として、自身においては役務提供を受けられて、適合性があるという認識でいることと、それからオンラインによる役務提供を受けるという意思があるということは確認できる。ただ、客観的な適合性判断はなされていない。誇大広告や詐欺的な表示でトラブルになるということも多くある。特役は継続的役務提供の中でもトラブルが発生しやすい業種を特定して規制されているし、クーリングオフを組み込んでいる取引であるということから、最低限、消費者が必ず書面を確認できる仕組みを作るという必要があると考える。 
 加えて、対面によって役務提供がありうる特役の場合、それはオンラインによる役務提供を想定していない消費者もいるので、対面取引と同等の手当てをする必要がある。書面による承諾取得の方法についてだが、対面取引の場合であれば、説明書を交付して説明して、承諾書を作成して控えを交付する。これを一連の流れで行うことが容易にできる。適合性の確認もこの説明のときに行うことができると思う。

 隔地者間では、電話勧誘などの場合、事業者は承諾書を郵送して、消費者は控えを残して承諾書を返送する。適合性の確認は、承諾書の交付の前のメールのやりとりで行う。もしくは、事業者が承諾書を紙とオンライン両方で交付して、消費者がオンラインで返送するということになれば、ある意味適合性も一部確認できるのではないかと考える」

 この後、議論は「2.電磁的方法の具体的な内容」(1)適合性、(2)具体的提供方法へと移り、意見表明の後、自由討議が展開された。

(つづく)
【田代 宏】

関連記事:第4回契約書面電子化検討会(前)

     第4回契約書面電子化検討会(後)

会議資料:消費者庁ホームページより

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