1. HOME
  2. 健康食品のルーツを探る
  3. 神代から令和まで健康食品のルーツを探る~歴史から見えてくる課題は何か?(6)

神代から令和まで健康食品のルーツを探る~歴史から見えてくる課題は何か?(6)

(公財)食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授 唐木英明

<アフリカを捨てたネアンデルタール人>

 約200万年前にアフリカで生まれた人類の祖先は、何種類もの人類に進化したが、そのほとんどは絶滅した。絶滅を逃れた人類の1つが40万年前にアフリカを出て北に進出し、ネアンデルタール人に進化したとされている。彼らはヨーロッ全域から中央アジアまでの広い地域で暮らしていたのだが、2万数千年前に絶滅してしまった。

 ネアンデルタール人は火を利用し、石器を使う、現代人に近い人類だった。イラクのシャニダールの洞くつで発掘されたネアンデルタール人の墓には、少なくとも8種類の花が添えられていたという。遺体に花を添えて別れを惜しむという、極めて人間的な行動の証拠という考えもあるが、結論は出ていない。かつてネアンデルタール人を現代人の祖先と考える説があったが、現在は別の人種と考えられている。

<現代人の起原もアフリカ大陸だった>

 アフリカで生まれた現代人の祖先は、7万年前にネアンデルタール人の後を追うようにアフリカを出て、北に向かった。そして、中東地域で暮らしていたネアンデルタール人と出会った。現代人はその後、ネアンデルタール人の領土であるヨーロッパを避けて、アジアに広がり、ベーリング海峡を越えて、アメリカ大陸にまで達した。ところで、中東地域で2つの人類が出会ったとき、何が起こったのだろうか。

<ネアンデルタール人との混血が誕生>

 2015年、ドイツの研究所がネアンデルタール人の遺伝子を解読することに成功した。その結果、アフリカ以外の人類のすべてがネアンデルタール人の遺伝子を約2%持っていることが分かった。現代人がアフリカを出て北に向かったとき、中東地域でネアンデルタール人に出会い、そこで混血児ができて、その子孫が世界に広がったのだ。ヨーロッパの人たちの白い皮膚、金髪や赤毛、青い目、インフルエンザウイルスへの免疫などは、ネアンデルタール人から受け継いだ可能性が高いという。

<免疫力の強さが絶滅から救った?>

 さらに、我々の遺伝子には2010年にシベリアで発見されたデニソア人の遺伝子も入っていることが分かった。とくに太平洋の島々に住むメラネシア人は、デニソア人の遺伝子を5%持っているという。デニソア人の詳細は分かっていないが、ネアンデルタール人とも現代人とも交流し、互いに子供を作る親しい関係だったことは確かだ。

 その後、ネアンデルタール人もデニソア人も絶滅して、現代人だけが生き残った。その理由は、現代人との混血で消えていったなどの説もあるが、致死性の感染症に対して現代人だけが免疫を持っていた可能性はないだろうか。免疫の強さが人類を絶滅から救ったのかもしれない。

<プロフィール>
1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを歴任。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。専門は薬理学、毒性学、食品安全、リスクコミュニケーション。

(つづく)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ