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2024年問題解決に向け物流を合理化 【通信販売業界の最新動向】日本郵便(JP)と楽天グループがタッグ

 日本郵便㈱(東京都千代田区、千田哲也社長)と楽天グループ㈱(東京都世田谷区、三木谷 浩史社長)は2021年7月、「物流DXプラットフォームの共同事業化」を目的に、新会社JP楽天ロジスティクス㈱(東京都千代田区、諫山 親社長)を設立した。将来的には、他の事業者も利用できるオープンプラットフォームを目指す。同事業をけん引する日本郵便、執行役員の五味儀裕氏と楽天グループ、ロジスティクス事業ディレクターの佐藤敏春氏が語った。

日本郵便を取り巻く環境が変化、郵便から荷物へシフト

五味 郵便物の取扱量は、2001年をピークに毎年2%程度減少し、ピーク時に比較して20年ほどで4割強になりました。260億通あった郵便ですが、今では150億通を割るような現状です。一方で、これは諸外国も同様ですが、ECの拡充によって宅配便の物量が増加しており、郵便から荷物に主力収益がシフトしています。
 過去10年の比率で見ますと、13年の郵便77%に対して荷物23%から、22年は郵便66%に対して荷物34%となりました。営業利益に関して言えば、16年の郵便94%に対して荷物6%から、郵便の比率が下がり続け19年は、郵便36%に対して荷物64%と荷物が逆転し、22年は郵便8%に対して荷物92%、直近の23年は郵便事業はついに赤字になりました。今後、世の中のデジタル化、ペーパーレス化はますます進むでしょうから、この、郵便から荷物へのシフトも一層進むと思われます。

(日本郵便、執行役員 五味 儀裕 氏)

物流の2024年問題に向けて対策が急がれる

佐藤 日本郵便様や物流業界に限った話ではなく、少子高齢化による生産年齢人口の減少、働き手の確保が今後ますます困難になるという問題を抱えています。

五味 残業規制による幹線トラックドライバーの確保問題が今言われている「物流の2024年問題」ですが、これは決して2024年を超えればそれで解決ということではなく、むしろ物流の労働力不足という構造的な問題です。その先の2030年や35年の方がより深刻化していくため、ここで思い切って物流の単純作業を機械化・省人化していくこと、運び方・働き方を変革していく必要もあります。
 事業構造を郵便からゆうパックなどの荷物に大きくシフトする時期ですので、日本郵便の150年の歴史の中で大きな転換点にあると言えます。仕事のやり方、付加価値の出し方などを大きく変えていかなければならないタイミングです。郵便局の施設の在り方、運び方や集配の仕方、競合他社との差別化の仕方など、そういう意味で大きな転換点にあると言えます。

佐藤 日本郵便様を含む大手物流事業者は輸送モードの8割超がトラックで行われていますので、2024年問題への対応は非常に重要ですね。

五味 これまで、他社に負けじと、夕方受けたものを翌日できるだけ早い時間に届けるため、少ない荷物でもできるだけ早く、かつ遠方まで輸送してきました。しかし十分な数のトラックドライバーを確保できないという問題に直面しておりますので、大ロットにして大型車に集約してドライバーを確保する、休憩規制に対応するための中継地点を設ける、ヤマトグループ様との協業でもありますが、急がない荷物に関してトラックではなく鉄道を使うなどのモーダルシフトを行う、同業他社との共同配送なども真剣に考える時期に来ています。少し先の話にはなりますが、幹線の自動車専用道路による自動運転や隊列走行など、かなり実証実験や研究も進んでおります。ドローンなどの配送手段の高度化なども進めていきます。

 いずれにしましても、日本郵便の中だけで諸問題を解決しようというこれまでの考え方をやめ、楽天グループ様やヤマトグループ様、佐川急便様といったグループ外企業との連携を行うことで、共創プラットフォームの実現を目指しています。
 23年6月に、ヤマトグループ様と持続可能な物流サービスの推進に向けた基本合意書を締結しました。小型薄型荷物領域では、ヤマト運輸様が扱う「ネコポス」と「クロネコゆうパケット」として日本郵便の配送網で届ける取り組みを、10月から一部地域(1道15県/北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、福島県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、愛知県、三重県)で開始し、2024年度末までに全国展開する予定です。また、メール便領域では、ヤマト運輸様が扱う「クロネコDM便」が24年1月末にサービス終了し、2月からは「クロネコゆうメール(仮称)」として日本郵便の配送網で届けることが決定しています。言うならば、これまでは日本郵便とヤマトグループ様はライバル関係にあり競争をしてきましたが、これからは手をつなぎ協力してやっていこうということです。

(楽天グループ、ロジスティクス事業ディレクター 佐藤 敏春 氏)

JP楽天ロジスティクスを設立、Eコマースマーケットを重要視

五味 宅配便の主戦場はEコマースです。当社としてこれからの荷物分野の戦略を考えるにあたり、Eコマースマーケットとの取り組みは至上命題です。日本における2大EC
モールと言えば楽天様、Amazon様です。Amazon様はすでに独自の物流システムを構築されておりますので、私たちとしては楽天様との取り組みを模索しました。これによりEコマース分野におけるプレゼンスを発揮していきたいと思っています。ECプラットフォーマーとしてのデータや作業に、日本郵便のインフラを掛け合わせることで新たなビジネスチャンスが生まれると期待しています。実際、「楽天市場」のゆうパック等荷物の物量は、毎年コンスタントに増えておりますので、楽天様といたしましても物流インフラを確保できるという強みは出てくるのではないかと思います。
 効率的な物流の仕組みをつくるという観点からすると、これも「物流の2024年問題」への対応と言えます。

佐藤 2024年問題に限らず、数年前から物流を取り巻く危機的状況はありました。通販は販売して終わりではなく、お客様の手元にお届けして使っていただき喜んでいただき、再度買っていただくというのが通販です。そのため、届けられないというのは致命的です。楽天としましては、物流危機が叫ばれ始めた当初から、物流に関する取り組みを強化してきました。Eコマースは、おかげさまで「楽天市場」を含めて社会のインフラとなりました。そのため、「届けられない=社会インフラが1つなくなる」ということですから、楽天として物流を考えることは事業の根幹でもあります。ましてや、「楽天市場」は数多くの出店店舗様によって成り立っておりますので、出店店舗様の成長に寄与する意味でも、安定した物流インフラの構築は提供する私たちの義務だと思っております。
 
五味 以前から「楽天市場」出店店舗様向けの物流サービスで協業させていただいておりましたが、JP楽天ロジスティクス㈱の設立で、より踏み込んだ協業関係を築くことができたと思っています。

佐藤 私たちとしても、DXを含めたシステムやデータによる知見を日本郵便様にも使っていただき、一気通貫型の物流DXプラットフォームをともに作っていきたいと思っています。
 先ほどもありましたが、どの現場においても今は人手不足です。配達現場、輸送現場だけでなく、倉庫の現場も同様に不足しています。DX化による省人化、スリム化で対応していきます。

出店者の事業をサポートする物流インフラを提供する

佐藤 出店店舗様はこれまで通り、自らで手配されている物流事業者様を使っていただいても結構ですし、私たちが提供する物流サービスを使っていただいても結構です。全くのゼロベースで立ち上げられた店舗様でも、販売から配送まで完結できる仕組みを提供できますので、そのメリットは大きいと思います。また、物流は個々で取り組むよりも集合体で取り組んだ方が効率も良く、その分、コスト削減にもつながります。そういったメリットも提供したいと思います。おそらく使用比率は必然的に上がっていくと思います。

五味 販売数は売れ行きによってその時々で違います。例えば、「楽天スーパーSALE」などECプラットフォームがセールイベントを行うと、物量が一気に拡大することもあります。また、購入者の地域もバラバラです。それを全て自社で対応しようとすると限界があります。販売と物流が一体化することで、販売予測に基づく在庫管理ができますので、その分、送料の削減やお届けまでのリードタイム削減にもつながると思います。

佐藤 まさに物流の効率化にもつながりますので、「物流の2024年問題」への対策にもなるのではないでしょうか。また、災害や突発的な事故も発生します。BCPの観点からも、安心して使っていただけるのではないかと思っております。

五味 EC事業者さんにとって、どうしても物流は後回しになりがちですし、売上が伸び物量が増えると、今度は販売や商品開発が後手に回ってしまうという悪循環に陥ります。安心して事業に取り組んでいただき、より一層事業が成功できるよう物流面で支えていきます。

【藤田勇一】


 

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