機能性表示食品に応用できる国産原材料を開発する取り組みを、健康食品の原材料販売および受託製造（OEM）を手がけるビーエイチエヌ㈱（恩田明広社長。以下、BHN）が積極的に進めている。国内で栽培される植物など天然物の未利用資源を有効活用する狙いがある。現在までに複数の原材料を開発。最新の原材料では、鹿児島県指宿市で栽培されるオクラが、肌の健康維持や睡眠の質改善に有用であることを初めて見出し製品化した。

廃棄される規格外のオクラが「もったいない」

　廃棄される未利用資源の中から健康維持・増進に有用な成分を見つけ出し、それを一定量含有する抽出物など健康食品向け原材料を開発することで、未利用資源に価値を付加する。そうした目的でBHNは10月までに「完熟オクラシード」（オクラ種子エキス）を開発。肌の弾力維持を訴求する機能性表示食品に配合できるようにするため、現在、同社で消費者庁への届出手続きを進めている。

　完熟オクラシードは、オクラの収穫量が国内で最も多い、鹿児島県指宿市で収穫されるオクラのうち、成長し過ぎて出荷規格外となり廃棄（焼却）される「完熟オクラ」の種子を原料にした抽出物。「指宿市で地域資源の活用に取り組んでいる地元のかたと出会ったのが開発のきっかけ。オクラの機能性について鹿児島大学と共同で研究した結果、完熟したオクラの種子に肌の弾力を維持する機能と睡眠の質を改善する機能を確認できたことも大きい」（BHNの原材料事業担当幹部）という。

　オクラは生育が早いため規格外が多く発生する。その取り扱いが以前から課題になっていた。

隠されていた「肌の健康維持」という価値

　BHNらは、完熟オクラ種子中に環状ペプチドの一種、OF4949-Ⅱが含まれることを見出し、同成分（オクラペプチド）の含有量を規格（0.1％以上）したオクラ種子エキスを開発。そのうえでヒト試験を実施し、一定期間の経口摂取によって、肌の弾力を維持する機能と睡眠の質を改善する機能がそれぞれ期待できることを確認した。

　肌の弾力維持機能はRCT（ランダム化比較試験）でも有効性を確認できたことから、まずは同機能を訴求できる機能性表示食品に配合できるよう準備を進めている。同社では、「（成長し過ぎた完熟オクラは）これまで焼却して廃棄するしかなかったもの。それを機能性表示食品に活用できるようにすることで、価値が生まれる。地域振興に貢献できるほか、環境への配慮などSDGsの要素を持ちあわせた製品を開発したいという要望に応えることもできる」（同）と話す。

限られた国内資源から「新たな可能性を見つける」

　そうしたコンセプトに基づき、同社が開発した機能性素材は他にもある。現在までに冷えケアを訴求する機能性表示食品に配合できるようになっている「ツバキ種子エキス末」も、廃棄される未利用資源を活用した国産原材料。椿（つばき）の種子から油（椿油）を搾った際に生じる粕を原料にしたもので、椿油の産地として知られる伊豆諸島の主に利島（としま）から原料を調達する。

　「（椿油の）粕は活用方法がほとんどなく、産業廃棄物として大量に捨てられていた。それを有効活用するために機能性研究を始めたのが開発のきっかけ。限られた資源から新たな可能性を見つけていくことは、健康食品のビジネスを広げていく上でも、今後ますます求められるようになると思う」（同）という。

　他にも、鹿児島県喜界島産のボタンボウフウ（長命草）の乾燥粉末を機能性表示食品に配合できるようにした。

　これは未利用資源を活用しているわけではないが、過疎化が進む島の産業振興に貢献することも念頭に開発したもので、持続可能性の観点で見ると、完熟オクラシードやツバキ種子エキスに連なる国産植物由来の機能性素材。現在までに、食後血糖値の上昇抑制機能を訴求する機能性表示食品への配合を可能としており、採用実績を堅調に伸ばしている。

【石川　太郎】

（冒頭の写真：完熟オクラ。中に種子が見える。BHN提供）

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