機能性表示食品GL改定に意見提出 健康食品試験法研究会が「無処置対照試験」の採用を提言
健康食品試験法研究会(唐木英明会長)は、消費者庁が8月7日まで募集しているパブリックコメント「機能性表示食品の届出等に関するガイドラインの一部改正案に関する意見募集」に、5日付で意見を提出したことを明らかにした。
同研究会は昨年11月4日に発足し、機能性表示食品が抱える試験法の問題をテーマに、これまで3回にわたり会合を重ねてきた。そして今年6月30日、消費者庁長官宛てに食品の特性に合った試験法を確立するように「提言書」を提出している。
くしくも提言書を提出した同日、消費者庁が九州の通販会社の届出表示に対して措置命令を行った。同命令では、同一の届け出を行っているその他の88件の製品に対しても、届出資料に明確な科学的根拠があるかどうか、事後チェック指針に基づいて再検証を求めている。
このように、届出資料には明確な科学的根拠が必要とされる中、「健常者を被験者としたプラセボ対照試験では有意差が出にくい」、「プラセボ効果が大きい時には相加性が成立しないため有意差が出にくい」、「有意差が出るのはプラセボ作用が小さい症状の有症者を被験者にして、効果が強い物質を使用した時だけ」――などのいくつかの問題を抱えるプラセボ対照試験を採用せざるを得ないこと自体に問題がある、と研究会は指摘する。
実際に今回、SRや査読論文の質にまで消費者庁の指摘が及んでいるにもかかわらず、事業者は、原料メーカーや受託製造メーカーから渡されたSRを使い、右から左に届出を行っているケースがかなりの数に上ると考えられている。本来ならば、薬理学・毒性学・統計学の高度の専門知識が必要であるにもかかわらず、専門家は少数という現実がある。
同研究会の唐木会長は、「そもそも試験法自体に無理がある」と指摘する。「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」には、特定保健用食品の試験方法に拠らなくても、機能性の実証が可能な場合については、科学的合理性が担保された別の試験方法を用いることができるとの記載があり、その方法として「対照(プラセボ、何もしない等)」との記述がある。にもかかわらず、「機能性表示食品に関する質疑応答集」(Q&A)の問45には、「機能性について試験食摂取群とプラセボ食摂取群との群間比較の差(有意差検定)で評価する必要はあるか」との問いに答えるかたちで、「最終製品を用いた臨床試験(ヒト試験)を科学的根拠とする場合は、試験食摂取群とプラセボ食摂取群との群間比較により肯定的な結果が得られる必要がある」と記されている。
「これはガイドラインに矛盾する」というのが唐木会長の主張だ。そのため、同研究会は今回、ガイドラインの改定に当たり、同Q&Aの改定も求めている。パブリックコメントの全文は以下のとおり。
「有効な機能がin vitro/in vivo試験で証明されている薬剤であっても、プラセボ対照試験でヒトでの有効性が証明できない例が存在することは、ICHガイドラインE10および厚生労働省医薬局審査管理課長『臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題』(2001)に明記されている。しかし医薬品においてはそのような例は少数に留まる。他方、機能性表示食品の有効性試験は、原則として健常者を被験者とするため、検出されるエフェクトサイズが小さい。そこにプラセボ効果が加わると、有効性の証明が困難になる例が多い。その原因は、薬理作用とプラセボ効果が相加的であるという前提が成立しないためであることが薬理学的に明らかにされている。前述の課長通知はこの問題の解決策として、『有効性に関する判断をプラセボ対照試験のみに基づくのではなく、複数の探索的・検証的試験からなる臨床データパッケージに基づいて行うべき』としている。このような解決策は当然のことながら機能性表示食品にも適用され、『機能性表示食品の届出等に関するガイドライン』には『特定保健用食品の試験方法(注:プラセボ対照試験を指す)に拠らなくても機能性の実証が可能な場合については、科学的合理性が担保された別の試験方法を用いることができる』としている。ところが、その実施を妨げているのが『機能性表示食品に関する質疑応答集』問45の答えにある『最終製品を用いた臨床試験(ヒト試験)を科学的根拠とする場合は、特定保健用食品と同様に試験食摂取群とプラセボ食摂取群との群間比較により肯定的な結果が得られる必要がある』という文言である。そこで、この文章中の『プラセボ食摂取群』を例えば『プラセボ食摂取群など』に変更することで、プラセボ対照試験以外の試験を容認することを提言する」(原文ママ)