ペット向けサプリメントの広告表示をめぐる初の措置命令（15日既報）。景品表示法違反（優良誤認）と認定されたのは、商品性能（有効性）にかかわる表示だけではない。一般消費者への訴求力があるとされるNo.1表示にもメスを入れられた。

　「皆様に選ばれて7冠達成！」。14日、ペット向けサプリ広告表示の優良誤認で消費者庁から措置命令を受けた㈱バウムクーヘン（福岡市中央区）が行っていた表示にはそうしたものもあった。

　「食べさせやすさ」、「愛犬家におすすめ」、「初めてでも安心」、「口コミ人気」、「長く続けられる」、「友人にすすめたい」、「品質満足度が高い」──の7項目について第三者の調査で「No.1」などと表示。他のペット向けアイケアサプリに対する優良性を訴求していた。

　だが、「客観的な調査方法で調査したものではなかった」。調査した消費者庁と公正取引委員会はそう断じる。

　消費者庁の発表によれば、同社が委託した調査事業者の調査は品質満足度など７項目について、同社が販売するペット向けアイケアサプリと他の事業者が販売する同類商品の「ウェブサイトの印象」を問うていた。（⇒つづきは会員専用ページへ）

　また、回答者の条件を設けず、同調査事業者に登録している「会員全員」を対象に行われたものだったという。

　品質満足度などがNo.1だと強調するには、一般的には同類商品の購入者を対象にした調査を行う必要がある。そもそも、ウェブサイトの印象で評価された品質満足度には意味がない。消費者庁は、7項目のNo.1表示には合理的な根拠がないと見なした。

　「日本一」や「ランキング1位」など、最上級であることを示すNo.1表示は、商品やサービスなどの内容比較や差別化に資する明確な数値指標であり、一般的には消費者にとって有益な情報となる。一方で、合理的な根拠に基づかず、事実と異なり、実際のものよりも優良と消費者に誤認される場合は、景表法上問題となる。

　2008年、No.1表示の景表法上の考え方を整理するために公取委が行った「No.1表示に関する実態調査」の報告書ではそのように整理している。また、NO.1表示を行う際の留意点として、直近の調査結果に基づくこと、対象となる商品の範囲、地理的範囲、調査期間・時点、調査の出典についても調査事実に即して明瞭に示すことを求めている。

「No.1の結論ありき」、リサーチ協会が厳重抗議

　この調査報告書がまとめられてから10年以上が経過した今、客観的な調査に基づかないNo.1表示に景表法のメスが入り、措置命令を受ける事業者が増えている。

　直近の2022年度は計3社。エステティックサロン運営のPMKメディカルラボ（東京都新宿区）が昨年6月、そして今年1月にはオンライン個別学習サービスを手がける㈱バンザン（同）が消費者庁から措置命令を受けた。地方自治体でも、埼玉県が今年3月、整骨院などを運営する㈱くまのみ（さいたま市大宮区）に措置命令。「埼玉県口コミNo1!!」などといった最上級表示は「統計的に客観性が確保された調査によるものではなかった」という。

　昨年1月、No.1表示への信頼性に対する関心が社会的に高まった。「非公正な『No.1』調査への抗議状」。市場調査の質や精度の向上を図る（一社）日本マーケティング・リサーチ協会がそう題した書面を公表。「No.1 の結論先にありき」の「非公正な調査」を請け負ったり、あっせんしたりする事業者を糾弾したからだ。

　同協会は書面で、調査対象者や質問票を恣意的に設定する非公正な調査の実施を「うかがわせるものが散見される」として「市場調査に対する社会的な信頼を損なう」と強く抗議。そうした公正ではない調査を行う事業者は、「No.1を取れる自信がないが、相談に乗ってもらえるのか」、「No.1表記を行いたいが、どの条件であればNo.1の獲得ができるのか相談したい」といったニーズを持つ顧客をターゲットにしているとする。

　それでも不適切なNo.1表示は減っていない。現在でも散見されている。広告表示の自主規制機関、（公社）日本広告審査機構（JARO）は先月、2022年度の広告審査状況をまとめたレポートの中でそう指摘した。JAROで探知できたものだけで92件。前年度の95件から大差なかったとしている。

【石川太郎】

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