「空間除菌ウイルス除去」規格化へ 大幸薬品、22年第2四半期決算発表で
大幸薬品㈱(大阪府吹田市、柴田高社長)は16日、2022年12月期第2四半期の連結決算発表をオンラインで行った。経理部IR担当の中条亨氏が決算概要について、柴田高社長が事業概要について説明した。
同社は、22年12月期より新たな会計基準を適用。前期の数値も新基準に組み替えて比較しているため、前年同期の売上高や売上総利益、販売費および一般管理費はそれぞれ減少している。ただし、営業利益に影響はない。
売上18億5,700万、経常25億1,500万の損失
第2四半期の売上高は18億5,700万円と、前年同期に比べ61.5%の大幅なマイナス計上となった。営業損失は24億1,700万円(売上比130.1%減)、経常損失25億1,500万円(売上比135.4%減)と2期連続の減収減益となった。
同社の事業別セグメントは、主に「正露丸」を中心とした医薬品事業と「クレベリン」を中心とする感染管理事業だが、売上高減少の要因は、感染管理事業における需要減少と消費者庁による措置命令の影響によるものが大きい。措置命令による小売店からの返品などの影響により、売上総利益段階で売上比9.5%の赤字となった。
セグメント別では、医薬品事業は売上高14億8,800万円(前期比80.2%)。『セイロガン糖衣A』の一部原材料変更に起因する生産量の低下と、前期末より償却を開始した京都工場の固定費の増加が影響した。原料の調達に関しては、おおむね9月で完了し10月からは正常な通常の生産が可能で、コロナによる影響も回復傾向にあるとしている。
感染管理事業は、売上高3億6,500万円(前期比12.3%)と大幅な減収を示した。これは、「消費者庁から1月と4月に受けた措置命令の影響による返品、パッケージ表示の見直しにより、一時的に出荷を制限していたため、前年同期からは減少したものの、4~6月期においてはコロナ前の19年の実績を上回っており、需要期ではない時期の当社製品へのニーズの高まりはある。8月から新パッケージによる商品の出荷も始まっており、秋から冬の需要期にかけてシェアの回復を目指している」という。
通期売上予想は60億円、配当は「無配」
通期予想について同社は、売上高60億円(前期比60.5%)と発表。その内訳は、医薬品事業38億4,300万円(前期比94.4%)、感染管理事業21億5,000万円(同36.8%)、その他7億円(同96.3%)と説明。営業損失は28億円、経常損失は30億円。当期純利益についても、希望退職関連費用等の特別損失などで33億円の赤字と、2期連続の赤字を計上するため、配当については「無配」とし、「早期の業績回復と復配を目指して立て直しを図る」とした。
「25年までに売上100億円に」(柴田社長)
柴田社長は、2期連続の大幅赤字となる見込みに対して謝罪する一方、「当期中に事業構造改革に伴う損失の整理がほぼ完了する見込み。大変な1年だったが、次の成長に向けてアクセルを踏みかけている状況」と説明。
成長軌道にもっていくために、「自社の独自性を活かし、顧客志向とリソースの集約を実行するための実行可能な経営方針を立てる」とした。そのために「希望退職制度で組織をスリム化した。販促費も含めてコストをしっかりと削減した。利益につながる事業を見直し、筋肉質で強い会社にし、収益性を上げる」と述べた。具体的には、人件費を21年28億円から23年20億円まで改善し、人権費を除く販管費を47億円から28億円まで下げる計画を検討、実施している。固定費を削減し、マーケティングコストを最適化することで、20年までに膨れ上がった損益分岐売上高を145億円から85億円まで下げ、25年には売上100億円、営業利益8%に改善する」とし、これは我々としてはミニマムな目標だと宣言した。
個別の事業については、インバウンドで縮小した止瀉薬「正露丸」の国内外の市場の回復と、整腸薬としての認知拡大を挙げた。そのために、タレントの藤井隆さんを起用しているテレビCMを中心に、SNSやデジタルを含めたメディアミックスで、正露丸のキーメッセージをしっかり伝え、「ラッパ・ブランドの再成長を目指す」とした。
二酸化塩素空間除菌の規格化へ
感染管理事業については、「クレベリン」のさらなる理解促進と信頼醸成の必要性を強調した。
「流通できる二酸化塩素の製品に関しては我々にオリジナルがあり、特許があり、論文がある。さまざまな生活環境の課題を解決する唯一の製品を売り出していると我々は自負している」と強調。そのリソースを、二酸化塩素製品に特化し、安全性と有用性の理解をしっかりと進める。「原点に立ち返り、臭い、カビ、閉鎖空間での除菌について理解を進めていきたい」と続けた。また、問題とされている二酸化塩素の空間除菌ウイルス除去の規格化を進めていきたいとし、「規格がないので参入障壁がない、ルールがないという行政担当者と、規格化に向けた協力もいただけるということを前提に、(一社)日本二酸化塩素工業会では、コミュニケーションを通して、せっかく出来上がった市場をさらに確固たるものにしていくという方針で進める。最適な生産体制を確立していく」としている。
クレベリン事業からの撤退はないかとの記者からの質問に対し、「撤退は全く考えていない」と否定。現在、操業を停止している茨木工場についても、「大幸薬品の成長のドライブになる工場。来期になって再検討するが、茨木工場を動かすために会社が動いていると理解してほしい」と結んだ。
【田代 宏】
(冒頭の写真:右から柴田高社長、中条亨氏)