未来健康共生社会研究会シンポジウム、健康食品などテーマに講演
未来健康共生社会研究会(渥美和彦記念財団)は17日、公開シンポジウム「五感ケアによる健康長寿への挑戦~食が創る予防医学が指し示す未来~」を都内で開催し、約90人が聴講した。「食による予防医学の未来方向性」をテーマに、フレイルへの政策対応のあり方や健康食品の安全性と利用法、栄養学の目指す方向性など6つの演題について講演が行われた。
昭和女子大学生活科学部食安全マネジメント学科の梅垣敬三教授は、「健康食品の安全性確保と効果的な利用法」をテーマに、医薬品・食品・保健機能食品の違いと位置づけ、健康食品の利用環境が及ぼす影響について話した。
健康食品の利用対象者は、栄養機能食品では栄養素の補給・補完が必要な人、特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品では健康が気になり出した人であって病気の人ではないが、病者も使っているとし、高齢者と病者の健康食品の利用実態を解説した。通院患者の4割、入院患者の2割が病院にかかりながら健康食品を併用しているが、7割以上の患者が利用していることを医師に伝えていないと指摘。健康食品が関係した被害事例を挙げて、「健康食品は基本的に誰でも自由に自己判断で利用できるため、誰が、何を、どのような目的で、どのように利用するのかが重要であり、安全性に大きく影響する」と注意すべきポイントを挙げた。
梅垣教授は、健康食品を安全で効果的に利用するために、「使用期間、量、目的、症状をメモしたものを作成し、お薬手帳と併用すると、健康食品と薬の相互作用の推定に役立つ」とアドバイスした。
大阪大学寄附講座教授の森下竜一氏は、「健康医療戦略としての機能性表示食品制度」をテーマに講演。「国内では平均寿命が延びたことで健康寿命との差が約10年となり、老後期間が長期化している。糖尿病などの生活習慣病にかかる膨大な医療費など公的負担を減らすため、健康寿命延伸産業を育てる必要性があり、そのなかで2015年に機能性表示食品制度も生まれた。健康増進を前提に、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの制度を調べて改良した」など、機能性表示食品制度が誕生した経緯を解説した。
また、機能性表示食品制度が誕生する前の14年に、厚生労働省が医療機関でのサプリメント販売も可能であることを再通知したと説明。フレイルにおける認知機能低下とアルツハイマー病移行に関するデータ、加齢に伴う筋量・筋肉機能の低下に関するデータを挙げて、記憶や筋肉、肌に関わる機能性関与成分に期待を寄せた。
(写真:17日に開催されたシンポジウムの様子)