東京大学と化粧品協会の訴訟開始 協会が研究講座閉鎖を巡り契約無効と損害賠償を主張
(一社)日本化粧品協会(東京都文京区、引地功一代表理事)と(一社)日本中小企業団体連盟(東京都中央区、中村賢吾理事長)は、東京大学による臨床カンナビノイド学講座の突然の閉鎖を不当として提訴した。損害賠償額は4,399万円に及び、接待費用や研究不履行も争点に。8月25日に行われた東京地方裁判所での初弁論に続き、次回公判は10月28日に予定されている。刑事告訴も進行中で、今後の展開に注目が集まる。
研究講座の突然の閉鎖を巡る提訴
(一社)日本化粧品協会は今月9日、公式サイト内に掲載している「臨床カンナビノイド学講座が廃止された旨の広告について」を更新し、東京大学との間で進んでいる裁判に関する情報を掲載した。先月25日に東京地裁で開かれた「損害賠償等請求事件」の第1回公判を受けてのものと思われる。
これは日本化粧品協会と日本中小企業団体連盟が今年5月16日、CBD研究のための社会連携講座を突然閉鎖した東京大学と、同大大学院医学系研究科皮膚科学の佐藤伸一教授、同医学部臨床カンナビノイド学講座特任准教授・講座長吉崎歩准教授(当時)の2人を東京地方裁判所に提訴した裁判。東大側の契約解除を原告側は無効であると主張し、契約関係の確認を求めるとともに、損害賠償を請求している。請求額は4,399万6,851円。第1回口頭弁論は8月25日、東京地裁民事第37部法廷で開かれた。
原告は、大学側が研究を遂行せず交渉にも応じなかったことから、契約の解除は信義則に反し無効であると主張している。また、契約履行過程における相殺の意思表示によって大学の請求権は事実上消滅しており、契約は現在も継続していると訴えている。
接待費用や研究不履行も争点に
さらに、訴状では大学関係者による研究不履行や接待の実態が指摘され、銀座クラブや飲食店、キャバクラなどでの接待費用として2,616万2,510円が計上されているとされる。これに肌診断機の購入費1,390万260円を加え、原告側は少なくとも4,006万円超の損害賠償請求権を有すると主張している。
接待は2023年2月14日~24年9月1日にわたり合計100回を超える飲食などが行われており、接待目録には「銀座クラブ」、「フレンチ」、「ステーキハウス」、「寿司店」、「和食」、「キャバクラ」、「カラオケ」、「居酒屋」、「すっぽんフカヒレ」などの記載がある。またそのうち「ソープ」には7回足を運んでいる。
大学側の反論と今後の公判日程
これに対し東京大学側は、原告の請求をいずれも棄却するよう求め、訴訟費用も原告側が負担すべきと反論した。第1回口頭弁論では答弁書の提出をもって陳述を擬制し、詳細な反論は追って準備書面で行うとした。
被告代理人は、原告の請求趣旨や訴状記載の請求原因に不明確な点があるとして、裁判所に釈明を申し立てている。特に、契約関係確認請求と解除無効確認請求の関係や、相殺額の具体的算定について明確化を求めた。次回公判は10月28日にWEBで開催される予定。
日本化粧品協会はホームページ上で、「強要および恐喝未遂の事案について、警視庁元富士警察署に刑事告訴状を提出し、恐喝未遂の事実について告訴が受理された」としている。現在、任意の取り調べが進められているという。
今後の見通しについて同協会側は、「現在被告らの認否・反論待ちの状況。現時点でどこが争点になるかも分からないので、見通しについて答えるのは難しい」、「刑事に関しては、捜査に影響するので詳しいことは言えないものの、警視庁本部での任意の取調べも長期にわたって続いている」と述べている。
【田代 宏】
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