PS研究会、機能性表示食品制度への対応で柿野氏が講演
健康・長寿研究談話会(矢澤一良会長)は9日、「第17回ホスファチジルセリン(PS)研究会」を都内で開催した。(有)健康栄養評価センター(東京都文京区)の柿野賢一代表は、「機能性表示食品の現状と課題」をテーマに講演。届出の取り下げにならない商品作りと体制の整備が必要と説いた。約60人の関係者が参加した。
柿野氏は、機能性表示食品の届出状況や最近の商品開発・販売事例を紹介。「機能性表示食品に対するメーカーのニーズは高いが、せっかく発売した商品が(届出の)取り下げや終売とならないためには、届出に向けた体制づくりが重要」と述べた。
最終商品を用いた臨床試験と研究レビューで、機能性を評価する場合の留意点にも言及。最終商品を用いた臨床試験の信頼性を担保する上で、「CONSORT2010声明」に準拠する必要があるが、消費者庁が公表した実態調査報告書によると、必ずしもこれに準拠したものばかりではないと苦言を呈した。
また、研究レビューによる機能性の評価では、その機能を支持する査読付き論文が1本もない場合には、科学的根拠がないとみなされるが、届出者のなかには誤って解釈する事業者もいると指摘。柿野氏は、「客観的に評価するために、届出ガイドラインで示されているPRISMA声明チェックリストに基づいた検証を行うこと」が重要と強調した。
一方、「研究者のなかには消費者庁のホームページにPRISMAのチェックリストが掲載されていることを知らない人もいる」と懸念を示した。公開された届出情報でも、科学的根拠や透明性で誤った資料を基にしているケースもあるため、注意を呼びかけた。
柿野氏は「機能性表示食品制度には、消費者庁に届出が完了してから公表されるまでの壁と、消費者団体やアカデミアに疑義情報を出されないレベルに至るまでの壁という2つの壁がある」と説明。「最初の壁を超えたところがゴールではなく、事業成長や企業ブランド作りの観点からも、2つ目の壁を超えるために定期的に基のデータと新たな知見、学説を検証し続けることが重要」と結んだ。
(写真:9日に開催された研究会の様子)