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大規模産地偽装が発覚した2022年(後) 相次ぐ産地偽装、表示規制を元食品表示Gメンが振り返る

元食品表示Gメン 中村 啓一 氏

「おとり広告」で回転ずしチェーンに措置命令も

 6月、消費者庁は実際と異なる表示で不当に客を誘う「おとり広告」を行っていたとして、大手回転ずしチェーンに再発防止を命じる措置命令を行った。ウニやカニなどの提供をうたったキャンペーンの広告を行いながら、来店した消費者に商品を提供できなかったことがおとり広告と判断された。
 食品ロス削減のためにも、外食店や小売店で販売する数の制限や売り切れは容認されるべきであり、提供できなかったことをもって不当な顧客誘引とは断定はできない。

 しかし今回は、調達事情により在庫が不足したことから、キャンペーンの食材提供を一時停止することを本部が決定、その旨を店舗に通知したにも関わらず宣伝が継続されており、さらにキャンペーン中に当日の食材を準備していなかった店舗が多数あったことがおとり広告に当たると判断された。

 最初から販売する商品を準備していないような行為は論外だが、営業や宣伝部門の方針が優先され、品質管理や法務部門のチェックが行き届かないなど、社内の連携不足が違反行為を許してしまう事例は少なくない。偽装・不正といわれないためには、チェック部門が機能する社内体制の整備が不可欠だ。

 9月、消費者庁はSNS上などで広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を行うステルスマーケティングの問題が顕在化しているとして、「ステルスマーケティングに関する検討会」を設置した。検討会は8回の会合を経て12月に報告書を取りまとめ、広告でありながら消費者にはそうと伝えないステルスマーケティングは規制の必要性があるしている。今後、どのような具体策を講じるのか注目したい。

明らか食品も「健康食品」と明記

 また、12月に同庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」を改正し、2013年版「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」を廃止した。
 錠剤やカプセル形状の食品だけでなく、野菜、果物、調理品などのいわゆる明らかに食品と認識される物も「健康食品」の範囲であることを改めて明文化。虚偽誇大な表示を行った場合は景品表示法および健康増進法の規制の対象になるとし、これまでに同法において問題となった違反事例を具体的に示している。

 2022年は、大規模な偽装事案の発覚などを背景に、補完的に関係法令のQ&Aやガイドラインの見直しが行われた。全ての加工食品を対象とした原料原産地表示の義務化など、表示ルールも五月雨的に改正されており、広告宣伝も含めて消費者への情報提供については今まで以上に注意を払う必要がある。

(了)

ステルスマーケティングに関する検討会報告書:消費者庁
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について:消費者庁

<著者プロフィール>
1968年農林水産省 入省(主に、食品産業・食品流通関係行政を担当)
2001年   近畿農政局 企画調整部 消費生活課長
2003年4月 総合食料局 消費生活課 企画官
2005年4月 消費・安全局 表示・規格課 食品表示・規格監視室長
2009年1月 総合食料局 食糧部 消費流通課長
2011年 8月 農林水産省 退官
近畿農政局時代にBSE、牛肉偽装問題を担当、以来10年にわたり食品表示の監視業務に携わり、さまざまな食品偽装を摘発。2008年の事故米不正流通ではチーム長として、事故米の流通ルートの解明を担当した。公務員として、東日本大震災被災者への食料支援が最後の業務となった。
退官後は、「元食品表示Gメン」として食品表示に関わるさまざまな情報を発信、メディアにも出演している。
<著 書>
『食品偽装・起こさないためのケーススタディ』共著(ぎょうせい)2008年
『食品偽装との闘い』(文芸社)2012年

関連記事:回転寿司スシローに措置命令 「おとり広告」で顧客を不当に誘引
    :大規模産地偽装が発覚した2022年(前)

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