今年1月就任の新社長が打つ次の一手 【九州のヘルスケア産業2025】エバーライフ、徳永義尚社長に聞く
2000年代、関節の健康を訴求する健康食品『皇潤』の単品通販で急成長を果たしたエバーライフ㈱(福岡市中央区)。現在、韓国・LGグループの一員として、ヘルスケア商材の通信販売から卸売販売までを手がけている。直近のグループ売上高は182億円(2024年12月期)。さらなる成長を図るために今後どうしていくのか。今年1月1日、取締役営業本部長から取締役社長に昇格した徳永義尚氏(=写真)に聞いた。
商品力に加えてホスピタリティを強みに
──まずは24年12月期の振り返りを。
徳永 前期比で微増収、そして微減益。増収要因は、コスメですね。LG生活健康が韓国で製造したファンデーションなどを弊社で輸入し、(テレビショッピング大手の)ショップチャネル様を通じて販売しています。これが伸びました。数年前にスモールスタートさせてもらったのですが、昨年1年間で言うと、コスメ部門の中での販売金額のシェアが拡大しました。
そのように継続して売れる商材をショップチャンネル様にどう提供していけるか。コスメの今後の展開を考えたとき、そこが非常に重要になってくると思っています。今、考えているのは、やはり基礎化粧品。我々はグループ内で研究・開発ができるし、製造もできる。そういう強みを生かしながら、基礎化粧品の販売を拡大したいと考えています。
──健康食品の動きは?
徳永 少し落ちましたね。最大の要因は、やはり紅麹(小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題)です。定期購入のお客様が解約していくというインパクトが9月ごろまで続きました。
ただ、9月以降は少しずつ回復していき、わずかではあるのですが、前年同月を上回るところまで持ち直しました。それが年内いっぱいまで続いた感じですね。ところが、年が明けると12月まで動きの良かった『皇潤W』(機能性表示食品)と『まるっと健康これ1杯青汁』(同)の動きが少し鈍化した。理由は、テレビCMのクリエイティブです。考査受理が厳しくなった。そのため、苦労しましたが、クリエイティブを新たに作り直しました。それもあって4月からまた回復し好調に推移しています。
──きょうは6月17日(取材日)。間もなく上半期が終わります。
徳永 増収で利益はほぼ横ばい。増収の一方で利益が横ばいというのは、驚くほどのコスト増が原価に響いているのです。健康食品についていえば、とくに原料、コスメについては包材のコストがとにかく高まっている。我々もそうなのですが、昔に比べて利益率が下がっているという(通販)企業は少なくないはずです。
今、コストを吸収するための企業努力は避けられません。ですから、いかに良いものを適正なコストで製造しつつ、市場にマッチした価格で販売できるか、また、原価にせよ売価にせよどれくらいが適正なのかといったところを今、測っているころです。その上で良いものを常に届けるという私たちの思いを、お客様にどう受け入れていただくか。そこが今、大きなテーマになっています。
──社長就任から約半年が経ちました。エバーライフの事業を取り巻く社会環境をどう捉えていますか。
徳永 今はお客様が良いものを選ぶ時代。まあ、昔からそうなのかも知れませんが、食品にせよ何にせよ、消費財全般について、お客様にとって価値のある良いものが選ばれる。そのような時代になってきたように感じます。というのも、私たちのお客様をみると、いったん離れたお客様が戻ってきてくださるケースが増えているんです。我々の商品の良さを過去にご実感されたお客様が、エバーライフの商品はやっぱり良かったなと、ということでまた戻ってきてくださる。俗に言う「ウィンバック(Winback)」(休眠顧客が再び顧客になること)が今年、とりわけ今月(6月)は増えています。
──その理由をどう見ていますか?
徳永 商品力などいくつかの要因があると思いますが、1つは、我々は自社でコールセンターを運営しているのが大きいと思っています。オペレーターではなく「カスタマーフレンド」と私たちは呼んでいるのですが、彼ら彼女らの、お客様との対話の仕方であったり、ホスピタリティであったりが、今の時代に合致しているのではないか。コールセンターを自社で運営しているから、いま求められるお客様との対話の在り方というものを、じっくりと教育することができている。だから、時代に合わせることができる。紅麹の時もそうでした。当社の商品には使用していませんと伝えるだけでなく、お客様が抱える健康食品に対する不安であったり疑念であったりを解消してあげられるよう、丁寧にご説明していこうと。
そういった取り組みは、コールセンターをアウトソーシングしていると難しいですよね。しかしそれを自社で持つ我々は、そうした教育にいくらでも時間をかけられる。今はこのように対応すべきだよね、という活動を、その時々に合わせながら続けているからこそお客様が戻ってきてくださるのではないか。そのように、商品力だけでなく、我々のお客様に対するホスピタリティというものを理解してもらえる時代にまたなってきたのではないか。これは私自身の肌感覚に過ぎませんが、そんなふうに考えています。
──競争の激しい通販市場で勝ち残るための強みに自社コールセンターがなると。
徳永 そう考えています。加えて、テレビや新聞などのいわゆる「オールドメディア」を媒体にした通販だけではもう難しい。ですから、デジタルの活用が必須になる。逆にいえば、それがないと、今までと同様の集客ができない。今、オールドメディアだけでは、新しいお客様を獲得できない状況です。そんな中で我々がやろうしているのは、ひと言で言えば、オンラインとオフラインの融合なのですが、それに加えて、我々の強みであるカスタマーフレンドがお客様とコミュケーションしていくアプローチ。DX(デジタルトランスフォーメーション)に人を掛け合わせていこうと考えています。
それに、国内のLGグループで創出していくシナジーも強みにしたい。エバーライフ、銀座ステファニー化粧品、そしてエフエムジー&ミッション(旧エイボン・プロダクツ)のグループ3社の売上規模を合わせると、化粧品や健康食品の通販企業として国内上位に入ります。商品開発から物流まで、あらゆる分野でシナジーを出しながら(市場で)戦い、効率良く利益を出していきたいですね。
関節ケア健康食品の会社であると自負
──グループが合わさると、主力商材は化粧品になりそうです。ですが、エバーライフといえば健康食品、というイメージが強いはずです。健康食品は今後どうしていきますか?
徳永 機能性にばかりこだわる必要はないと思っています。もっと伝統的な日本古来の健康食品というものを増やしていきたい。長くご愛用いただける健康食品とはそういうものではないかと。しかしそうは言っても、それだけでも当然ダメで、機能性との棲み分けが、我々が勝ち残っていくための1つの方向性になろうかと考えています。
一方で、我々はひざや腰などの関節に関する健康食品の会社である、という自負もある。『皇潤』シリーズの最盛期の売り上げは250億円。今はそれを大きく下回っていますが、諦めたわけではありません。だから『皇潤W』を新発売したのです。価格帯も含めて今のお客様のニーズに合わせた商品です。「以前使っていたのだけど、また使ってみるね」と言ってくださるお客様がかなりいらっしゃる。これは本当に有難いことだと思っています。
──『皇潤』、あるいは「エバーライフ」という社名は、すでにブランドになっていると思います。棄損してはならないその中身は何だと思いますか?
徳永 本気でお客様の健康を考えること、ですね。エバーライフとは、お客様に良いものを長くご愛用いただき、そして健康になっていただけるようにする。それを本気でやろうとしている会社だと私は思っています。
──ありがとうございました。
【聞き手・文:石川太郎】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:福岡市中央区天神2-5-55 アーバンネット天神ビル(本社)
URL: http://www.everlife.jp
事業内容:健康食品・医薬部外品の卸売・通信販売事業