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サプリ安全性確保、行政の考え(後) 改正機能性表示食品制度にどう反映されたか、消費者庁食品表示課に聞く

 改正された機能性表示食品制度。「天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品」(以下、サプリ)の製造工程管理にGMPが義務付けられ、それを実行するための規則を定めた法的拘束力を持つ法令(内閣府令・告示)も公布された。だが、それらを読んだだけでは全体像は見えてこない。有識者検討会の提言等を受け、改正制度の設計を担当した消費者庁食品表示課保健表示室の今川正紀室長(=写真)に聞いた。取材日は去年11月8日。前編はこちら

製造工場での受け入れ検査、具体的な方法規定せず

──GMP基準の第4条「届出者の責務」の2について聞きます。「届出者は(中略)原材料(機能性関与成分等を含む原材料に限る。)について、(中略)製品標準書に記載した規格に適合したものが供給されることを確保しなければならない」とあります。届出者はそれをどのように確保すべきでしょうか。HPLC等の理化学機器を使ったパターン分析を求めているのですか?

今川 GMP基準に基づく管理を実際に行うのは製造者ですが、機能性表示食品制度は表示に関する法制度ですから、基本的に全ての責務は届出者に発生することになります。ですから、機能性関与成分を含む原材料を受け入れる側の製造者にそれをどう確保してもらうかは届出者が考え、担保していただく必要があります。GMP基準では、その確保を具体的にどういう手法で行わなければいけないのかまでは規定していません。それこそ受け入れロット毎にHPLCなどで確認することが望ましいですが、そこは原材料を供給する側、それを受け入れる側が、実行可能性や必要性なども考慮してそれぞれ納得できる方法で確保し、GMP基準に基づく管理を行っていただければと考えています。

 繰り返しになりますが、機能性を表示する、しないにかかわらず、安全性の確保は食品衛生法の遵守が大前提です。ですから、表示の法制度の中だけで考えるのではなく、食品衛生の基本的な安全性の確保の観点で考えることが必要です。

──改正された内閣府令(食品表示基準)には、「サプリメント」という名称こそ使っていませんが、機能性表示食品におけるサプリの定義が盛り込まれています。「天然物、若しくは天然由来の抽出物等を用いて分画、精製、濃縮、乾燥、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の加工食品」とあります。「等」とある。すると、天然抽出物や化学合成品を配合したグミやキャンディなどもサプリに該当するのですか? どこからどこまでがGMP義務のかかるサプリになるのか。25年4月1日までに考え方を示すとのことですが、現時点の考えを聞かせてください。

今川 検討中です。錠剤やカプセル剤は、サプリであるということで問題ないと思います。ですが、例えば、錠菓のようなものをどう考えるべきかが本当に難しい。一般的なサプリメントの考え方の1つとして、過剰摂取リスクの観点がありますから、そこは分け方を考えるときの着眼点の1つになろうかと思いますし、それが府令の定義に合致するのかどうかというところで検討しています。サプリとして届け出る必要があるかどうかの考え方はできるだけ早くお示ししたいと考えています。(編集部注:消費者庁は、その「案」を去年12月27日に公表した。同庁ウェブサイト上で確認できる)

──25年4月1日から導入される、新規の機能性関与成分等に関する通称「120日ルール」について。これは新規成分等が届け出された際、届出資料の確認を慎重に行うために、原則60営業日のところ120営業日に確認期間を引き延ばすという届出手続に関するルールです。一方、業界関係者の一部には、事業者が用意した新規ダイエタリー成分の安全性データを行政機関が確認する米国のNDI制度(New Dietary Ingredients Notification)をイメージする場合もあるようです。そのような仕組みにもなりますか?

今川 検討中のため予断をもってお答えするのは難しいのですが、イメージとしては、容器包装上の義務表示である摂取上の注意事項の表示に、届け出された機能性関与成分と医薬品との相互作用などの情報が、しっかり反映されているかどうかの確認が中心になろうかと思います。

 確認対象となるのは、主に新規の機能性関与成分や、既存の機能性関与成分の新しい組合せになろうかと思います。これまでも必要に応じてその確認は行っていまして、専門的な知識を持つ方々に個別に確認をお願いしています。ただ、そのやり取りだけで1週間以上を要することもあり、規定の期限内に処理することが難しい場合があります。とはいえ、そこはしっかり確認する必要があります。そのため、その確認をより慎重に行うべき新規の機能性関与成分等が届け出される場合などに備えて、確認期間を120営業日に延ばすということです。

 新規の機能性関与成分等を全て120営業日にするということではなく、原則としては60営業日で進めたいと考えています。その中で、どうしても60営業日を超えるというものが出てくれば、限定的に120営業日にします。その判断を、どういったタイミングで、どのように届出者へ伝えるかの手続き等は現在検討しているところです。

 新規の機能性関与成分などの安全性そのものを、この表示制度の中で担保するものではないと考えています。機能性を表示するにせよ、しないにせよ、商品を国内で販売する際の安全性の確認は事業者が食品衛生法などに基づいて当然のこととしてやっておくべきであって、その上で、我々(食品表示課)が確認しているのは、届け出された情報が適切に表示に反映されているかどうかです。表示見本などの届け出された資料の中で不足している表示事項があれば再度事業者へ確認を依頼します。安全性の確認は重要であり、それを求めたい理由も理解できるのですが、仮にそれをするのであれば、現在の届出制度から審査できる制度に変えるということになろうかと思います。

政府方針、横断的なサプリ規制の在り方検討

──今回の制度改正の直接のきっかけは、サプリの機能性表示食品に生じた健康被害問題でした。制度廃止を求める声も上げられた中で、それをしなかったのはどうしてですか?

今川 この制度は、事業者が研究開発を行ったり、文献を調べたりして届け出た、表示する機能性の科学的根拠から安全性に関する根拠情報までの原則全ての情報を、誰でも確認できる制度です。今回の問題が起きた直後、ほかの機能性表示食品の全てについて、同様な健康被害が起きていないかどうかを直ちに確認することもできました。

 我々の普及啓発が十分ではなく、そういう制度であるということがまだまだ充分にご理解いただけていない状況だと思いますし、今回の問題を受けて、この制度が抱えていた多くの課題が浮き彫りになりました。こうした制度上の利点や課題などに真摯に向き合い、直すべきところはしっかり直し、制度をより適切に見直した上で運用し続けていく必要があると思うのです。この制度を今後どう運用していくか。そこは我々、行政が常に努力していく必要がありますし、事業者も同じだと思います。事業者と行政でこの制度の良さをうまく訴求し、消費者のご理解をいただきながら適切に商品を選んでいただける制度となるようしっかり運用していくことが必要だと思っています。

──最後に、「サプリメントの規制の在り方」について伺います。今回の健康被害問題を受け、政府の関係閣僚会合が取りまとめた対応方針には、「更なる検討課題」として、「サプリメントに関する規制の在り方、許可業種や営業許可施設の基準の在り方などについて、必要に応じて検討を進める」とあります。どのような規制の在り方を考えていますか?

今川 横断的なサプリメントの規制の在り方を、必要に応じて検討するという方針が示されました。平成30年に施行された改正食品衛生法の施行5年後(令和7年6月)の見直し規定に合わせ、厚生労働省と消費者庁で連携して検討していくことになろうと思っています。サプリメントによる健康被害をどう防ぐか、消費者の信頼を得られるサプリメントを、消費者が正しい理解の下で適切に選んでいただけるような仕組みを、行政と事業者がそれぞれの立場で真摯に向き合って作っていく必要があると考えています。

──ありがとうございました。

(了)

【聞き手・文:石川太郎】

【プロフィール】今川正紀(いまがわ まさのり):消費者庁食品表示課保健表示室長。1998年厚生省(現厚生労働省)入省。食中毒被害情報管理室長、新開発食品保健対策室長、感染症情報管理室長を経て、2023年7月より消費者庁へ出向、現職。

【用語解説】
3.11通知:錠剤やカプセル剤などの形状の食品(サプリメント)の安全性及び品質の確保に関する指針。正式名称は、「『錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)』及び『錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)』」。原材料の安全性自主点検、製品設計、GMPの3点に関する指針を盛り込んだ通知で、前段(原材料の安全性自主点検及び製品設計)が「別添1」、後段(GMP)が「別添2」と呼称される。厚労省が24年3月11日に発出。同年4月1日、食品衛生基準行政が同省から消費者庁へ移管されたことにともない現在は同庁が所管。「令和6年通知」と呼ばれることも。

平成17年通知:3.11通知の前身。厚労省が2005年2月に発出。GMP管理などを義務付けた指定成分等含有食品制度の施行などを受け、見直された。日本でサプリメントGMP第三者認証が始まる契機にもなった通知。

食品表示基準:消費者庁が所管する食品表示法に基づく内閣府令(法令)で、改正された機能性表示食品制度の法的基盤。機能性表示食品の定義をはじめ届出事項、遵守事項などが網羅的に定められている。その細部を規定したのが内閣府告示。

GMP基準:正式名称は「機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準」。食品表示基準に基づく内閣府告示第108号として24年8月30日に公布された法令。機能性表示食品のうちサプリメントの製造・品質管理に義務付けるGMPの基準を規定している。

令和7年4月1日に施行する告示:GMP基準とは別の、改正機能性表示食品制度にかかわる食品表示基準に基づく内閣府告示。消費者庁は同告示について、3.11通知「別添1」のほか、届出ガイドライン(現・届出マニュアル)の内容を落とし込む方針を示している。

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