健康食品GMP実践的対応ガイド(9) 【寄稿】最終回、信頼される組織であるために~GMP導入と継続的改善への道
㈱シーエムプラス シニアコンサルタント 田中良一
全9回にわたる本連載も、今回が最終回となります。これまで、健康食品GMPの背景から基本原則、具体的な管理手法までを解説してきました。最終回では、これまでの内容を総括し、GMPを導入するための具体的なロードマップと、GMPの根幹をなす最も重要な要素、「品質文化」についてお伝えします。
1.GMP導入へのロードマップ
これからGMPを導入、あるいは既存のシステムを刷新するにあたり、以下のステップで進めることが効果的です。
• ステップ1: 現状分析(ギャップ分析)
o まず、自社の現在の製造・品質管理体制が、GMP告示の要求事項と比べて、どこにどれだけの乖離(ギャップ)があるのかを正確に把握します。
• ステップ2: 体制構築
o GMPを推進するためのチームを結成し、総括責任者、製造管理責任者、品質管理責任者を正式に任命します。まずは、組織内での責任と権限を明確に定義することが重要です。
• ステップ3: 文書体系の構築
o 第5回で解説した、製品標準書、製造管理基準書、品質管理基準書、各種手順書(SOP)などの文書を作成・整備します。
• ステップ4: 設備・環境整備
o 必要に応じて、施設の改修や設備の適格性評価、計器の校正プログラムなどを実施します。
• ステップ5: 教育訓練
o GMP関連業務に携わる全ての従業員に対し、GMPの基本理念から具体的なSOPまで、計画的な教育訓練を実施します。
• ステップ6: 実施・評価・改善
o バリデーションの活動を含むGMPの本格運用を開始し、稼働後は、定期的な自己点検や変更管理・逸脱管理を通じてシステムの継続的な改善(PDCAサイクル)を回していきます。
2.品質文化(クオリティカルチャー)の上に成り立つGMP
これまで解説してきた組織体制、文書、バリデーション、各種管理システムは、いわばGMPの「ハード」と「ソフト」です。しかし、これらを本当に機能させるためには、その根底に流れる「品質文化(クオリティカルチャー)」という組織風土の醸成が必要不可欠です。
品質文化とは、「品質を最優先する」という価値観が、経営層から現場の一人ひとりにまで浸透し、日々の行動の基準となっている状態を指します。近年の医薬品業界で起きた数々の不正事案の根本原因も、技術的な問題以上に、この品質文化の欠如にあったと指摘されています。
3.信頼される組織であるために
では、どうすれば品質文化を醸成できるのでしょうか。それは一朝一夕に成るものではなく、日々の地道な活動の積み重ねです。例えば、以下のような活動が品質文化の醸成に繋がると考えます。
• 経営層の強いリーダーシップ:経営層が繰り返し「品質が最優先である」というメッセージを発信し、それを自らの行動(リソースの投入、品質問題への真摯な対応など)で示すことが全ての出発点です。
• 心理的安全性の確保:失敗やミスを報告しても罰せられない、むしろ改善の機会として歓迎される環境を作ること(Speak Up文化)。これにより、問題が隠蔽されることなく、早期に発見・対処されるようになります。
• 「なぜ」を伝える教育訓練:作業手順だけを教えるのではなく、その背景にある科学的根拠や消費者への影響を丁寧に伝え、従業員一人ひとりの当事者意識を育むことが重要です。
おわりに(総括)
健康食品のGMP義務化は、事業者にとって大きな負担を伴う挑戦かもしれません。しかし、それは同時に、自社の品質保証体制を客観的に見直し、より高いレベルへと引き上げるための絶好の機会です。
GMPへの取り組みは、単なる規制対応コストではありません。それは、消費者の信頼を勝ち取り、企業のブランド価値を高め、ひいては従業員の品質に対する意識と誇りを育むための、未来への投資と言えるでしょう。この連載が、皆様の企業における品質文化の醸成と、消費者から真に信頼される製品づくりへの一助となれば幸いです。
【編集部から】全9回にわたりご愛読いただき誠にありがとうございました。健康食品GMPを巡る本寄稿連載は、筆者の田中良一氏が所属するシーエムプラスが運営するGMPに関する情報発信サイト「GMP Platform」にも掲載されています。GMPに関心のある方は同サイトを是非ご覧ください。

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