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エビデンス入門(12)変化量の群間差の考え方

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣 氏

 今回は統計的手法について解説する。ランダム化比較試験の場合、試験品群とプラセボ群の割付は無作為に行われる。無作為化の方法はいろいろあるが、機能性表示食品などの食品臨床試験の無作為化については、試験開始時に評価項目や被験者背景(男女、年齢)に群間の差(有意差)が付くことを極力避けるために、無作為化する際も、群間差が生じないような割付を実施する。最小化法や層別ブロック化など、いくつかの手法がある。

 しかし、試験期間中の被験者の脱落などにより、試験開始時の被験者数と試験終了時の被験者数に変化が生じることによって、開始時の評価項目に有意差が生じることがある。そのような場合は、各群の「初期値からの変化量=前後差」について統計処理を行い、有意差を確認する手法を用いる。

 前後差の検定については、さまざまな意見がある。まず、前後差の検定における評価には制約条件があるという意見があり、初期値に群間の差がない場合、前後差で有意差があっても、エビデンスとして有効かどうか疑問という意見がある。

 また、評価項目によっては、前後差の大きさが測定値に依存する可能性がある(初期値が高い症例は後値が低くなりやすい、初期値が低い症例は後値が高くなりやすいなど)ため、用いるのは望ましくないなど、否定的な意見もいくつか存在する。

 このように、さまざまな意見がある。筆者は前後差の解析について、制限事項があるが、有効だと思っている。まず、初期値に差がある場合、後値の解析結果は意味を持たなくなってしまうことが大きな理由である。無作為化を行うと、評価項目に差が生じる場合がある。これは避けられない問題であり、無作為化を重視し、差が生じた場合の評価方法は必要だと考えている。

 制限事項としては、前後差の解析は差が生じた場合の代替手段として有効であることと、測定ポイントが複数ある臨床試験では最終のエンドポイントでの評価に留めるべきだと考えている。検定の多用は多重性の問題があり、前後差の比較は特殊な比較であるため、極力多用しないことが重要と考える。

 また、前後差の解析以外では、初期値に差がある場合、初期値を共変量とした共分散分析による解析も知られている。これは、初期値の差を補正し、後値で解析する手法である。こちらも、初期値に差がある場合以外は妥当でないという意見も存在するが、解決手段の1つとして有効である。

 試験計画時にどの解析を用いるのかを想定し、後付け解析であると捉えられないようにしておくことが重要である。

(つづく)

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