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第4回契約書面電子化検討会(結び)  消費者の確認行為を事業者はどう確認するか

 3回にわたって見てきたとおり、事業者から電磁的方法で送られてきた契約書面をどのような手段で確認するかが、論点の1つになっている。これはクーリングオフの起算点とも密接に関わる問題のため、事業者と消費者両者による確認が必要とされるが、消費者側が事業者側に消費者への確認を求めるのに対し、事業者側は消費者への確認のお願いまではできても「それ以上のことはできない」、それは事業者の自主的な判断に任せるまでで、義務化すべき事柄ではないと反発している。

 双方が確認できないとなると、書面は消費者に送られたままとなり、どちらも確認できない間にクーリングオフの期間(消費者に到達した時から起算して8日)が過ぎ、両者に不利益が生じることになりかねない。
 書面を渡すべき時に渡さなかったりした場合は法律違反となり、6カ月以下の懲役や100万円以下の罰金といった罰則が設けられている。他方、クーリングオフ期間が過ぎてしまった消費者は、気の進まないサービスに対して対価を支払わなければならなくなる。

 検討会では、このような事態を回避するために消費者庁(事務局)が救いの手を差し伸べる一幕があった。取引対策課の奥山剛課長は、事業者が消費者からの確認行為を通して事業者としての地位を安定させるとの観点から、「消費者庁としてルールになっているので(確認を)お願いします」と消費者に依頼すれば、確認行為を比較的スムーズに実行してもらいやすいのではないか。それを制度の中に位置づける手はあると提案した。

 消費者の能動的なアクションは要件となるのか? もしそうでなければ、消費者の支配領域内に入った段階で、ボールは消費者側にあるのではないかとの指摘が座長から行われた。
本来、消費者が支配領域内に到達したことを認識していないとすれば、クーリングオフの起算点を証明することが技術的に困難になる。

 これらの問いに対し、慶應義塾大学大学院法務研究科教授の鹿野菜穂子委員は「消費者の支配権内に到達した時に書面交付が行われた後、そこからクーリングオフが起算されるが、立証が難しいために無用な紛争が生じる可能性がある」とし、「両者の利益のためにビジネスプラクティスとしてこうしましょうということには賛成だが、書面交付の電磁的方法による影響の効力という点でいくと、後で確認の有無、あるいは時期によってそれが左右されるというのはおかしい」と疑義を差し挟んだかたちだ。

 日弁連の池本誠司委員は、「トラブルを避けるために、いわば行政的な手順、義務付けと手順の中で、消費者が確認し(消費者に)返信させる。消費者が(確認行為を)やってくれないのに(事業者を)罰則対象にするというわけにはいかないから、消費者にアクションをすること。直接の利益は事業者にあるので事業者がそれを確認すること。(消費者から)アクションが来なければ確認することという、あくまでも行政的な義務づけの範囲でやることで、結果として、混乱を回避する。そういう2段構えの制度化ではないか」と対案を示した。

 しかしこれに対して(公社)日本訪問販売協会事務局長の小田井正樹委員は、事業者の都合で電子交付ができるようにする制度ならば厳しい条件を付けて規制することも理解できるものの、「今回の書面電子化というのは、消費者が電子交付を望まない場合は紙の書面を交付することだと思う」と、そもそも論に立ち戻り、書面と同等、一覧性のある交付に関しても「スマホしか持っていないような人には紙の書面が交付されればいい」と言う。

 さらに小田井委員は、後半の赤字以外の部分に関わる議論で、資料「これまでの議論の整理」3ページ(2)事業者の禁止行為について①勧誘することの中身に言及。消費者が紙か電磁的方法か迷っているような場合、「最近は電子交付を選ばれるお客さんが増えています」などの文言も勧誘とされることに懸念を示し、政省令に記載する場合は、「無理」、「強引」、「意に反して」、「不当な方法で」などの言葉を頭に付けてほしいと要望した。

 河上座長は、当然そうなると思うとしながらも、本当は紙でもらいたい人に対して、「もうみんな電子でやってますから、お客さんだけがそれを紙でと言われても困ります」となっても困るので、「全体として自由に、真摯に、自分は紙が欲しい、自分は電子でもいいんだからという気持ちを確保できるようなかたちで政令を作っていただくということが重要」と正論を述べた。
 また座長は、時に枝葉末節に流れがちな議論に対して、「書面が一体どういう意味を持っていたのかを確認し、その意義を減殺されないようなかたちで電子化が導入できるのであればそれをする方法はないか。その時の第一の問題は本人がまさにその点について望んだか、本人の承諾が自由で、かつ真摯に承諾があったということを確保しないといけない。そのためにはどういう手順が必要かということでここまで議論を進めて来た」と検討会の本義を再確認する場面もあった。
 
 ここにきて焦点は絞られてきた。河上座長は第3回検討会で、5回目で取りまとめたい意向を示した。今回も最後に、「できるだけ早い時期に取りまとめに入っていきたい」と述べている。次回の検討会は28日、対面で予定されている。

(了)
【田代 宏】

関連記事:第4回契約書面電子化検討会(前)
     第4回契約書面電子化検討会(中)

     第4回契約書面電子化検討会(後)
消費者庁ホームページ(資料掲載)

関連記事:第3回契約書面電子化検討会(前)

     第3回契約書面電子化検討会(中)

     第3回契約書面電子化検討会(後)

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