日本人はなぜマスクを外さないのか? めざす会が科学と心理学の両面から考察
コロナ禍で日本人はなぜマスクを外さないのか? 「マスクの科学と心理学」をテーマに、食の信頼向上をめざす会(唐木英明代表)が22日、第4回情報交換会をオンラインで開催した。
元朝日新聞科学コーディネーターで、ジャーナリストの高橋真理子氏は「マスクをめぐる言説を振り返る」と題して講演した。
マスクをめぐる過去の報道をたどり、我が国の厚生労働省やWHO(世界保健機関)、米国CDC(米国疾病管理予防センター)の科学的知見を比較しながら、マスク着用の是非について分かりやすく説明した。
CDCが新型コロナウイルスの感染経路は「空気感染が主」とする一方、我が国の国立感染研究所は感染経路を従来どおり「主に飛沫感染と接触感染」とし、厚生労働省も同見解に追従していると指摘。
さらに、CDCが行った住民調査によって、マスクの着用はN95タイプを常時着用して初めて、53%の防止効果が得られることが分かった。不織布は35%、布マスクは25%程度に過ぎないという結果を示し、「我が国でこのような調査がないこと自体が問題」と批判するとともに、強制的なマスクの着用は合理的ではないとした。
大手前大学の中島由佳教授は、「なぜ日本人はマスクを外せないの?」と題して、心理学者としての立場から日本人とマスクの関わりを考察した。
スペイン風邪の時に日本人の多くが感染症予防のためにマスクを着用、日中戦争で生徒がマスクを着けて戦地への物資を作成、戦後の学校給食の配膳で生徒がマスクを着用、花粉症の爆発的な流行など、日本人とマスクの親和性を紹介。
また、日本人は人の表情を目元で読むが、欧米人は口元で読む。独立的な欧米人と相互依存的な日本人など、性格的な側面から日本人にありがちな「同調行動としてのマスク」依存性を指摘した。
さらに、「乳幼児は生後10週で母親の表情を識別して模倣する」、0歳代後半~1歳で「感情」がコミュニケーション手段だと気付く。「乳幼児の時代から、相手の表情は状況判断・行動の重要な指針になる」とし、マスクで表情を隠した子育ての現状に警鐘を鳴らした。
情報交換会を前に、めざす会ではマスクに関するアンケート調査を行った。調査期間は約2週間、回答者は108人。
「あなたはマスクをするか」という質問に対し、人が多い室内や電車・バスの中では9割以上の人が「必ずする」と回答。他方、家庭や人が少ない室内、野外では「必ずする」は5割を割った。人が密集した場所で人目が気になるかどうかについて、「ひどく気になる」が最も多かった。
また、マスクをする主な理由は「感染防止のため」81.5%、「周囲の目が気になる」72.2%、「守られているという感覚」22.2%だった。
めざす会の唐木代表は「日本は自分で決めない同調圧力の国」とし、マスクを着けるか外すかは、「新型コロナウイルスの感染を考える上で大きなテーマ」と今後の指針を示した。
【田代 宏】
(冒頭の写真:N95マスクの1つ)