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サンクト、機能性表示食品に本腰なぜ 出口に見据えたOEMと海外展開サポート

 機能性表示食品の届出サポートを昨秋から本格化させた企業がある。アミノ酸や植物抽出物の輸入販売のほか、レアメタルのリサイクル事業などを手がける商社の㈱サンクト(宍戸哲夫社長、今川信雄社長)。機能性表示食品制度の施行から今年で丸10年。今になって届出支援を始めたのは何故か。どこに商機を見出したのか。

いきなり掲げた2ケタ目標も「第1弾」

 12機能性関与成分19ヘルスクレーム──サンクトが研究レビュー(SR)とともに最終製品販売会社などへ提供していこうとしている届出サポート成分と機能性表示の数だ。いきなり2ケタを目標に掲げた。

 現在までに、6成分9ヘルスクレームについて届出実績を作った(1月末時点)。機能性関与成分を見ると、エラグ酸をはじめ、リコピン、スルフォラファングルコシノレート、大豆イソフラボンといった植物由来成分のほか、アミノ酸関連ではBCAAとGABA。ちなみに、エラグ酸に関しては、新規に近い。アフリカマンゴノキでもザクロでもなく、「ヌルデ」というウルシ科植物の抽出物で届出支援を進める。

 現在、実績づくりを進めている成分(原材料)も確認しておく。植物由来では、イチョウ葉由来フラボノイド配糖体および同由来テルペンラクトン(イチョウ葉抽出物)、6-ジンゲロールおよび6-ショウガオール(生姜抽出物)、クロロゲン酸(グリーンコーヒー豆抽出物)、ガレート型カテキン(茶抽出物)。一方、植物由来以外だと、N-アセチルグルコサミンとクレアチンモノハイドレートといったアミノ酸に関連する2成分で届出公開に向けた対応を進めている。

 いきなり2ケタの目標を掲げた、と書いたが「第1弾」に過ぎない。12機能性関与成分19ヘルスクレームの全てで届出支援を可能とした後も、さらに数を引き上げる。

 同社がそうした方針を固めたのは、昨年、小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題が起き、機能性表示食品制度の規制強化に向けた検討を政府が進行させる中だった。

 号令をかけたのは、2人存在する代表取締役のうち、アミノ酸や植物抽出物の輸出入などのヘルスケア関連事業を取り仕切る宍戸氏。取材に、理由について、「品質保証体制を完備した原料商社の強みを生かさぬ手はない」と語る。

背景に医薬品原料事業、整えた品質保証体制

 品質保証は、同社が今、ヘルスケア関連事業の中でもっとも力を注いでいる要素だ。

 同事業で主力のアミノ酸の業容を拡大させるため、同社はその用途を広げていった。今は、医薬品原料(原薬、中間体)としてのアミノ酸も取り扱っている。その前段として、薬学などの専門知識を持つ人材を新たに採用するなどしながら品質保証体制を段階的に強化。医薬に進出するために必要だった。医薬品原料ビジネスが軌道に乗った現在、同社の品質保証部門は10人超の陣容になっている。

 この品質保証部門を、顧客からの要望も多い機能性表示食品向けの原料輸入販売にも活用する。もともと海外から調達した価格競争力の高い原料を取り扱っている中で、機能性表示を行えるという価値と、最終的な品質保証は日本国内で行われているという価値を付加することで、アミノ酸にせよ、植物抽出物にせよ、業容をさらに拡大できる──ビジネスマンの宍戸氏はそう考えた。「安いだけで、誰が作ったのかも分からないような原料が、日本に入ってくることを防ぐこともできる。私は半分中国人だが、国籍は日本だし、日本が大好きだ」。

 品質保証の体制が整っている──同社が今になって機能性表示食品の届出サポートを始めた理由の1つはそれだ。そこに、独自の強みを見出した。そうである以上、機能性表示食品の原料市場で存在感を出せるかどうかは、営業をバックアップする役割も担う品質保証部門の取り組みにかかっている。「だから10人では全然足りない。製品数もどんどん増えている。品質保証はもっと人を増やす」(同)。

原料商社なりのOEM、模索した理想形

 サンクトが最終的な品質管理と品質保証を国内で行いながら届出サポートする機能性関与成分(原材料)は、主として中国から調達するものとなる。サポートの主軸となるアミノ酸関連原料、植物抽出物ともに、製造・加工するのは中国に生産拠点を置く現地パートナーメーカーだ。

 社名を挙げると、アミノ酸関連は主に「新生源」(Shine Star)など。植物抽出物は、主に「青雲山薬業」と同社グループの「Herb Green Health」。顧客ニーズに対応するなどの目的で、今後パートナー企業を広げる可能性も大いにあるが、「我々は製造元を隠さない。メーカーだと言いながら工場を持っていない会社もあるが、そんなところとは、我々の品質保証部門が付き合わない。だから工場査察は大歓迎」と宍戸氏。興味と関心がある向きは、製造現場を実際に査察してみたらどうだろうか。

 機能性表示食品向けの植物抽出物の主要な製造元となるHerb社は、主に米国や欧州へ、サプリメント向けの植物抽出物を製造販売しているメーカーだ。サンクトは、同社と日本総代理店契約を締結。同社が製造するものを日本に受け入れ、国内で最終的な品質確認、品質保証を行った後、出荷する。

 種々の分析検査については、現状、自前のラボは持たないものの、関連会社が、海外の分析機関を活用した分析受託サービスを手がけている。「自前の分析ラボを国内に持ちたいという欲望はある。ただ、ビジネスを考えると、今は無くて構わない。無くても対応できる」(同)。

 ただ、近く、主に製品の設計検討などを目的にしたラボを、都内に開設する予定があるという。OEM事業のためだ。

 同社は、工場を持たない「ファブレス」の業態で、サプリメントやプロテインなどヘルスケア製品のOEM事業も展開している。実は、機能性表示食品の届出サポートを、かなりの熱量をもってスタートさせた大きな理由がそれだ。「原料商社として取り組むべきOEMの理想形を考えた」と宍戸氏は話す。どういうことか。こう熱弁する。

 「我々は商社。だから原料を持っている。今は持っていない原料への引き合いがあったとしても、海外から調達できる。しかも我々は、出所がはっきりしている原料しか取り扱わない。そうした我々がOEMを行うことで、お客も、我々が原料を調達するメーカーも、(最終製品の)製造を委託するOEMメーカーも、そして我々も、Win-Winの関係を構築できる。

 原料を持っている我々がOEMを手がける以上、原料にかかるコストは、他のメーカーや商社などから買うよりも、必ず安くできる。もちろん、日本国内で品質管理、品質保証するためのコストは適正に上乗せさせてもらうことになる。だとしても、価格で負けるようなことは基本的にない。その上で、品質も決して悪くない。自分たちで作っているわけではないから、異物混入などのリスクはゼロだとは絶対に言えないが、可能な限りゼロに近づけられるようにするために、我々の品質保証部門は存在する」

関係各社と構築目指すWin-Winの関係

 顧客などからの要望が年々高まっていた機能性表示食品の届出サポートを、多種多様な機能性関与成分について行えるようにすることで、商社としての原料ビジネスと同時に、ここにきて人員を増強するなどして力を入れているファブレス型OEMビジネスの業容を、相乗的に拡大させる。宍戸氏はそう考えた。

 一方、その考えには続きがある。機能性表示食品の届出サポートの本格展開に宍戸氏を前のめりにさせた背景には、両ビジネスをさらに加速させることのできる可能性を秘める事業を手がけていることもあった。日本製ヘルスケア製品のASEAN(東南アジア諸国連合)をはじめとする海外市場進出サポートだ。

 「我々が原料を調達、供給し、OEMも行う。我々の言うOEMとは、製品設計のみで、製造そのものは国内のOEMメーカーに委託する。それを東南アジアの消費者に向けて販売するお手伝いをさせてもらっている。現地で機能性表示を行えるわけではないが、日本で機能性表示食品であることは、現地の特に若い消費者に販売していくためにとても重要だ」と宍戸氏。その上でこう話す。

 「品質保証体制を持つ原料商社としての我々の強みと、工場と加工技術を持つOEMメーカーの強みを融合することで、機能性表示食品などの日本の製品を海外に広げていく。それがサンクトとして取り組むべきOEMの理想形だと考えている」

【石川太郎】

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