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景表法第5条3号の適用求める 消費者庁が公開、第5回ステマ広告検討会(前)

 消費者庁は25日、第5回ステルスマーケティングに関する検討会(ステマ広告検討会)を開催した。
 北尻総合法律事務所の壇俊光委員が「ステルスマーケティングの問題点について」と題して見解を発表。京都大学大学院法学研究科准教授のカライスコス・アントニオス氏が「諸外国におけるステルス・マーケティングの規制」について現状を説明した。当日の映像は、YouTubeで配信された。

ステマ規制の実体法が必要

 壇委員は、ステマ規制の実体法が必要だと主張した。刑事罰は制定後の乱用が懸念される、民事法による規制についても長く証拠収集方法が検討されているものの確立されていないので適当でないと2つの選択肢を否定した。
 また、新たに法律を作るには時間がかかり過ぎるとし、特定商取引法においても対象から外れる事業分野が多すぎることなどから、「景品表示法第5条3号の指定告示による規制が最も適しているのではないか」と述べた。そしてこの場合、運用が肝となるため、ガイドラインなどで法執行の予見可能性を保つことが大切だと付け加えた。さらに、プラットフォーマーなどによる連絡協議会における情報収集と共有、消費者団体などへの通報窓口の設置、消費者教育の必要性などを提案。また、可能な限り、消費者庁が事業者や国民などの照会に答えるかたちのノーアクションレター制度の導入も求めた。

 景表法5条第3号は、優良誤認や有利誤認に該当しないものを内閣総理大臣が指定することで規制対象とするもの。これまでに、①無果汁の清涼飲料水等についての表示、②商品の原産国に関する不当な表示、③消費者信用の融資費用に関する不当な表示、④不動産のおとり広告に関する表示、⑤おとり広告に関する表示、⑥有料老人ホームに関する表示――の6件が指定されている。

諸外国では不正取引を広く禁止

 アントニオス委員は、EU・アメリカ・オーストラリア・カナダにおける規制の現状を紹介した。
 EUでは、2005年5月に立法した不公正取引方法指令によって取引方法全般を広く規制しており、契約の締結があるか否かを問わず、取引の前、最中、そしてその後の取引も広く規制対象とし、不公正な取引方法を全て広く禁止している。したがって、すでにこの段階で「ステルスマーケティングは禁止されている」という。
 ただし、この一般条項が抽象的であるために、その代表的な類型として「誤認惹起的取引方法」、「攻撃的取引方法」などが契約の有無に関係なく規定されており、さらにその取引方法の類型を示すためのブラックリストが示されている。

ブラックリストで5項目を禁止

 ブラックリストでは、「商品を販売促進するためにメディアの編集コンテンツを使用し、かつ、その販売促進のために事業者が代金を支払ったにもかかわらず、そのことをコンテンツの中で、または消費者が明確に見分けることができる映像もしくは音声によって明確にしない記事広告」、「検索結果内の商品のランキング上位を達成するための有料広告であること、または特別な支払いをしていることを明確に開示することなく、消費者のオンライン検索クエリに検索結果を提供すること」、「事業者が、自己の商業・事業・手工業もしくは職業に関係する目的で行為しないとの虚偽の主張をし、もしくはそのような印象を与えること、または自己が消費者であるとの虚偽の表示をすること」、「実際に商品を使用し、または購入した消費者からのものであることを確認するための合理的かつ比例的な措置を講じることなく、商品のレビューがそのような消費者によって提供されたことを示すこと」、「商品を宣伝する目的で、虚偽の消費者レビューもしくは推奨、または不実の消費者レビューもしくは社会的推奨を投稿し、または別の法人もしくは自然人に投稿させること」――の5項目が禁止されている。

海外では推奨者が責任を負うことも

 同氏は、「日本ではブラックリストが注目されがちだが、裁判所や行政当局は、まずはステルスマーケティング的なものがブラックリスト項目に該当するかどうかを確認した上で、該当しない場合には、誤認惹起的取引方法・攻撃的取引方法という一般条項の誤認、さらにそれにも該当しない場合には一般条項でそれらが不公正となるかどうかを確認する仕組みとなっている」とし、「非常に包括的な規制となっているのが特徴」と強調した。

 米国においてもEU同様、1914年に立法されたFTC法(連邦取引委員会法)によって「取引に影響を与える不公正、または欺瞞的な行為や慣行は違法である」と、不正行為を広義に捉えて禁止していると説明した。
 また、ステルスマーケティングについて「(推奨は)欺瞞的となるような表明を明示的、または黙示的に行うものであってはならない。推奨者の意見等を歪曲するような、文脈を無視した表示、言い換えは許されない」と禁止。推奨者に対しても「推奨の時点で商品を実際に使用したことがある者でなければならない」と定めている。さらに推奨した際の責任について、「広告主は、推奨を通じて行われた虚偽、または根拠のない表明、および、広告主と推奨者との間の重要な結びつきを開示しなかったことについて責任を負う。また、推奨者も、その推奨の一環として行われた表示について責任を負う場合がある」としている。

海外では包括的な規制が特徴的

 その他の国の規制もほぼ同じだとし、誤認惹起的あるいは欺瞞的な行為について規制が行われており、しかも有利・優良誤認を問わず「とにかく消費者の誤認を生じさせてはならないという規制となっており、行為というものが広く捉えられているところが特徴的」(同氏)と包括的な規制になっている点を強調し、繰り返した。
 さらに諸外国の特徴として、「いずれの立法においてもどういう手段で行われているのかということはあまり重視しない、ほとんどタッチはしていない」とし、その理由として「(ITなどの)技術が進展する中で、新しい技術が出てきた時に立法が使えなくなるような事態を回避するため」とした。法執行についても「多様、そして強力なエンフォースメントの手段が用いられている」と付け加えた。
 我が国の今後について同氏は、「5条3号の適用が現状では一番いいと思う」と壇委員に賛同した。

 続いて事務局(消費者庁)が「主な検討事項のこれまでの整理と今後の検討の視点」について説明した後、意見交換が行われた。

(つづく)
【田代 宏】

消費者庁の公表資料はこちら
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