1. HOME
  2. 健康食品
  3. エバーライフの障がい者サポート~取り組みと成果(前)

エバーライフの障がい者サポート~取り組みと成果(前)

 東京パラリンピックを来年に控え、障がい者スポーツに注目が集まっている。一方、法定雇用率が2.2%に定められている障がい者雇用については、昨年、中央省庁による水増し問題が発覚するなど課題は多い。健康食品の通信販売を営む(株)エバーライフ(福岡市中央区)は今春、重い障がいを持つ短大生・日髙美咲さん(20)を一般の新卒募集で採用した。同社の取り組みについて、取締役で営業本部長の徳永義尚氏と人事総務グループの室園奈々氏に話を聞いた。

<社員の人間的な成長が生産性を向上>

 ――日髙美咲さん採用の経緯についてお話しください。

 室園 新卒採用のための大学の学内説明会で、同校の生徒さんとして応募してくれたのが日髙さんでした。車いすに乗って当社の説明を聞くためにブースを訪ねてくれたのが最初の出会いでした。

 ――障がい者雇用の拡充など、会社の取り組みとしての採用ではなかったのですね。

 室園 そうですね。一般募集によるものです。弊社のオフィスが入っているビルは、ありがたいことにバリアフリー設備が整っていますので、障がい者の方も平等に一般枠として応募を受け付け、柔軟に対応しています。日髙さんもほかの学生さんと同じように学内説明会で話を聞きに来られ、その後、社内で開催した個別説明会にも参加してくれました。

 彼女の希望はコールセンタースタッフの一員になることだったようですが、お客様を相手にするとなると相応のスピード感などが必要となります。お客様側は対応しているオペレーターがどのような状況にあるのかを理解できませんので、職務上どうしても無理な部分がありました。

 ――現在はどのような仕事を?

 室園 コールセンタースタッフとしての採用は難しかったのですが、個人的に話をお聞きしたところ、人柄が素晴らしく、「障がいを持っているけれども、障がいがあるから無理ということではなく、障がいがあってもここまでできると言えるように、そのためのチャレンジを怠らない」という生き方を続けていることがわかりました。

 その強い気持ちと行動力、勇気、根性があれば、体の特徴として、特定の限られた仕事はできないかもしれないけれども、人としては十分に採用したい人材だと感じました。そのような社員が職場にいて、社員同士が刺激を受けつつ気遣い合いながら一緒に仕事をしていくことは、スキルアップだけではなく、人間的な成長につながり、広い意味での生産性の向上につながるのではないかと考えたのです。

<一緒に働くことで多様な価値観が身に付く>

 ――具体的な業務について。

 室園 上司とも相談した結果、彼女は人事総務グループに配属しました。パソコンは学生時代の訓練で、指先だけでコントロールできるトラックボールと呼ばれる特殊な装置を使って巧みに操作できましたので、パソコン上で完結できる給与計算を担当してもらっています。

 彼女自身、非常に能力も高いので、これから先の人生を生きていくためには、誰かの仕事を切り取った簡単な作業のみをこなすような仕事ではなく、いろいろなスキルを身に付けていくべきだと思っています。給与計算では保険や税務の知識も必要ですから、仮に将来、転職するような場合でも武器になるようなスキルを当社で働きながら身に着けてほしいと思い、人事総務グループへの配属を決定しました。

 ――勤務に不便などはありませんか。

 室園 身体の状況として、お手洗いも1人では行けませんので、受け入れ前は不安もありました。しかし、昼休みはヘルパーさんに来てもらい、お手洗いと食事の介助をしていただくことで社員に大きな負担がかかることもなく、半年以上が経ちました。

 ――ヘルパーさんを雇うとそこにコストがかかってきますが、それでもなお採用することの意義は大きいと?

 室園 はい。当社の経営方針として、社員の人間的成長が会社の発展につながるという考え方があります。現在の国の障がい者支援制度では、就労時のヘルパー利用は認められていませんので、コストは企業側の負担となるのですが、彼女と一緒に働くことで、社員一人ひとりが多様な価値観を身に付けることができるなど、もっと広い意味で会社が発展するための基盤を形づくる要素も多いだろうと判断しました。

<1つの個性として人対人のコミュニケーション図る>

 ――社員の皆さんの反応はいかがですか。

 室園 人事総務グループが9人、経理なども含めればワンフロアに25人ぐらいのスタッフがいるのですが、最初のうちは彼女にどのように話しかけたらよいのか、何をしてあげたらよいのか、コミュニケーションの取り方に戸惑った社員も多かったようです。それが対等な目線で、人対人としてのコミュニケーションが深まることで、少しずつ自然体に近づくことができました。

 彼女は1人で水を飲んだり、おやつを食べたりもできませんので、自分が食べたり飲んだりするタイミングで気にかけてあげるようにお願いしたところ、今では「今日は何を飲む?」などと自然なかたちで意思の疎通を図ることができるようになりました。

 ――障がいを1つの個性として受け入れるということですね。

 徳永 今では同期のメンバーが集まって一緒に昼食を食べたりもしているそうで、同世代とも楽しそうにコミュニケーションを取っています。彼女を採用したことで、社内に生産性や社会に対する意識を醸成させることができた気がします。

 室園 夜の食事会なども本人が行きたいと言うときは同伴し、みんなで食べさせてあげながら、一緒に楽しい夜を過ごしたりもするのですよ。仕事の後の楽しみも社会人の醍醐味ですからね。

(つづく)

(写真:(右から)徳永義尚さん、日髙美咲さん、室園奈々さん)

【聞き手・文:田代 宏】

/(後)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ