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東大と化粧品協会の対立構図鮮明に 契約消滅の是非、接待・恐喝の真偽は?

 10月28日、東京地裁で(一社)日本化粧品協会と(一社)日本中小企業団体連盟が、東京大学および佐藤伸一教授、吉崎歩元准教授を相手取った訴訟の準備手続が行われた。争点は、「臨床カンナビノイド学社会連携講座」契約の消滅の有無、研究関連資金の扱い、そして「接待の強要」や「恐喝」という被告らの一連の行為の真偽に及んだ。この日の手続きでは、東大側が契約終了の正当性を主張しているのに対し、佐藤・吉崎両被告は原告側の信用性を強く疑問視。ところが原告側は接待・金銭要求を軸に反論するなど、両者の主張は大きく対立している。裁判記録から、両社の対立構図が徐々に明らかになってきた。

東大、契約関係の消滅を明確に主張

 東京大学はこの日、原告側訴状訂正後の主張に対する認否を示した。東大側は、原告・日本化粧品協会が主張する「相殺による弁済の結果としての契約存続」、「主張が認められないとしても契約は継続している」とする契約解除の無効について全面的に争う姿勢を明確にした上で、「大学は契約を解除したのではなく、解約した」として、契約関係の消滅を法的に整理した。

 また、「被告大学との交渉の経緯について」に関して、日本化粧品協会の代表である引地功一氏によるコンプライアンス通報窓口への通報については、通報の通信内容を確認したところ「日本化粧品協会の代表としてではなく、“(大)東京大学院医学系研究科特任・届出研究員”の立場で通報を行っていた。しかも「通報内容は不十分で証拠も添付されていなかった」と主張し、大学の対応義務を否定した。さらに、懲戒手続や担当教員の交代を求める根拠はなく、通報窓口にはその権限がないと明言した。

吉崎被告「詐欺的スキーム」と原告を非難

 被告吉崎は、62ページにも及ぶ準備書面を提出し、原告側の行為を詐欺的スキームであったと断定した。主張によれば、日本化粧品協会は東大の名義と信用を利用し、研究遂行能力がないにもかかわらず「臨床カンナビノイド学社会連携講座」の契約を締結させた上、第三者企業LEAPホールディングス㈱と虚偽の受託研究契約を結び、1億円を超える資金をLEAP社から受領したとしている。吉崎氏は、原告代表がこの資金流用を隠すため、被告らへの恐喝や接待強要をねつ造し、報道機関を利用して虚偽情報を拡散したと主張した。

佐藤被告、接待事実の一部認めつつ「強要」否定

 一方、佐藤被告の準備書面では、原告が主張する接待の一部事実は認めたものの、「会食は協会側の提案によるもので、(自分の)強要ではない」と反論した。風俗店への同行も認めたが、「協会代表に強く誘われた結果であり、職務上の利害供与ではない」と述べた。また、研究費の支払い請求や研究室の貸与については、大学側の立場と同様に否認した。

 この日の手続では、各被告が共通して原告の信用性を問題視し、引地氏の行為を中心とした事案であると位置付けたことが特徴的だ。東大側は制度上の不備を否定し、契約終了の正当性を主張。吉崎、佐藤両被告は「原告側の資金目的による不正工作」を強調し、原告側の責任転嫁を図る意図を明確にした。

 今後の審理では、契約の性質(共同研究か受託研究か)、LEAP社資金の扱い、島津製作所との機器導入契約をめぐる事実関係、そして接待や恐喝の実在性などが主要な争点として整理される見通しだ。

準備書面の具体的な主張の中身は?

 ここで、今回の準備書面について被告らの主張の中身を具体的に確認してみよう。
 接待の「事実」についての認否において、日本化粧品協会は、「飲食接待・性的サービスを伴う店での接待・金銭要求があった」と主張しているが、被告側3者(東大・佐藤・吉崎)は、それぞれ以下のように反論している。
 東大は接待事実については「不知」として、個々の行動への関与を否定している。不知であるから特に認否はしないものの、原告側が「贈収賄に問われる危険性を犯してまで」と主張しているのは、日本化粧品協会もしくは同代表者において贈賄罪(刑法第198条)には当たらないという趣旨か、明らかにせよと述べている。

 一方の佐藤被告は、原告主張の多くについて事実の一部は認めているが、接待強要の事実は全否認している。高級レストランでは「お互いに人となりを知るために企画し、店の予約も行ったものであり、当然ながら(自分らが)会食の費用を支払うつもりだった」と述べた上で、「協会代表がトイレに立った時に支払われていた」と反論している。
 性的サービスを伴う店への同行についても、自分が行きたいと求めた事実はなく、「引地代表に積極的に誘われた」と主張。「ソープに行ったのは最後の方だけである」と弁明している。

 吉崎被告の主張は佐藤被告より強く、原告の接待主張を「すべて虚偽」と断じている。接待は引地代表が「積極的に実施し、自らの意志で多額の金員を費消したもの。その狙いは、自己の資金力を誇示して社会連携講座の継続性を裏付けようとするとともに、被告佐藤および吉崎の弱みを握り、自らを優越的な立場に置き、社会連携講座における人事に関しても影響力を持つようになることにあり、さらには、自らの悪事が発覚しそうになったり、自ら招いた責任を追及されそうになった時には、その責任を被告佐藤および吉崎に転嫁して、自らの悪事から目をそらさせ、自らの責任を免れんと企図していたところにあった」と強い口調で非難している。
 性的サービスについても、店舗に同行した事実は認めるが、「引地代表に誘われた結果であり、強要や求償の意図はない」と明言している。

資金流用疑惑と“ねつ造”をめぐる主張の応酬

 金銭の要求や恐喝されたとの原告側の主張については、「恐喝の事実そのものが虚偽」とし、原告側が「資金流用(LEAP社からの1億円超)」の発覚を恐れ、接待・恐喝をねつ造して大学と世論に責任転嫁したと主張している。

 被告・吉崎氏の主張によれば、「昨年9月17日の島津製作所との三者面談直前、引地氏は自分に対し、風俗店での接待や1,300万円の要求を受けたとする虚偽情報をメディアへ告発したと連絡し、面談の中止を図った。また、引地氏は協会へ拠出した1億円超の返済をLEPA社から求められ、返金回避のため、虚偽の研究進捗報告書作成を吉崎氏へ要求したが、自分はこれを拒否した。その結果として、引地氏は接待や恐喝行為をねつ造し、佐藤氏および自分を社会連携講座から失脚させる一方、自身の責任を両名に転嫁しようとした。さらに週刊報道サイト運営者と結託し、醜聞報道を行ったということが真相。引地氏は被害者を装い、未払の研究費について不当な相殺を主張し、支払い義務を免れようと企図した」と指摘。被告らとの信頼関係も破綻してしまった原告らは、東大から契約を解除された後も、自らの私的な営利目的のために、東大や社会連携講座のブランドを不正に利用し続けている」と強く抗議している。

 次回期日は12月26日と定められ、吉崎被告は11月10日までに書証(丁号証)を提出、原告側は各被告からの求釈明に対する回答を記載した準備書面を同28日までに、各被告の準備書面に対する認否反論を記載した準備書面を12月19日までにそれぞれ提出することが確認されている。

【田代 宏】

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