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アフィリエイト広告検討会を総括!(4)
26条「適正管理措置」はソフト・ローの措置(前)

弁護士 池本 誠司(いけもと せいじ)氏

池本誠司弁護士は、特定適格消費者団体の代表を務める人権派弁護士。これまでにも行政が司る各種検討会の委員を務めてきた。消費者目線に立った分かりやすくて鋭い突っ込みが持ち味。アフィリエイト広告の指針に盛り込む具体的な中身こそが大切と説く。

ルール上 広告主が管理すべき

――アフィリエイト広告検討会への評価は?

池本 昨年3月にT.Sコーポレーションに対する措置命令が下されました。その時にある業界紙が、アフィリエイト広告の代理店を通じ、あるいはASPを通じたその先のアフィリエイターの個別の不当表示のことで広告主が措置命令を受けたと報じたと聞きました。そういう管理ができない先の先のことで措置命令を出すとはいかがなものか、という批判的な記事でした。

 

 検討会の報告書の中にも記載がありますが、2008年の東京高裁の判決では、「表示内容の決定に関与した事業者が不当表示を行った者に当たる」とし、それは「自らもしくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者のみならず、他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者や、他の事業者にその決定を委ねた事業者も含まれる」という解釈を示しました。それを受けるかたちで、消費者庁の「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(2011年)や「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(2013年)があり、その延長に行政処分があるわけです。

 それ以前にも、本体の自社の広告上の不当表示にアフィリエイト広告も付いているケースもあったのです。そういう意味で私たちの受け止めからすれば、従来のルールの延長線上で出てきたものだけれども、アフィリエイト広告の部分だけで明確に処分したという意味では確かに注目される事案です。しかし、管理できないもので処分されるのはいかがなものか、という評価は、誤解による的外れの批判です。

――元々、裁判所でも行政庁においてもルールとしてあったと?

池本 そうです。管理できないところでの処分ではなく、管理しなければならないことが十分にできていない。そこをどうするかというのが今回の検討会での議論でした。

条文化求めるも平行線に

――景表法26条に基づいて今回、アフィリエイト広告版のガイドラインを作ることになりました。

池本 それは評価できるところですが、私はそれプラス、アフィリエイト広告主に責任があるということを、業界の一部なのか多数なのか分かりませんが、現にそのルールの認識ができてない実態があるのだから、どこか条文で、広告主に責任があるということを明記したらどうかと発言しました。それに対しては「法規制は必要ない。一部の悪質業者の問題であって、業界全体はちゃんと対応している」という意見がたくさんありました。管理しなければならないことが十分に管理できていないという点については、学識者も事業者の皆さんも異口同音におっしゃっていましたが、条文化するという点では最後まで平行線だったと思います。

本当に一部事業者の問題か?

――悪質なアフィリエイト事業者は全体の0.01%に過ぎないという話もあります。

池本 国民生活センターからの報告や消費生活相談員からの発言にもあったように、問題はアフィリエイト広告なのか、自社の広告なのか、それとも全く第三者のコメントなのかが、消費者には区別できないという点です。そもそも相談者が理解していないから、相談員も見極めがつかない。私は、アフィリエイト広告は委託を受けた広告であるということが明示されるルールを作った上で、トラブルが増えているのか減っているのかを判定しなければ、始まらないと思っています。

「一部のものであるというのは間違いないのか?」それに対して業界側は「これはあくまで一部の問題だ」という、そこの受け止め方の違いというのが根本にあったと思います。

――アフィリエイトかどうかの見極めができないのが問題なのですね。

池本 弁護士の立場としては、ルールを条文に明記するというのは望ましいと思いますが、私自身、今すぐ景表法に条文を置くことにそれほどこだわっているわけではありません。

 景表法26条の適正管理措置は、報告書の中でも明確にされていますが、指導・勧告・公表というソフト・ローの措置であり、行政指導ベースの措置なのです。指導も勧告も公表も、概念上は行政処分ではない。これは学者の見解も一致しています。26条を作ったときにも議論されたのですが、悪質業者を行政処分で叩くという従来からの手法とは別に、平均的・一般的な事業者の中には、法令は遵守したいけど「じゃあ何をどうすればいいの」という層が実は多い。そういう事業者に対して、自主的な未然防止の対策を取ってほしいというので、努力義務的な規定を入れる。しかし単なる努力義務ではなく、指導・勧告・公表というソフトな形で指導する。業界の自主規制をメインにしながら、それを行政がバックアップしていく仕組みです。仮に一部の悪質業者がさらに横行していくようであれば、その自主規制のルールを支援するためにそのルールから明らかに外れている部分に法規制を加えていくということです。

(つづく)

【聞き手・文:田代 宏】

関連記事:アフィリエイト広告検討会を総括!(3)善良な消費者が騙されない業界を

    :26条「適正管理措置」はソフト・ローの措置(後)

<池本弁護士プロフィール>

1982年4月 弁護士登録(埼玉弁護士会所属)

(以下、現職)

日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員、明治大学兼任講師 法学部・法科大学院(消費者法)、国民生活センター 客員講師、適格消費者団体埼玉消費者被害をなくす会 理事長、消費者庁アフィリエイト広告に関する検討会委員、消費者庁特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会委

<主な著書>

日弁連消費者問題対策委員会編「消費者法講義(第5版)」(2018年日本評論社)、齋藤・石戸谷・池本「特定商取引法ハンドブック(第6版)」(2019年日本評論社)、後藤・池本「割賦販売法」(2011年勁草書房)、後藤・齋藤・池本「条解・消費者三法(第2版)」(2021年弘文堂)

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