大麻取締法改正いつ、CBDにも影響 どうなるTHC残量濃度限度値、そもそも分析はどこで
昨年4月発足した(一社)日本ヘンプ協会(佐藤均理事長=昭和大学薬学部教授)がこのほど都内で開催した第1回シンポジウムに厚生労働省の監視指導・麻薬対策課長が登壇、同課で所管する大麻取締法の改正に関する動向をテーマに講演した。主催によれば、CBD輸入販売事業者ら200人以上がシンポに参加した。
改正法案の審議、秋の臨時国会になる可能性も
大麻取締法の改正は、欧米で承認されている大麻から製造された治療薬の解禁などを主な目的とする。一方で、健康食品などとしてCBDオイルなどを販売する事業者にも少なからず影響を与える。法改正によって、大麻規制の大原則である「部位規制」が見直されて「成分規制」に移行。これにより、大麻草から得られる幻覚作用を有さないCBDは同法の規制対象から明確に外れる可能性が高いためだ。
また、大麻草という天然物を原料とするだけに、幻覚作用を持つTHCを完全に取り除くことは困難を極める中で、一定量の残留を許容し、国として残留限度値を設定、公開する方向性も示されている。事業者を悩ませてきた大麻草由来CBD製品に関する「グレーゾーン」が、大麻取締法改正によって大きく解消される可能性がある。
「ブルーオーシャン」。同法改正後の国内CBD市場をそのように捉え、いち早く法改正に対応し、スタートダッシュを切りたい考えを語る事業者の姿もこの日のシンポでは見られた。
だが、有識者による議論を経て取りまとめられた大麻取締法などの改正法案は、当初、今通常国会で成立するとの見通しもあったものの、今のところ提出もされていない。
「(法案を国会に提出できるスケジュールは)かなり流動的というふうに聞いている」。この日のシンポで講演した監麻課長は状況をそう説明し、今通常国会には法案を提出できない可能性を示唆。しかし、だとしても次の臨時国会に提出することが「最低限」の目標になると語った。
食薬区分もハードルか 安全性の証明も課題に
一方、CBD事業者が真に気に掛けるべきは、改正法の成立、施行日がいつになるかよりも、施行日までに制定される、改正法に関連する細かな規則や基準などを示す政令や省令などの中身になりそうだ。
THC残留限度に関する具体的な数値、その分析の仕方や検査の手続き──など事業者自らで残留限度値を超えていないことを証明、担保するための規則、基準がそれら下位法令で規定される見通し。
加えて、CBDを食品として展開する事業者にとって、食薬区分も乗り越える必要のある大きな課題になる可能性が高い。
法改正の目的の1つには、大麻草由来CBDを有効成分とする難治性てんかん治療薬の医療目的利用を解禁することがある。すでに国内治験が始まっていて、いずれ審査、承認されるとみられる。そうなる前に、CBDの食薬区分における位置づけを明確にしておかなければ、結局、医薬品医療機器等法で規制される可能性が出てきそうだ。
そもそも、大麻草由来CBD製品を継続的に経口摂取することは安全なのか。一部事業者がそれを証明するためのヒト対象試験を行っているが、食品としての安全性に関して社会的な合意形成がなければ後々、強い逆風に晒されることもあり得る。
また、加工や保管の仕方次第では、CBDがTHCに変換されるとも報告されている以上、各種CBD関連製品の製造・品質管理に関する一定のルールが求められる可能性もある。
「不正ではないCBD製品が安全に使える体制を作っていくことが必要だろうと思う」。監麻課長は講演の中でそう述べ、事業者らで自発的に課題を乗り越えていくよう求めた。
【石川太郎】
(冒頭の写真:今月24日に都内で開かれた日本ヘンプ協会第1回シンポジウムの様子)