痩身目的に糖尿病治療薬を処方 処方薬の定期購入トラブルも、国センが注意喚起
(独)国民生活センター(国セン、山田昭典理事長)は20日、東京事務所(東京都港区)で記者会見を開き、痩身をうたうオンライン診療について注意喚起を行った。説明不足や解約・返金などのトラブルが後を絶たない。
国センでは、2020年9月にも同様の注意喚起を行っているが、その後も相談は増え続ける一方。21年度の49件から昨年度は約4.5倍の205件、今年度は10月末時点ですでに169件に上っている。今後、痩身目的などのオンライン診療の機会が増加し、消費者トラブルも増えることが懸念されることから、改めて消費者への注意喚起を行った。
処方薬、副作用の説明や基礎疾患の問診が不十分
相談事例によると、痩身目的などの自由診療では、医師は施術に伴う副作用や合併症の他、施術費用、解約条件、保険診療での実施の可否、効果には個人差があることなどについても丁寧に説明することが求められている(厚生労働省「美容医療サービス等の自由診療におけるインフォ―ムド・コンセントの取扱い等について」(平成25年9月27日))。しかし、多くの事例でこれらの説明が不十分と考えられた。
また、厚労省が作成した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月、令和5年3月一部改訂)では、初診の場合には、基礎疾患などの情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方を行わないこととしているが、初診で基礎疾患などの確認が不十分なまま数カ月分の処方がなされているケースもあった。
ダイエット治療薬が糖尿病治療薬だった!?
さらに、同指針において、患者の不適正使用が疑われるような場合に処方することは不適切とされているにも関わらず、2型糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬)を痩身目的で処方(不適正使用)しているケースもあり、指針が遵守されているとは考えにくい事例が見受けられたという。
特商法に基づく取消や解約が難しい場合も
その他の相談事例では、痩身目的の治療で契約期間が数カ月間の継続的なコース(処方薬の定期購入)を勧められ、数十万円の契約を行っているケースが多く見られるが、オンライン診療の結果、医師の判断で薬の処方の当否や薬の種類、数量を決めて処方している。このように診療の過程で医師が判断し処方した薬についての購入の申し込みを行っている場合、「特定申込み」に該当せず定期購入と同様の仕組みであっても、特定商取引法に基づく取消しができない場合がある。
また、契約期間中に「副作用が出た」、「期待したほどの効果がない」などを理由に解約を申し出るケースもあるが、例えば脂肪の減少を効能としない薬の処方など、原則として同法の特定継続的役務提供(いわゆる美容医療)に該当しないと考えられる場合については、消費者から一方的に中途解約することは難しいと考えられるとしている。
処方薬の安全性や解約条件などの確認を
これらの結果を踏まえ、国センは消費者に対して、「痩身目的などのオンライン診療を受診する時は、処方薬も含めて医師からしっかり説明を受けること」、「糖尿病治療薬は痩身目的の使用に関して安全性と有効性は確認されていない」、「解約条件などについて申し込み前によく確認すること」と注意喚起を行った。
【藤田 勇一】
(文中と下の図:国センの発表資料より)