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WNGプレミアムセミナーセッション3開催 唐木氏、「京大論文でスピンを取り上げたことは評価できる」

 ㈱ウェルネスニュースグループ(WNG、東京都港区)はきのう12日、プレミアムセミナー「機能性表示食品『紅麹サプリ』が残した大きな課題~そしてこれから」をオンラインで開催した。

 計4回にわたるセミナーで、今回はその3回目。セッション3「規制の現状と課題」と題して開催した今回、まず初めにWNG担当記者が、容器包装表示を巡る新ルール、新たに導入される「120日ルール」、サプリのGMP規制といった改正・機能性表示食品制度について詳しく説明した。また、制度運用・監視に関わる行政コスト、機能性表示食品以外の「サプリメント」規制の行方について説明した。

 特別講師として、東京大学名誉教授で食の信頼向上をめざす会代表の唐木英明氏が講演した。
 まず初めに唐木氏は、「健康被害情報の届出制度」について解説した。令和2年6月~令和3年12月の1年半の間にワーキンググループが審査した「指定成分等含有食品等との関連が疑われる健康被害情報」は388件だった。それに対して、「指定成分等含有食品以外の製品との関連が疑われる健康被害情報」は16件しかなかったとされている。比較材料として、2023年の食中毒は1,021件、健康被害は1万1,803人、死者は4人発生している。それに対して、届出がない健康被害は少なくともこの100倍と推定されている。唐木氏は、「いわゆる健康食品による健康被害が16件というのはあまりにも少なすぎる。現在、健康被害情報について、製造・販売者は届出義務があるが、医療機関は努力義務となっている。また、消費者や医師などから健康被害の情報を収集できる体制をつくることを事業者だけに求めているが、これではサプリの健康被害情報収集は、まだ十分ではない」と指摘した。

論文の質と誇大広告問題

 9月5日発売の「週刊文春」(9月12日号)に、「京大論文で分かった危ういサプリ実名リスト」と題する記事が掲載された。記事の背景にあるのは、今年2月に発表された元・国保旭中央病院医長の染小英弘氏が筆頭著者として掲載した論文(京大論文)。論文では、機能性表示食品の根拠論文の質に疑問を投げ掛けた。唐木氏は、「論文の質と誇大広告問題」について解説した。

 科学の品質に関わる問題として唐木氏は、①データの捏造や改ざん、剽窃といった最も重大な科学の不正、②不適切な実験方法や統計処理といった排除できていない不正、③誇張や恣意的選択、非総合的判定などの不適切な記述があると指摘。中でも③は、実験結果が正しく記載されていれば、解釈については多少の誇張は不正とみなされず「訂正」で終わるという比較的軽視されている問題だと話した。それで良いのかということを指摘したのが染小氏らによる京大論文と説明。

 京大論文では、これまで比較的軽視されてきた問題を取り上げており、CROが行った76件のRCT登録の中から32件のRCT論文、11件の機能性表示食品の宣伝広告を調査。また、RCT論文の72%で選択的な結果報告(バイアス)があった、約80%のRCT論文の要約、全文、結論で「スピン」が見られたとしている。唐木氏は、同論文において「スピン」とは、①「実験結果」で、有意な結果のみに焦点を当てたり、その結果のみをグラフ化していた場合、②「結論」が有意な結果のみに基づいていたり、有意でない主要な結果を無視していた場合、③「要約」で有意差がない主要な結果を省略して、有意差がある副次的結果のみを記載した場合と定義している。この定義は適切なのか、納得できる部分とそうではない部分があると話した。

 「スピンなし」とする「シロ」の部分と、「スピンあり(許されないスピン)」とする「クロ」の部分の間に、「場合による」とする「灰色」の部分がある。唐木氏は、京大論文の基準は「シロ」でないものは「クロ」と機械的に判定しており、実験結果の全てが正確に記載されていることを前提にして仮説に基づく解釈の記載(主観的選択)を許容するのが科学であり、それが多くの論文の基準だと話した。また、「これまであまり問題にされてこなかったスピンを取り上げたことは評価できる。仮説の成立を主張することで高評価を得るための選択的記述の傾向は常に存在するため、研究者は改めて注意する必要がある。ただし、スピンは判断が分かれるところがあり、仮説の成立を主張するための実験結果の選択的記述などただちにスピンと判断できないこともある」などと話した。

 次回のセッション4「未来への展望と新情報」は、9月26日午後2時から開催する。今回同様、WNG記者による報告と解説、唐木氏による講演を行う。

 同連続セミナーは、10月末までYouTube「ウェルネスデイリーニュース」チャンネルで見逃し配信を行っている。アーカイブ動画視聴をご希望の方について、下記から申し込みを受け付けている。

●WNG会員の方はこちらから

●一般の方はこちらから

お問い合わせ先:㈱ウェルネスニュースグループ(TEL:03-6205-8181、E-mail:info@wellness-news.co.jp

(冒頭の写真:講演した唐木英明氏)

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