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健康食品GMP実践的対応ガイド(8) 【寄稿】GMPシステムの維持・改善~変更管理、逸脱管理、自己点検

㈱シーエムプラス シニアコンサルタント 田中良一

 前回は、製造プロセスの妥当性を科学的に証明する「バリデーション」について解説しました。第8回では、一度構築したGMPシステムを形骸化させることなく、日々の変化に対応しながら継続的に改善していくための3つの重要な仕組み、「変更管理」「逸脱管理」「自己点検」に焦点を当てます。これらは、GMPシステムにPDCAサイクルを組み込み、動的な状態を維持するために重要なプロセスです。

1.計画的な改善:「変更管理」
 製造現場では、効率改善や品質向上を目的に、または設備の老朽化等により原材料、製造方法、設備などに変更を加えることがあります。しかし、安易な変更は予期せぬ品質問題を引き起こすリスクを伴います。
 変更管理とは、その変更により変化するリスクを管理し、計画的に変更を実施するためのプロセスです。

• 目的:製品の品質に影響を及ぼす可能性のある変更を行う際に、事前にその影響を科学的に評価し、必要な措置(バリデーションの再実施、届出事項の変更など)を講じた上で、管理された状態で変更を実施します。

• プロセス:

  1. 変更提案:変更の必要性、内容、理由を文書化します。
  2. 影響評価:品質、安全性、機能性などへの影響を多角的に評価し、リスクの大きさを分類します。
  3. 計画・承認:評価結果に基づき、必要な活動(バリデーション、文書改訂、教育訓練など)を計画し、品質部門の承認を得ます。
  4. 実施と効果確認:計画に沿って変更を実施し、その変更が意図した通りの効果をもたらし、悪影響がないことを確認します。

• ポイント:「小さな変更だから大丈夫」という思い込みは禁物です。小さな変更の積み重ねが、気づかぬうちに品質に大きな影響を及ぼすことがあります。

2.問題からの学び:「逸脱管理」
 逸脱とは、あらかじめ定められた製造手順や規格、基準などから外れることです。逸脱は必ず発生するという前提に立ち、それをいかに迅速に検知し、適切に処理し、必要に応じて再発防止に繋げられるかが問われます。

• 逸脱は「悪」ではなく「改善の機会」:逸脱を隠蔽したり、安易に個人のミス(ヒューマンエラー)として片付けたりする組織文化は、より大きな問題の温床となります。現に医薬品業界では、問題が膨れ上がり不正事案となっているケースも少なくありません。逸脱は、手順の不備、教育不足、設備の不具合といった、システム全体の弱点を教えてくれる貴重な情報源です。

• プロセス:

  1. 発見と記録:逸脱を発見した場合、直ちに詳細を報告・記録します。
  2. 影響評価:その逸脱が製品の品質に与える影響を評価します。
  3. 原因究明(RCA):必要に応じて分析などの手法を用いて、表面的な原因だけでなく根本原因を特定します。
  4. 是正措置・予防措置(CAPA):根本原因を取り除くための是正措置(再発防止策)と、必要に応じて当該逸脱に得た情報(知識)を活用し、他の事象が発生するのを未然に防ぐための予防措置を立案し、実施します。

• 報告しやすい文化:従業員が安心して逸脱を報告できる「スピークアップ文化」の醸成が、逸脱管理を有効に機能させる上で最も重要です。

3.自らを省みる機会:「自己点検」
 自己点検は、基本的に年に1回、自社のGMPシステムが告示の要求事項に適合し、かつ有効に機能しているかを、自ら客観的に評価する活動です。

 • 目的:法令遵守の確認、システムの形骸化防止、そして継続的な改善点の発見です。

 • 客観性の確保:自己点検は、点検対象の業務を直接担当していない者が行うことが原則です。これにより、客観的で公平な評価が可能となります。可能であれば、外部の専門家(コンサルタント)を活用することも有効な手段です。

 • プロセス:

  1. 計画:年間計画を立て、点検の範囲、時期、担当者を決めます。
  2. 実施:消費者庁が公開している自己点検表などを活用し、文書・記録レビュー、現場確認、インタビューを行います。
  3. 報告と改善:点検結果を最終的には総括責任者に報告し、発見された不備や改善点に対する改善措置を計画・実行します。

おわりに
 変更管理、逸脱管理、自己点検は、GMPシステムを常に最適な状態に保つための車の両輪です。これらの仕組みが有効に機能して初めて、企業は変化に対応し、成長し続けることができます。

 最終回となる次回は、本連載の総まとめとして、GMP導入の具体的なステップと、これらの技術的な側面を超えた最も重要な要素である「品質文化」について解説します。

【編集部から】本連載(全9回)は原則、週1回のペースで掲載します。また本連載は、シーエムプラスが運営する「GMP Platform」にも掲載されます。

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健康食品GMP実践的対応ガイド(1)なぜ今、適正製造規範への適切な対応が求められるのか
同(2)健康食品GMPの全体像~医薬品GMPとの類似性と責任の所在
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同(4)GMP体制の構築①~経営層の責務と主要な責任者の役割
同(5)GMP体制の構築②~文書体系(製品標準書・基準書・手順書)の作り方
同(6)GMPの実践①~原材料管理から製造管理・品質管理・出荷判定まで
同(7)GMPの実践② ~バリデーションの計画と実施

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