シャンピニオンエキスのリコムの今後 【トップインタビュー】今井新社長が語る就任経緯と事業戦略
臭いケア素材のシャンピニオンエキス、体重コントロール素材のキトグルカン(キノコキトサン)を開発した1982年設立の機能性食品素材企業、㈱リコム(東京都豊島区)。今年、役員変更があり、創業者である浜屋忠生氏が代表取締役社長を退任して相談役に就き、新社長に今井佳代子氏(=写真)が就任した。
今井氏は、1969年設立の香料会社、日東香料㈱(東京都目黒区)の代表取締役社長を現在務めており、2社の社長を兼務する格好になる。
日東香料は、祖業である香料事業以外に、サプリメントや健康食品に使用する原材料等の問屋事業を展開。また、祖父が創業した同社の三代目社長を務める今井氏は、前職で健康食品にも使用される糖アルコールを中心に食品原料を売り歩いた経験を持つ。「実は意外と(健康食品業界の)ベテランなんです」と話す今井氏に、リコム社長就任の経緯や今後の事業戦略などを聞いた。
――4月1日付でリコム社長に就任しました。経緯は。
今井 日東香料とリコムは長年の取引関係がありました。そのなかで2年前、事業を引き継がないかというお話を浜屋前社長からいただいたのが経緯です。浜屋前社長は今年76歳。もともと75歳を目途に引退することを考えていたようです。
――事業承継が行われたということですね。
今井 そうなります。もちろん私個人で出せるような金額ではありませんから、日東香料として継承しました。そのため、リコムは現在、日東香料のグループ会社という位置づけになっています。
――体制変更でリコムに変化は。
今井 基本的には変わっていません。ただ、新たに取り入れたいことや改善が必要な点もありますから、そういう意味では今後変えていくつもりです。ですが、「リコム」という社名と、「科学的エビデンスに基づいた食品素材で社会に貢献する」という会社のアイデンティティは今後も変わりません。お取引先様や従業員を今まで通り大切にしてほしいというのが浜屋前社長の強い希望でした。それに、「シャンピニオンエキス=リコム」という、浜屋前社長とリコムがこれまでに培ってきたある種のブランドもあります。今後も大切に育てていきたいと思っています。
――2代目社長としてリコムをどう成長させますか。
今井 それについては浜屋前社長ともいろいろとお話させてもらいました。
これまでのリコムは、シャンピニオンエキスとキトグルカンという2本柱でやってきましたが、私はもっといろいろな可能性があると考えています。その1つは、それぞれの原料として使用しているマッシュルーム、あるいはエノキ茸に含まれるその他の有効成分を活用していくこと。新製品を開発できる可能性もあると思っています。もう1つは、用途の拡大。浜屋前社長も同じ考えでしたが、リコムの製品はペット向けでも需要をもっと広げられるはずです。
――需要が伸びているペット向けサプリに用途を広げる。
今井 そうです。ペット向けでの販売実績はすでにあり、特にシャンピニオンエキスは需要が多いです。ただ、その需要に応えるためのエビデンス(機能性に関する科学的な根拠)という意味では、人を対象に得られているものに全く及びません。そのため、まずはシャンピニオンエキスのペットに対する消臭機能のエビデンスを得る必要があると考えていて、すでに着手しています。
また、ペット向けは、日東香料とリコムのシナジーを期待できる分野です。ペット向けの商品開発では、犬や猫が好む風味をいかに作るかが重要になります。それがすごく難しいと言われていますが、日東香料が持つ風味に関する知見を活かすことで、十分対応できると思っています。それに今の日東香料は問屋機能もかなり充実していますから、風味づくりに必要な材料をいくらでも取り寄せることができます。
――シャンピニオンエキス、キトグルカンともに機能性表示食品対応素材です。改正された機能性表示食品制度をどう見ていますか。
今井 機能性表示食品は画期的な制度です。品質管理や有効性が一定担保されている商品を選び易くなったという点で消費者のセルフメディケーションを推進しうる制度です。一方で、一消費者の立場で見たとき、本当に機能性表示の有無が商品選択のキーになっているのかどうか疑問に思う時もあります。受理されたことで満足するのではなく、本当に消費者に喜ばれる商品作りや販売戦略の立案が欠かせないと感じていますし、今後もこれまでどおり届出のサポートをしっかり行っていきます。PRISMA2020に準拠したシステマティックレビューも終えていて、すでに新しい届出様式にまとめてあります。
――社長就任から間もなく半年。現在の心境は。
今井 ようやく慣れてきたというところです。少しペースがつかめてきました。
社員のみんなが本当に優秀で助かっています。この規模の会社でこれだけの人材が揃っている会社はまずないと思います。研究開発や分析などに関わる社員はもちろんですが、事務方もすごく優秀です。バイリンガル(日本語と英語)の社員もいて、海外から電話がかかってきても何も困りません。実は、浜屋前社長から今回のお話をいただいた時も、製品の魅力はもちろんありましたが、一番の魅力は人材でした。
――目標とする売上規模は。
今井 グループとして今の10倍くらいの規模は達成できると考えていますが、正直、私は規模にはそれほどこだわっていません。
規模よりも質にこだわりたい。そのためには、AIを業務に上手く取り入れ、仕事の質を上げていくことも重要だと思っています。そのようにして仕事の質を上げていき、社員一人一人がきちんとした報酬をもらえて、働きがいのある会社にしたい。人生のかなりの時間を会社で過ごすわけですから、そこが地獄だったら人生辛いじゃないですか(笑)。
私自身、親から日東香料の事業を引き継ぎ、浜屋前社長からリコムの事業を引き継ぎ、今の仕事をさせてもらっています。引き継いだ仕事を通じて社会に少しでも貢献できれば思っていますし、社員のみんなにも、そういったものを1つでも持ってもらえたらいいなと思っています。
――ありがとうございました。
【聞き手・文:石川太郎】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都豊島区南池袋2-26-5 アイ・アンド・イー池袋ビル
TEL:03-3988-3015
URL:https://j-ricom.com/
事業内容:機能性食品素材の研究開発・販売
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