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元食品表示Gメン、はま寿司に喝ッ! またもや回転寿司?使用期限を超えた食材提供

元食品表示Gメン 中村 啓一 氏

 おとり広告や迷惑動画拡散など、回転寿司の信頼を損なうニュースが相次いでいる。SNSで拡散された利用客の迷惑行為は度を越しており、対策として寿司は回転させないなど日本が生んだ「回転寿司」という世界に誇ることのできるビジネスモデルが今や崩壊の危機にある。

シールの貼り替えは確信犯的行為

 その最中に、回転寿司チェーン「はま寿司」の店舗で魚や果物などの使用期限が切れた食材を消費者に提供したことが明らかになった。使用期限を守らず、さらに期限シールを貼り替えて使用したことは確信的であり食を扱う者の行為として看過できないが、その報道については冷静な対応を求めたい。

 同社の公表によると、自社の食品管理基準で設定された「使用期限」が過ぎた食材を、目視により変色など状態の劣化が見られなかったものに対し期限シールを貼り替えて使用したとしており、社内基準に違反したというものだが、どうして現場で社内基準が守られなかったのか。

 食品事業者が製品の消費期限表示を定める場合は、未開封で保存方法に従った場合の経時変化に安全率を見込んで設定される。消費者もそのことは承知しており、商品に問題がなければ消費期限を若干過ぎても気にしないベテラン消費者も少なくない。
 同様に、事業者が社内基準として設定する食材の使用期限も安全率を見込んで設定されるが、今回の社内基準違反は、店舗従業員がベテラン消費者と同じ感覚で食材を扱ってしまったのではないか。

 社内基準違反は法律にも違反するのか?
 2006年に発覚した不二家の期限切れ牛乳を原料として使用した問題は、連日報道される騒ぎとなった。当時、筆者は農林水産省で食品表示を監視する立場から、この事案を担当していたが、朝のTVワイドショーで賞味期限の切れたチョコレートに牛乳を加えて再生品にして出荷していると、チョコレートの製造工程ではあり得ない行為をイラスト入りで解説しているのを見て驚愕したことがある。 

興味本位の報道がエスカレート

 興味本位に加熱した報道が現実を見えなくし、事実を歪曲させる情報を拡散させる事態となってしまった。
 不二家の場合、牛乳の仕入れ先がワンウェイの容器を基準とした使用期限をリターナブル容器については安全率を厳しくして短く設定しており、これを1日超過したものだ。
 同時に報じられた社内基準を超えたプリンの消費期限も、設計上の品質保持期限は超えていないことから、食品表示違反(当時のJAS法)とはなっていない。
 一方、食品衛生法は、原材料の適正な管理を求めた「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針」に違反するとした。

ルール順守のための体制整備が必要

 はま寿司の場合は、外食であり食品表示法の対象ではないが、実際に健康被害がなくても食品衛生法上の管理責任は免れない。何より、自ら定めたルールを守ることのできない組織としての体制の見直しは必要だろう。同社は「今回のルール不徹底の発生は個店事情による店舗責任ということではなく、当社の運営そのものにも問題があると受け止めています」としており、現場の責任に終わらせない改善策に取り組む姿勢に期待したい。

メディアも冷静な対応を

 飲食店での悪ふざけなど、若者の迷惑動画がネットで拡散され問題となっているが、このような行為は今に始まったことではない。筆者が若い頃、50年以上も前にも同様のいたずらはあった。喫茶店で卓上のシュガーポットに塩を入れたり、醤油の差し口を楊枝で塞いだりする悪ガキを目撃したこともあったが、当時はその場の出来事で終わっており、広く世間に知らしめる手段もなかった。
 現在は、軽い気持ちのいたずら行為がリアルな映像としてネットで広く拡散され、さらにその映像がワイドショーなどで繰り返し流されることによって関係者に甚大な影響を与えている。事業者には不適切な行為に対する毅然とした対応と併せて、先手を打った迅速な情報提供など、ネット社会を前提とした対策が求められるが、メディアにも社会的影響と事実関係を踏まえた冷静な報道を求めたい。

<著者プロフィール>
1968年農林水産省 入省(主に、食品産業・食品流通関係行政を担当)
2001年   近畿農政局 企画調整部 消費生活課長
2003年4月 総合食料局 消費生活課 企画官
2005年4月 消費・安全局 表示・規格課 食品表示・規格監視室長
2009年1月 総合食料局 食糧部 消費流通課長
2011年 8月 農林水産省 退官
近畿農政局時代にBSE、牛肉偽装問題を担当、以来10年にわたり食品表示の監視業務に携わり、さまざまな食品偽装を摘発。2008年の事故米不正流通ではチーム長として、事故米の流通ルートの解明を担当した。公務員として、東日本大震災被災者への食料支援が最後の業務となった。
退官後は、「元食品表示Gメン」として食品表示に関わるさまざまな情報を発信、メディアにも出演している。
<著 書>
『食品偽装・起こさないためのケーススタディ』共著(ぎょうせい)2008年
『食品偽装との闘い』(文芸社)2012年

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