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エビデンス入門(40) PRISMA-Sについて

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科講師 竹田 竜嗣

 エビデンスに関連する基礎知識について連載している。今回は、2021年1月に発表された、PRISMA-Sについて取り上げる。

 PRISMA声明は、すでにご存じの方も多いと思うが、「エビデンスに基づく医療(EBM)の実践ガイドライン」において発表された「システマティックレビュー(SR)およびメタアナリシス(MA)のための優先的報告項目」がPRISMA声明であり、SRやMAを実施し発表するうえで提供すべき情報や報告事項について項目立てで記載されており、機能性表示食品の研究レビューについてもPRISMA声明に基づいて作成することが求められている。

 世界的に見ても医学研究の報告数は、デジタル技術の普及による出版の高速化とともに年々増えてきている。特に「専門家による査読」もスピードが求められる時代になっており、質の高い研究を早く出版することが求められる時代になってきた。
 著者もよく論文査読を国内外問わず依頼されるが、ここ数年で査読の締め切りは早まっており、1週間程度で査読期限があるような雑誌も増えている。論文においてもスピード出版が要求される時代になってきている。

 また、出版の高速化に伴い、文献情報を収載する「文献データベース」も更新速度のアップが求められている。PubMedをはじめとするさまざまなデータベースサービスでは、文献情報記載のスピード化が進んでおり毎日のように更新されているのも事実である。

 検索情報は、SR作成において非常に重要であり、恣意的な検索にならないよう、機能性表示食品制度でも網羅的な検索が望まれている。特にSRやMAを作成する際にも検索過程の善し悪しが結論を変える可能性がある。このような情勢において2021年1月にPRISMA声明の検索に関する拡張版ともいえる「文献検索手順記録方法の指針“PRISMA-S”」が発表された。

 このPRISMA-Sでは、これまでも問題になってきた、文献検索過程を詳細に記載することで、検索結果の再現性やロバスト性を担保することを目的にして4セクション・16項目のチェックリストで構成されている。既存のPRISMA声明2009でも文献検索に関する項目は3項目ほど設けられているが、最適な検索方法が示されているわけではなく、SRやMAの作成者に方法の妥当性の判断は委ねられてきた。

 これらを補完する目的で、PRISMA-Sでは、既存の出版物に関するデータベースや臨床試験登録データベースなどの「情報源・方法」、実際の検索にかかわる検索式の制約や限界・検索フィルターの使用有無・先行研究の検索手法の活用状況、検索の実施日等に関する「検索手段」について、さらに検索プロセスの「ピアレビュー」(検証、査読)、検索結果の全レコード数・複数の情報源を用いた場合の重複処理の扱いなどにかかわる「検索結果の管理」などについて項目立てられており機能性表示食品制度に直ぐ関わるわけではないが、研究レビューの検索過程の妥当性について考える1つのヒントになりうる。PRISMA-Sは、BMC社が刊行する“Systematic Review”誌に全文が無料で掲載されている。ぜひ原文を読んでみてほしい。 
                       
 PRISMA声明も新たに「PRISMA2020」が発表されるなど、今後、システマティックレビュー(SR)のあり方や、記載事項について変化することが予測される。実際、消費庁も「―2020」に合わせたガイドラインの準備を進めていると聞く。この点については、稿を改めるとしよう。
                                                   

(つづく)

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