紅麹サプリ死亡事案調査への疑問 遺族が問う 企業主導調査の透明性は!?
小林製薬の紅麹サプリメントを巡る一連の健康被害問題では、多数の健康被害や死亡事案が報告されてきた。一方で、個々の死亡事案について、どのような調査が行われ、何を根拠に因果関係が判断されているのかについては、外部から見えにくい状況が続いている。
公表前に死亡、調査の扱いは不明確
こうした中、遺族による申し立てが、企業による調査の実態にある疑問を投げ掛けている。
ある遺族によると、家族は小林製薬が製造販売していた紅麹サプリメントを摂取していたとみられ、体調悪化を経て2024年3月に死亡した。小林製薬が同年3月下旬に行った最初の記者会見より前に亡くなっていたが、その後の公表や説明の中で、当該事案がどのように扱われているのかは明らかではなかったという。
遺族はその後、同社と連絡を取り、調査への同意書を提出した。だが、最初に届いた調査報告書は、入院初期から「慢性的な疾患」があったかのような記載が含まれており、実際の診療経過やカルテの内容とは一致しないと感じたという。遺族は、初期症状から死亡に至るまでの医学的経過を正確に反映するよう求め、報告書の修正と再調査を要請した。
その後、複数回にわたるやり取りを経て第2回の報告書が示されたが、遺族側が求めた初期症状からの経過説明や医学的評価は十分に反映されていなかったとされる。遺族はさらに、病院への訪問やカルテの直接確認を行った上での再検討を強く求めた。
カルテ未確認のまま因果関係を判断か
こうしたやり取りの中で、遺族が特に問題視しているのが、調査の方法である。遺族によれば、小林製薬は当該事案について、病院を訪問したことはなく、カルテも直接閲覧していないと説明したという。調査は、主治医への電話やメールによるヒアリング、診断書や検査資料の提出依頼を通じて行われたとされている。
同社はこれまで、編集部の取材に対して以下のように回答している。
「死亡が関連する問い合わせについては、遺族からの同意を取得した上で、亡くなった方に治療等を行った医療機関に対し、詳細情報の確認・調査を行っている。具体的には、『臨床試験等を受託している専門機関』を通じ、具体的事情に応じて、医療機関に対し質問事項への回答や診断書・診療記録・検査資料等の提出を依頼し、情報・資料を収集しており、これらの情報収集は、必要があれば複数回実施している。これら情報・資料の収集結果を踏まえ、死亡と紅麹コレステヘルプ等との関連性については、『当該専門機関に所属する医療専門家』からの意見を聴取した上、会社として判断する。なお、調査及び評価の客観性・公正性を確保すべく、上記専門機関との契約上、業務が客観的・中立的立場から行われるべきことを明示的に合意している」
一方で、その調査過程において、実際に医療機関を訪問し、カルテ全体を直接確認する手続きは行われていなかった可能性が遺族の証言から浮上したのである。
遺族は、血液検査の一部数値だけでなく、症状の推移や治療経過を含めたカルテ全体を確認せずに、死亡との因果関係を評価することが妥当なのか、強い疑問を抱いている。特に、入院前後の症状の変化や、複数の診療科を経た経過が十分に検証されていないまま、結論が示されているのではないかという点を問題視している。
「調査終了」の判断基準が見えない
また、調査結果の扱いについても不透明さを感じているという。遺族は、調査が継続中であると認識していた時期にもかかわらず、企業の公表資料では「調査終了」として扱われていた可能性があると指摘する。調査の開始や終了を判断する基準について、明確な説明が得られていないことも、不信感を強める要因となっている。
編集部ではこれらのことについて小林製薬に質問書を送付したものの、「個別のお客様に関する回答は控える」として、詳細は明らかにされないままである。
遺族は、個別の責任追及を目的としているわけではないと強調する。ただ、人が亡くなっている事案において、どのような調査が行われ、その前提として何が確認されているのかが、遺族にも社会にも十分に共有されていない現状に疑問を呈している。
現在の仕組みでは、企業が主体となって因果関係の判断を行い、その結果が公表される構造となっている。今回の申し立ては、その調査の「中身」――とりわけ、カルテを直接確認しないまま判断が下されている可能性――に光を当てるものと言える。
紅麹サプリメント問題を巡っては、製造や品質管理の議論が進められている一方、被害が生じた後の検証のあり方や調査の透明性については、十分に議論されているとは言い難い。遺族の声は、こうした点を改めて問い直すきっかけとなるのではないか――。
【田代 宏】
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