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NMDB問題とは何だったのか?(4) NMDB研究会からHQ認証研究会へ、SR支援も

 ハイクオリティ認証(HQ認証)制度の普及には筆者自身も関わった。むしろど真ん中にいたと言った方が当たっているかもしれない。NMDB勉強会なるものを組織し、福岡と東京で交互に隔月開催したものである。
 2011年8月の発会式では、コーディネーターの1人がこうあいさつした。11年と言えば、その年の3月には東日本大震災が発生した直後である。震災に伴う原発事故と官業癒着の構図を取り上げて、「消費者重視よりも業界重視という傾向が浮き彫りにされてきて、それがナアナアでは済まされなくなってきた。我々ヘルスケア業界でも、消費者を守るという御旗が突き付けられていると思われる。そのような御旗を突き付けられた時に、業界に適したシステムが今、果たしてあるのか」勇ましい言葉とともに、RCT(無作為化比較試験)の世界的なガイドラインを示すコンソルト声明に基づくNMDBに連動した「ハイクオリティ認証」の優位性を強調した。

 「健康食品とサプリメントがどうして販売されているのか、それは消費者のニーズがあるということでしょう」田中平三理事長は当時、そういう言葉で講演を始めた。
 さらに、「健康食品とは何かと言うと、科学的にも法律的にも定義されていない。諸外国では薬を扱う薬事法、食品を見ていく食品衛生法、そしてその間の健康食品を扱う、たとえばアメリカなどではダイエタリーサプリメント健康教育法という法律がある。日本にはそれがないのが少し問題である」と我が国の歪んだ制度のあり方を指摘。
 健康食品とは通常の食品よりも健康に良いとして販売されている食品だが、健康の維持増進に役立つかどうかの科学的根拠は必ずしも明らかではない。にもかかわらず、これらの商品を証拠がないにも関わらず健康に良いとして販売するのは社会的責任の問題。企業倫理にも問題がある。「そういうところに私は貢献していきたいとの趣旨で研究を行なっている」と述べている。
 この時と今とを比べてみても、この業界を取り巻く環境は大きく変わったとは言い難い気がする。

 さて、こうして始まった研究会も2014年まで丸4年に及んだ。14年と言えば、まさに機能性表示食品(FFC)制度が施行される前年のことである。
 臨床試験がコンソルト声明に準拠していると認められたらNMDBに掲載を依頼し、英語に翻訳して掲載する。さらにそれを邦訳して同文書院発行の書籍『健康食品・サプリメント[成分]のすべて』に掲載する。商品名も載る。当時の業界ではある意味、画期的な出来事だった。
 その後もハイクオリティ認証(HQ)研究会と名を変え、FFC制度の施行後も、同制度の要件の1つであるシステマティック・レビュー(SR)に関する受託支援も展開した。「研究所医師、化学者がクロスレビューを行い、学術的にしっかりとしたSRを実施しているため疑義が出にくい→もし、出ても専門家がサポート」などと他社との差別化を図った。農学系と医学系の担当者がそれぞれSRを実施し、最終的にコンフリクト(対立)があった場合は理事レベルの審査員がジャッジする。審査員には医師が多いため、病者論文かそうでないかの判断も可能。万一、疑義が出たときの回答のサポートも行う。
 「疑義や撤回の出にくい」ハイレベルなSRの実施を強調したものの、すでにこの段階で、「ハイクオリティ認証製品以外でも、機能性審査を受ける」という矛盾に自ら突き当たり、直接的に機能性が表示できるFFCに対抗するだけの優位性を失いかけていた。

 届出支援がビジネスになると嗅ぎつけたCRO機関などが相次いで市場参入したことで、SR市場そのものが玉石混交となり、企業倫理やモラルを重視するjahficの堅苦しさ、分かりにくい認証手続きなどが次第に疎んじられるようになっていく。そしてとうとう、パッケージにあふれる表示の中で、多くのスペースを必要とするHQ認証マークも邪魔者扱いされ始めた。手元のナチュラルメディシン・データベース第6版(2019年刊)を確認したところ、掲載社は10社29製品に減っている。そこには、NMDB研究会開催当時の懐かしい企業名が散見されるが、果たして今は?

 その間、2013年にはTRCがもう1つの有力なデータベースである「ナチュラル・スタンダード」を統合するという出来事も起きる。ナチュラルメディシン・データベースというこれまでの名称を「ナチュラルメディシン・コンプリヘンシブ・データベース(NMCD)」に一時変更したり、HQ認証の2年に1度の更新作業がストップしたり、このことが原因となり何らかの異変が生じていたのは確かである。
 この頃からではなかったろうか。jahficは国立栄研のデータベースとの違いにも強く言及するようになった。「ナチュラルメディシン・データベースは原著論文を評価して掲載しているが、“健康食品の安全性・有効性情報”は原著論文は評価していない。そこが最も大きな違い」などと主張した。それまでは比較的寛容な態度を示していたのが、徐々に国立栄研に対して対抗心を表面化させていくようだった。

(つづく)
【田代 宏】

関連記事:NMDB問題とは何だったのか?(1)
    :NMDB問題とは何だったのか?(2)
    :NMDB問題とは何だったのか?(3)
    :NMDB問題とは何だったのか?(4)

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