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神代から令和まで健康食品のルーツを探る~歴史から見えてくる課題は何か?(1)

(公財)食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授 唐木 英明

<インドの奇抜な新型コロナ肺炎対策>
中国で始まった新型コロナ肺炎が日本をはじめ世界に広がり、生活にも経済にも、これまでにない大混乱が起こっている。各国は感染の拡大防止とワクチンと治療薬の開発に努力しているが、そのなかで話題になったのがインド政府の対策である。

インドには医療政策機関として、他国と同様の保健・家族福祉省がある。他国にはない特徴としてAYUSH省が設置されている。AYUSHとは、アーユルベーダ(A)、ヨガと自然療法(Y)、ユナニ(U)、シッダ(S)そしてホメオパシー(H)の組み合わせだ。

<世界3大伝統医学の1つ「アーユルヴェーダ」>
アーユルヴェーダ医学はインド発祥で、ギリシャ発祥のユナニ医学、中国医学とともに世界3大伝統医学と呼ばれ、古い歴史を持つ。ヨガとシッダもインド発祥の古い伝統医療だ。

ホメオパシーは1796年にドイツのハーネマン医師が提唱した比較的新しい民間療法で、英国が植民地化したインドで広げたものである。AYUSH省の役割はこれらの伝統療法を広め、治療者の養成教育を実施することにある。

<インド政府はコロナ予防に医学を推奨>
そのAYUSH省が、新型肺炎の予防にホメオパシー治療薬を利用すること、治療にはユナニ治療薬を使用するように国民に呼びかけたことが驚きを持って話題になった。それは、臨床試験により、その効果がプラセボ以上であることが証明された伝統医療はほとんどないからであり、医療関係者の多くがその事実を知っているからだ。それではなぜインド政府は伝統医療を推奨しているのだろうか。

<日本でも鍼灸や漢方薬が普及しているのに>
振り返って日本の医療を見ると、医療保険の対象となる医療として、中国の伝統医療である針灸が認められ、漢方薬が医薬品として認められている。日本でも医療に伝統医療を取り入れているのだ。さらに多くの人たちは病院で診断と治療を受け、処方された医薬品を飲むだけでなく、健康食品を飲み、神社仏閣で祈祷を受け、お守りを購入する。このような状況は欧米諸国でも変わらない。

<日本の医学関係者は伝統医療に否定的>
このように日本をはじめ多くの国で近代医療と伝統医療が共存しているのだから、インドが特別ではないといえる。だだし、両者の関係は必ずしも良好ではない。日本では針灸や健康食品に否定的な医学関係者が多く(筆者もかつてはそうだった)、インドの2つの省のホームページは、互いにリンクしていない。

<近代医療と伝統医療のはざまにある健康食品>
健康食品のルーツは伝統医療の治療薬なのだが、近代医療との対立の中で伝統医療は迫害を受けてきた。にもかかわらず、健康食品は多くの人の支持を受けて生き残った。インド政府は国民の意見を無視しなかったともいえる。そこで、近代医療と伝統医療の対立という視点から、医療の歴史のなかで健康食品がたどった道筋について述べることにする。

<プロフィール>
1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを歴任。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。専門は薬理学、毒性学、食品安全、リスクコミュニケーション。

(つづく)

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